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コンタクトセンターDX最前線

【Vol.01】コンタクトセンターはクラウドPBXに移行するべきか?
オンプレvsクラウド、考慮すべきポイントを解説

2023/01/04

コンタクトセンターの在宅化やSNSやチャットなどのマルチチャネル化、音声テキスト化によるCX向上などへの需要の高まりを背景に、クラウドPBXの導入が注目されています。

ネットに溢れる情報からは、さも相当数の企業がクラウドへ進んでいるようにも見えるので、クラウドへの移行を急がなければ…と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、実態としては、約80%超の企業がオンプレミスで利用していると言われており、思っているほどPBXのクラウド化は進んでいないのが現状です。

クラウドPBXには、さまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。
今回は、クラウドPBXを検討している方に向けて、本当にクラウドへ移行すべきか、オンプレミスのままの方が良いのか、さまざまなお客さまにコンタクトセンター基盤を構築してきたSIerだからこそ分かる、お客さまの業務や運用方針などに応じた選ぶ際に考慮すべきポイントを解説します。

こんなに違う!オンプレvsクラウド

オンプレミスPBXとクラウドPBXの違いについて、何が思いつきますか?
初期コストが高いor安い、導入期間が長いor短い、セキュリティが高いor低い、カスタマイズが簡単or難しい…など一般的に多く知られているそれぞれの特長があります。

比較項目 オンプレミス クラウド
初期費用 ×:高額 ○:安価
導入期間 ×:長期 ○:短期
ランニングコスト ×:高額 ○:安価
変更作業の内製化 △:可能だが、専門知識が必要になるため、難易度が高い。 ○:GUIが用意されており、専門知識が無くても容易に対応可能。
セキュリティ(インターネットやVPN環境の有無) ○:高い ×:低い
カスタマイズ性 ○:高い 。標準機能で対応できない場合は、個別開発により対応可能。ただし、コスト高になる可能性も大。 ×:低い
他システムとの連携 ○:さまざまなI/Fが利用可能。 △:RestAPIが主体。連携できるシステムが限られる。
定期的なシステムの更新にかかる負担 ×:ライフサイクルに併せて検討が必須。 ○:考慮する必要がないため、負担は少ない。
在宅ワークへの対応 △:難しい ○:容易
端末(スマホ、PC[VDI/アプリ/ブラウザ]、固定電話)との互換性 ×:少ない ○:多い

クラウドか?オンプレか?SIer視点で見る検討すべきポイント

クラウドPBXはカスタマイズの自由度は落ちるものの、拡張性や費用面、運用面を考慮すると、オンプレミスよりも軍配が上がるように見えますね。

しかし、PBXを導入するときは、規模や既存の環境との接続など、上記以外にも考慮しなければならないポイントがいくつかあります。メーカーごとに長所・短所、できる・できないがあったり、クラウドPBXは機能が順次追加されたりと、顧客要望やテクノロジーの流行で進化していくことが売りでもあるので、一概に言い切れませんが、これまでの経験からまとめてみました。

比較項目 オンプレミス クラウド
規模の目安 小〜大規模(10〜数万席) 小〜中規模(10〜300席)
事務系PBX機能(代理応答やコールパーク、順次鳴動、夜間切替え機能などの機能) ○:多い ×:少ない
レガシー機器との接続(アナログ端末[受付電話機・FAX]やドア開錠/開閉、放送設備など) ○:容易 ×:SIP変換機器が必須となるため、難易度が高い。
音声品質 ○:クラスA(MOS値4.0以上)程度 △:クラスB(MOS値3.1~3.9)程度)
ネットワーク要件(セキュリティーや帯域の確保、FWのallowlist検討要否など) ○:イントラネット接続前提のため、検討事項は少ない。 △:DMZ領域の検討や帯域確保が必要。
電話回線との互換性 ○:アナログ〜SIPまで網羅。 △:デジタル/SIPのみ対応。
レポート拡張性 ○:RAWデータの解析が可能。 △:RAWデータの取得が困難。
システムアップデートの頻度 ×:多い。バグフィクス、セキュリティーアップデートなど定期的なアップデートが必要。 ○:考慮不要。
通話録音 ○:全通話録音が可能。 △:内線通話の録音に対応していない可能性あり。
通話録音データの保存期間 ○:無期限。ただし、ストレージやDBMの容量次第。 △:1年〜5年程度。契約するサービスのプラン次第。
事務系機器との連携やFAXやアナログ端末との接続、電話回線との互換性など、既存環境との連携や品質などを考慮すると、オンプレミスの方に軍配が上がります。これまでの運用や仕組みをそのまま継続したい場合などは、クラウドでは実現できないケースもあるため、注意が必要です。

こんな場合はクラウドPBXがオススメ!ニーズにあった提供形態を選ぼう。

ここまで、オンプレミスとクラウドPBXの違いとともに、選定する上で気をつけなければならないポイントをご紹介してきました。

最後に、重視する要件ごとに、オンプレミスとクラウドとどちらが向いているのかを簡単にまとめてみました。自社のコンタクトセンターでは、いずれの要件をもっとも重視しているのかを考慮しながら、選定の参考にしてください。

[オンプレミス型]
・物理的な構成を含むネットワークセキュリティを重視
・音声品質を重視
・全通話録音が必須
・既存レガシー資産との連携が必須
・事務系の電話機能が必須
・複雑なコールレポート(KPI)が必須(もしくは外部連携が必須)
・連携機器がAPIに対応していない

[クラウド型]
・在宅化コールセンターを容易に導入したい
・システム運営を内製化したい
・システムのライフサイクルに依存したくない
・利用ライセンス数を抑えたい
・常に新しい機能を利用したい(いつUIが変わっても良い)
・電話回線もクラウド化したい
・電話以外のチャネル(SMSやボット、AI、WFM等)を容易に導入したい

S&Iでは、オンプレミスもクラウドPBXの構築もご提案しています。クラウドPBXに移行すべきか、このままオンプレミスのままにすべきか、悩んでいる場合はぜひご相談ください。これまでの経験をもとに最適な構成をご提案いたします!

S&Iエンジニアからの一言!

今回は、オンプレミスとクラウドPBXの違いをご紹介しましたが、その他にも、ベンダー独自、Sler独自のクラウド型PBXもあります。この場合、一般的なクラウドサービスよりもある程度カスタマイズの自由度が高くなる一面、他のサービスへのデータ移行について約款で制約されているケースもあるため注意が必要です。次のシステム移行の際に、移行したくてもできない…なんてこともあり得ます。データの扱いなどにも注意して選定してください。

堀井 祐司:
AVAYAやGenesys Cloud CXなど、さまざまな業界・規模のお客さまを対象に、ニーズに応じたコンタクトセンターの構築に多く携わる。最近では、よりコンタクトセンターの業務領域まで踏み込み、CX・EXの実現に向けて、インフラ構築から業務課題を解決するサービスまで幅広い提案で、コンタクトセンター のDXを推進する。

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