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コンタクトセンターDX最前線

まるでベテランオペレーターが側でサポートしてくれている?
RAGとフューショット学習の世界

前回のコラムで、コンタクトセンターにおける生成AIの業務活用について、いくつかのユースケースをご紹介しました。

今回はその中から「応対業務のアシスト」を例に、応対業務において、次に確認すべきことを生成AIが的確に提案するためにはどうすればよいのか、生成AIの導入効果を最大化するためのコツとしてRAGとフューショット学習について解説します。

生成AIによる応対業務のアシストとは?

生成AIは、顧客とオペレーターの会話から、次に何を質問すべきかや、質問に対する回答候補を導き出すことができます。この仕組みを活用し、生成AIがベテランオペレーターが対応するかのように、的確かつ適切に次に質問すべきことをオペレーターに提案することで、コンタクトセンター全体のサービスレベルの向上、そして顧客満足度の向上につながります。

また、オペレーターは経験によらず、新人でもベテランでも顧客の問い合わせの真の用件を理解し、適切な案内を提供できるようになるため、特に新人オペレーターは短い教育時間の中でも、安心してかつ自信を持って応対業務にあたれるようになるでしょう。

[オペレーターアシストにおける生成AIを活用イメージ]

生成AIが次の質問候補を導き出すために重要なナレッジデータとRAG

生成AIでは、アウトプットを生成するために、プロンプトと呼ばれる指示書が必要になります。

プロンプトには、顧客とオペレーターの会話内容をインプット材料として含めることになりますが、これだけでは生成AIは過去の応対履歴に基づいた適切な案内はできません。そこで重要になるのが、FAQやこれまで顧客からの問い合わせにどのように対応してきたかというセンターに蓄積されている「ナレッジ」と「RAG」という技術です。

生成AIの回答精度を高める技術「RAG」とは?

RAG(Retrieval-augmented generation)は、膨大な情報から関連する情報を抽出し、それらをプロンプト内に含めてLLMに選ばせる手法です。

RAGを活用すると、プロンプトを作成する前に、ナレッジデータから質問に対して関連性の高い回答候補を厳選し、その抽出結果をプロンプトに含めて生成処理を行います。そのため、商品やサービスなど企業固有のものに関連する質問に対して最も関連性の高い回答を得ることが可能になるため、特定の業務に特化したアプリケーションなどで多く採用されています。

また、蓄積されたナレッジをもとに回答をまとめるため、事実に基づかない情報を生成するハルシネーションを抑制できることもメリットと言えるでしょう。

一方で、RAGの回答精度は検索のフェーズで抽出するデータの精度と内容が非常に重要になります。顧客からの質問に対して、次に何を聞くべきか、応対業務でオペレーターを的確にアシストするためには、過去の応対履歴やFAQなどの「ナレッジデータ」をきちんと整備しておきましょう。特に、ベテランオペレーターがどのように対応したのかなどのノウハウを蓄積しておくことで、より精度の高いアシストが可能になります。

ベテランオペレーターの対応により近づけるための鍵は「フューショット学習」

さらに、ベテランオペレーターが側でアシストしてくれているかのように生成AIの精度を近づける施策として、RAGを使った「フューショット学習」を活用することもポイントです。

通常、オペレーターは顧客からの問い合わせに対して、過去の経験値をもとに回答候補を導き出していきます。例えば、「サイトにログインできない」という問い合わせでは顧客が「ログインできなくて、何度もトライした」という体験をしていると、「アカウントロック」が原因の可能性が高い、それならば「アカウントロックの解除とともに、仮パスワードの発行」をご案内しようという具合です。

経験の豊富なベテランオペレーターはこの選択肢が多いため、さまざまなパターンを想定して次に何を確認すればいいのかを導き出すことができます。一方で、経験の浅い新人オペレーターの場合はこのような対応が難しいため、的外れな質問をしてしまったり、回答をご案内するのに時間がかかってしまったりということにつながっていきます。

フューショット学習は、あるタスクに対する複数の例文を挙げることで、その例文を参考に回答を生成する技術です。
フューショット学習の技術を利用すると、プロンプトに含まれる複数の「考えられる[質問と回答]」のパターンを前提に「次に聞くべき質問」を生成AIが作成します。ベテランオペレーターが顧客からの問い合わせ内容からいくつかの可能性を頭に浮かべ、次に質問することを導き出していくときと同じような要領で生成AIが次の質問を生成できるようになります。

まとめ

いかがでしたか?

いかがでしたか?ベテランオペレーターが側でフォローしてくれているように、生成AIにアシストさせるためには、RAGの検索フェーズで「ベテランのナレッジ」をも含めて検索させること、そしてRAGを使ったフューショット学習技術を活用し同じ思考パターンで次の質問を生成AIに導き出させること、この2つのポイントを押さえておくことが重要になります。

また、「事前処理」の段階でインプットさせるデータは、生成AIの回答精度にも影響を与える重要な要素です。これらは一般的にサービス側に組み込まれる処理となります。そのため、サービスを選定する際は、どのようなデータをどのようなプロセスで処理をするのか、きちんと把握しておくことで、生成AIの活用効果を最大化できるでしょう。

S&Iでは、こうした生成AIの特性も踏まえて、コンタクトセンターの応対業務での活用を積極的に支援しています。生成AIとやり取りするデータの加工や処理、セキュリティ対策を考慮したサービス設計など、お客さまの業務や運用フローに応じたご提案が可能です。ご興味のある方は、ぜひ、S&Iまでご相談ください。


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