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コンタクトセンターDX最前線

クラウドコンタクトセンター導入、失敗企業に共通する5つの落とし穴とは?

以前、「クラウドコンタクトセンターに移行する際に考慮すべき点」というコラムでは、クラウドコンタクトセンターの特長や、オンプレミスからクラウドへ移行する際の注意点をご紹介しました。

クラウドコンタクトセンターは、初期コストやランニングコストを抑えられる、導入期間が短い、在宅ワークへの対応のしやすさなどのメリットがあります。そのため、生産性の向上や多様な働き方への対応などが期待されており、多くの企業で導入が進んでいます。

しかし、こうしたメリットの裏には見落としがちな落とし穴があり、真の価値を引き出すためには、事前の準備と理解が欠かせません。今回のコラムでは、クラウドコンタクトセンター基盤の構築支援を通じて見えてきた、多くのお客さまが見落としがちなポイントを回避策とともにご紹介します。

落とし穴①:既存システムとの連携を考慮していない

最も多い失敗は、クラウドコンタクトセンター基盤単体の機能にばかり注目し、既存システムとの統合性を軽視してしまうことです。

既存システムとの統合を怠ると、CRMやHRシステム、分析ツール間でデータがシームレスに連携できず、手動でのデータ移行が必要になったり、システム間の非互換性により、運用停止時間の発生、顧客対応に支障をきたすなどの問題が生じます。

こうした問題が発覚してから、統合しようとすると、カスタム開発やミドルウェアの導入が必要になり、想定外の追加コストがかかってしまったということにもつながります。

必ず、導入前に、既存システムとの統合可能性を徹底検証しましょう。

[検証ポイント]
  • ・API連携の可否を確認し、既存システムとのデータフローを設計する。
  • ・ベンダーのエコシステム(パートナー連携やサードパーティ統合)を確認し、自社の業務フローに適合するか検討する。
  • ・ POCを実施し、実際の環境で統合テストを行う。


コンタクトセンターは企業全体のエコシステムの一部であり、それ単体で完結するものではありません。クラウドコンタクトセンター基盤を選ぶ際は、既存システムとの統合性を最優先で検討することが不可欠です。統合性が確保されることで、顧客対応の質が向上し、業務効率の最大化やデータ活用による戦略的な意思決定が可能になります。

落とし穴②:拡張性の見誤り

2つめは、「拡張性の見誤り」です。
クラウドコンタクトセンターは、サービスごとに想定される席数(エージェント数)が異なります。そのため、導入を検討する際には、現在の通話量(運用規模)だけでなく、将来的な拡張性も視野に入れ、対象となる席数がサービスの対応範囲内かどうかを確認することが重要です。
万が一、これを見誤ってサービスを選んでしまうと、成長に伴うシステムの再構築や移行が必要となり、コストや業務への影響が大きくなる可能性があります。

また、サービスによって拡張方法にも違いがあります。
サービスによっては、トラフィック増加時に都度プロビジョニングが必要、追加ライセンス費用が発生するなど、想定外の運用負荷や費用が発生するケースも少なくありません。適切に拡張できないと、キャンペーン期間などで一時的に問い合わせが急増した時に対応しきれず、システムがクラッシュするということにもつながります。

必ず、システムの負荷や利用状況によってリソースを自動的に増減できる「自動スケーリング機能」の有無を確認するようにしましょう。
特に、ピーク時のトラフィックをシミュレーションし、システムの耐障害性を検証する負荷テストや、ベンダーのロードマップを確認し、将来の機能拡張に対応できるかどうかを評価してくと安心です。

クラウドコンタクトセンターの基盤となるアーキテクチャが、将来的な拡張に耐えられるかどうかが重要です。単なる機能比較ではなく、変化に対応できるように、システムの柔軟性を重視しましょう。

落とし穴③:提供される情報の透明性の軽視

3つ目は、クラウドコンタクトセンターを選ぶ際に、ベンダーから提供される情報の透明性をきちんと確認していないケースです。

例えば、基本料金は安価に見えたが、いざ運用を始めたら追加モジュールの費用やサポート費用がかさみ、結果的にコスト増につながってしまった、ダウンタイム時の補償やサポート対応が、サービスレベル契約(SLA)できちんと定義されていなく、いざ障害が発生した際に問題になったなどです。

実際に、弊社のお客さまでも、当初は安価に見えたベンダーを選んだのに、後から『必須モジュール』の追加費用が必要なことが発覚し、予算を大幅に超過。結局、他社に乗り換える羽目になったというケースがありました。

他にも、ロードマップが不明な場合、必要な機能がいつ実装されるか分からず、契約時には「まもなくリリースされる」と説明を受けていたにもかかわらず、実際にはなかなか提供されないケースもあります。その結果、業務に支障が出たり、想定していた運用ができず、追加の対応やコストが発生することも少なくありません。

サービスを選ぶ上で、ベンダーからからの情報がどれだけ明確か、透明性があるかが非常に重要です。契約前に徹底的にヒアリングしましょう。

落とし穴④:カスタマイズの必要性を考慮していない

多くのクラウドコンタクトセンターは、「標準的」なUI、レポート、ワークフローを提供しており、最近では、カスタマイズは最小限に抑え、サービス側に運用をあわせていこうという傾向が高まっています。

しかし、カスタマイズを全く考慮しないと、実際に運用を始めてから、応対時に複数のツールを切り替えなければならず、オペレーターの作業効率が悪化する、顧客の個別ニーズに対応できなくCX低下につながるなどの課題が浮き彫りになることがあります。また、システムの使いにくさは、EX低下にも繋がりかねません。

最初から「標準機能で十分」と判断してしまうと、後々追加コスト発生などにつながることもあるため、ベンダー選定の際は、そのサービスがどこまでカスタマイズ可能か、サードベンダー製品との連携が可能かなどを事前に確認しておくことが重要です。

サービスによってカスタマイズの柔軟性は大きく異なるため、長期的な運用を見据え、自社の成長にあわせて拡張できるものを選びましょう。

落とし穴⑤:コストだけで判断してしまう

最後は、初期費用の安さでけで選んでしまうケースです。
落とし穴④のカスタマイズ性にも関連しますが、基本費用が低価格に設定されている一方で、追加モジュールやサポート、カスタマイズに都度費用がかかることも少なくありません。また、サポートメニューが充実していない場合は、緊急時の対応が遅れることもあります。

初期費用の安さだけに気を取られず、3〜5年のスパンでコストを試算し、安定的に運用できるかを検証しましょう。無料トライアルの活用やベンダー評価(第三者レポートや顧客レポートを参考にするのもおすすめです。

まとめ

いかがだったでしょうか。クラウドコンタクトセンター基盤は、単なるコスト比較や機能チェックで選ぶのではなく、自社のエコシステムに適合し、将来的に拡張可能かどうかで選ぶことが重要です。

S&Iでは、今回ご紹介した落とし穴に陥らないよう、サービス選定からご支援しています。

既に導入しているお客さまで、思っていたような効果が得られていないという場合もぜひご相談ください。システム連携の課題の洗い出しや、最適なクラウドキャリアの選定、TCOの再計算など、最適化に向けたご支援も可能です。ぜひ、ご相談ください。

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