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コンタクトセンターDX最前線

【Vol.28】顧客の真のニーズ把握に欠かせない!
生成AIの精度アップの鍵「ファインチューニング」と「RAG」の世界

2025/01/21

コンタクトセンター業務におけるCX向上のための重要な要素として、ホスピタリティを重視した親身な対応や、顧客それぞれの属性やニーズに応じた的確な提案に注目が集まっています。

従来、多くのコンタクトセンターでは応対マニュアルに沿った定型的な対応が基本となっており、顧客に寄り添ったサービスが提供できるかどうかは、オペレーターのスキルや経験への依存度が高いのではないでしょうか?そこで注目されているのが、生成AIによるお問い合わせ内容の深掘りです。

今回は、生成AIによるお問い合わせ内容の深掘りに焦点を当て、ファインチューニングの限界とそれを克服する技術である「RAG」について解説します。

生成AIを活用したお問い合わせの深掘りとは?

顧客からのメールやチャット、電話での問い合わせ内容をテキスト化し、生成AIが分析することで、顧客の言葉の裏に隠された意図や感情を読み解くことができるようになります。

この仕組みをうまく活用することで、顧客の真のニーズに寄り添った対応が可能になります。例えば、問い合わせ内容から適切なFAQを提示したり、顧客の状況に合わせた関連情報を自動的に表示したり、過去の問い合わせ履歴から最適な回答を生成したりといったこともできるようになります。

課題をスムーズかつ的確に把握できることで、解決までの時間が短縮され、解約率の低下など、ビジネスサイドの改善にもつながるでしょう。

また、オペレーターにおいては、顧客の意図を把握し解決策を洞察するためのスキル習得のハードルも下がり、新人オペレーターは特に、自信を持って対応できるようになるのではないでしょうか。

ただ大量のデータを学習させるだけでは精度向上にはつながらない

的確にお問い合わせ内容を深掘りするためにはどうすればいいのか?そのために生成AIの精度を上げるための手法の1つにファインチューニングがあります。

ファインチューニングとは、特定のタスクに特化したAIモデルを構築するために、大量の学習データを用いて事前学習済みのAIモデルを調整する手法です。コンタクトセンターでは、過去の問い合わせデータや回答例を学習させることで、問い合わせ内容の理解や適切な回答の生成が期待できます。

ただ、ファインチューニングの場合、特定の製品やサービスに関する問い合わせデータが少ない場合、その分野における対応力が不足するという問題があります。

顧客のニーズは常に変化しているため、新しい問い合わせや未知のパターンにも柔軟に対応していかなければなりません。

特定のニーズに応じたデータセットを準備することが容易ではありません。
膨大な学習データと学習コストが必要であり、メンテナンスコストも高くなる傾向にあります。また、ブラックボックス化しやすく、AIモデルの挙動を把握し、効果的に動作させるためには高度な専門知識も必要になります。

ファインチューニングだけでは、顧客からの多様な問い合わせに対応するのは難しいと言えるでしょう。

RAG(Retrieval-Augmented Generation)という解決策

ファインチューニングの課題を解決する有力な手段として注目されているのが、RAGです。RAGは、外部知識を活用して生成AIの精度を向上させる手法で、検索と生成を組み合わせることで、より的確な回答を生成することができます。

コンタクトセンターにおいては、過去の問い合わせ履歴、FAQ、製品マニュアルなどの膨大なデータを外部知識として活用します。問い合わせ内容に応じて、適切な情報を検索・抽出し、その情報に基づき、生成AIが最適な回答や対応を生成します。

RAGのメリットは大きく2つあります。

メリット①:透明性や信頼性をコントロールしやすい

RAGの場合、検索した情報を元にインプットしたデータを前提に動作するため、AIがどのように回答を導き出したのかなど、内部の仕組みが分かりやすく、コントロールしやすい状態にあります。もし、間違った回答が生成される場合もプロセスを修正しやすく、高い回答精度の維持が可能になります。

メリット②:常に最新の情報を反映できる

新しい製品やサービスが追加されたり、FAQが更新されたりした場合でも、それらに関連する情報を外部知識として利用するため、常に最新の情報を検索・参照して正確で最適な回答を提供することができます。

ファインチューニングに比べて学習コストが低く、アプリケーション側の制御と組み合わせることが可能です。非常に導入しやすいため、今後活用が進んでいくのではないでしょうか。

まとめ:スモールスタートで効果検証を!

RAGの活用によって、顧客の体験・状況に応じた最適な情報提供が可能になり、オペレーターが複雑な質問にも正確に回答できるようにサポートできるようになります。

サービスレベルの均一化や、新人オペレーターの即戦力化を促すことも可能になるでしょう。また、顧客対応の履歴を分析し、サービス改善に繋げることもできます。

実際にRAGを導入した企業では、顧客満足度が大幅に向上し、オペレーターの対応時間が削減さたという事例も報告されています。

RAGを活用して生成AIの応答精度を高めるために重要なポイントは、「関連性の高い質の良い情報(ナレッジ)を正確に抽出し、適切に活用する」ことです。

その上で以下の点を考慮して検証を進めることをお勧めしています。

  • ・高品質なナレッジの構築
  • ・効果的な検索・抽出システムの実装
  • ・プロンプトエンジニアリングの最適化
  • ・継続的な評価とフィードバックループ
  • ・複数の特色のあるLLMの活用
  • ・ハルシネーションコントロール

S&Iでは、効果検証のためのPoCのご相談にも乗っています。ご興味のある方はS&Iまでご相談ください!

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