MENU
café SANDI

【Vol.025】S&Iニュースレター
H3C製品の取り扱いを通じて、S&IのITインフラビジネスの裾野を広げる

2025/01/20

SIerであるS&Iは、特定のメーカー機器に縛られず、ご要望・課題に応じた最適なITインフラを構築し、お客さまのビジネスを支えていくことが使命です。H3Cの一次代理店になったことで、これまで以上にお客さまへご提案できる選択肢が増え、インフラビジネスの強化につながっています。今回は、H3Cビジネスのこれまでと今後の戦略について紹介します。

INDEX

5年で売上高30倍を目指す。H3Cビジネスのこれまでと今後の成長戦略

2021年7月、S&Iは国内2社目の一次代理店として、ネットワーク製品を中心にH3C製品の取り扱いを開始しました。そして、2024年度からはサーバー/HCIソリューションにまで範囲を広げています。ここでは、H3Cビジネスのこれまでとこれからについて、H3Cビジネス推進部 部長の阿部道人さんにお話を伺いました。

ー 阿部さん

H3Cは、中国・北京/杭州に本社を置く企業で、日本国内での認知度はまだ高くはありませんが、グローバル市場で見てみると、イーサネットやスイッチなどのネットワーク製品においてはトップ5に入るベンダーです。なぜグローバルでそれほどのシェアを得られているのか、その理由の1つは、他社製品の同レンジ製品と比べて圧倒的に低価格でご提供できる点だと考えています。例えば、ネットワーク製品では、ある主要メーカーの製品価格より平均5割ほどの価格でご提供できます。使える機能も遜色ありません。

彼らは研究開発に非常に力を入れており、社員の約50%が開発エンジニアでかつ、売上の14%を製品開発に投資しています。先日、中国・杭州にある生産工場と研究開発を行っているラボを見学させていただいたのですが、非常に高度な施設で生産管理や技術研究が行われており、H3C製品に対する信頼感が一層増しました。この経験は、今後の営業活動においても、ただ安いだけではなく、品質も十分に高い製品だと自信を持ってお客さまやパートナー様にご提案するための根拠にもなりました。

また、H3Cのもう1つの魅力として納期が挙げられます。最近ではだいぶ改善されてきましたが、半導体不足や物流の遅延問題が生じていた頃は、各メーカーで納期に半年かかる、長い場合は1年以上かかるということも少なくありませんでした。このような状況下でも、H3Cの製品は1〜2か月での納品に対応できていました。なぜ短納期に対応できていたのかというと、問題が浮き彫りになり、影響が拡大する前から、メーカー側で部品などを在庫し、安定的に供給できる仕組みを確立していたからだと言います。見学させていただいた生産工場に隣接する倉庫では、お客さまごとの納期や納品台数に応じた部品の在庫管理が徹底的になされていました。高度な需要予測と在庫管理、世界中のサプライヤーからの調達力で、市場の変動に動じずに製品をお客さまにお届けできるようになっています。多くのお客さまで、納期の短さはもちろんですが、確実さや指定納期への対応力は重視されるポイントだと思います。

S&I H3Cビジネス推進部 部長 阿部道人さん

こうした観点からも、H3C製品を取り扱うことで、SIerである当社にとっては、お客さまのニーズや課題解決を実現するための選択肢が広がったと言えるでしょう。例えば、他社製品ではコストや納期などの兼ね合いでご提案が難しかったお客さまにも、新たなプランとしてご提案できるようになっています。また、H3C製品のご提案をキッカケにITインフラ全般のご相談を頂くケースも生まれており、S&Iのサーバーやネットワーク構築などのインフラビジネスのさらなる強化に確実につながっていると思います。

現在、H3Cの一次代理店は日本国内に3社ありますが、機器の販売だけではなく、構築まで行える「SIer」はS&Iのみです。ネットワーク/サーバーを含むインフラ事業は設立以来の主力ビジネスであり、経験豊富なエンジニアが多数在籍していますので、お客さまや2次店さまからの技術的なご相談への対応も可能です。また、ご要件に応じて最適な構成のご提案もさせていただいています。

また、メーカーSEによる技術提供や勉強会が充実していることはもちろんですが、お客さまのニーズに応じて製品への機能追加や変更をメーカー側に相談できる点は、一次代理店として非常に魅力を感じています。やはり、お客さまによっては、「この機能やこの仕様は妥協できない」というケースも少なくありません。そういったケースでは、メーカーSEと密に連携しながら、柔軟に対応させていただいています。

サーバー/HCIソリューションに関しては、コンテンツ配信サービスを展開する企業様へのご提供など、着実に実績を伸ばしています。取り扱いを開始して5年目という節目の年になる2026年度には、売上高30倍達成を目指して、パートナー様への技術的側面と営業的側面の両面からのご支援を強化するとともに、H3Cビジネスのさらなる成長、そしてS&Iのインフラビジネスの拡大に貢献していきたいと考えています。

H3C杭州本社・工場視察

2024年10月、中国・杭州にあるH3C本社と生産工場の視察を行ってきました。工場視察の様子をとおして、H3Cの高い信頼性を実現するための取り組みを紹介していきます。

約90%を自動化!AI/IoTを活用した最先端の生産工場

サッカー場2つ分の広さを持つ杭州工場は、10億元(日本円で約150億円)を投資して2019年に建設がスタート。2021年に稼働を開始しており、AI/IoTを活用した徹底した生産管理と在庫管理で、世界で高いシェアを誇るH3Cサーバー製品の出荷を支える拠点として機能しています。

サーバーの製造工程は、まず倉庫から部品を選定するところから始まります。工場内には、日本の物流システムメーカーと共同開発をした自動倉庫があり、納品スケジュールに応じて倉庫から製造ラインに必要な部品が自動で届くようになっています。製造する製品は、お客さまによって構成が変わることもありますが、AI/IoT技術を活用して部品選定から完成品の在庫管理まですべて自動化されています。

そして、サーバーの製造ラインは2本。マザーボードの作成からメモリー、CPU、電源モジュールなどの組み立て、エイジングテストまでのエンドツーエンドを一体化して統合管理を行っており、すべての工業設備が5G工業専用ネットワークでカバーされています。工場全体では300人ほどの方が働いているそうですが、設備のメンテナンスや監視が中心で、製造ラインを担当するのは30名ほど。組み立てまでの作業の約90%が自動化されています。また、SMT※作業およびエイジングテスはすべて自動化されており、製品によってテスト時間は異なるものの、1日に製造される1,200台のサーバーすべてを同時にテストできる環境が整っているそうです。(※SMT(Surface Mount Technology):表面実装技術(電子部品の取り付け方法))


サーバーの製造ラインを見学させていただくと、清潔感のある内部に人の姿はほとんどなく、製造過程で人が担当するのは組み立て終わったNIC Cardをモジュールに差し込むなどの繊細な作業くらいとおっしゃっていました。一方で、メモリーやディスクを接着する作業などは自動化したことで接着時の力加減が安定し、不良品の割合が減っているそうです。

今回見学させていただいた工場では、AI/IoT技術やローカル5Gなどの最先端技術を活用してその月の生産量や消費ネルギー、ネットワークの状況などをリアルタイムに管理するとともに、徹底的な自動化で生産性と品質の向上を実現していました。またその一方で、工場の屋上に設置された太陽光発電を利用するなど、エコロジーを強く意識されている点も印象的でした。H3Cでは、液体冷却技術の活用にも積極的に取り組んでおり、高性能なだけではなく環境にも優しいモノづくりを推進されているそうです。

H3C杭州工場

H3C杭州工場で使われているエコシステムの仕組み

他社製品に対する安全性の証明も実施できる「信頼性ラボ」

次に、製品の開発やテストなどを行う研究エリア(信頼性ラボ)も見学させていただきました。信頼性ラボは、自社製品の研究開発を行うだけではなく、他社製品に対して検証を行い、安全性を証明する書類を発行できる資格を持つ、信頼性の高い施設だそうです。

施設内では、電流が安定しない地域での使用を想定したテストや、砂漠や寒い環境での使用を想定したテスト、データセンターと同じ環境を使ってのテストなど、さまざまな地域・環境で利用されることを想定してテストが実施されており、そこで得られたデータが製品開発に活用されています。また、販売した製品が壊れた際の原因調査もこの信頼性ラボで行われています。H3Cでは、ネットワーク機器などのインフラの根幹を担う重要な機器以外の製品に対しても故障の原因究明を行なっているそうで、このような取り組みを行っているメーカーは希少だと言います。このように、さまざまな角度からさまざまなシチュエーションを想定したテストが、H3Cの製品の品質の高さや壊れにくさを保証していると感じました。

H3C杭州本社

H3C杭州本社にあるショールーム

H3C製品を技術者視点で大解剖!これまでの技術を活かせるのか?メリット・デメリットを紹介

ネットワークやサーバー・仮想化基盤などさまざまなH3Cソリューションが提供されています。今回は、その中でも特に市場シェアの高いネットワーク製品について、ネットワークSEの立場からH3Cビジネスを牽引する大塚研二さんと井上昌春さんにお話を伺いました。

初めて「H3C」という名前を耳にする方、聞いたことはあるけど触ったことはないというSEの方に向けて、これまでの経験から得られたH3C製品の特徴をご紹介できればと思います。

初めてH3C製品に触れた時の印象を教えてください。

ー大塚さん

H3C社との販売代理店契約を締結した当時、S&IではH3C製品を扱った経験がなく、まずはどんな製品なのか触って、知るところから始まりました。

まだ国内の認知度が低いということもあり、当時は日本語の設定例やコマンドリファレンスなどのマニュアルが多くなく、基本的に英語のマニュアルを見ながら検証がスタートしました。翻訳アプリを使ったり、メーカーへの問い合わせを駆使したりしながらの検証で、結構大変だった記憶があります。ただ、現在は、かなり日本語マニュアルも増えてきていますし、一次代理店としてメーカーとのリレーションも確立できているので、特に困るということはなくなりました。お客さまやパートナー様からも技術的なご相談があれば、問題なく対応できるスキームができています。

S&I H3Cビジネス推進部 大塚研二さん

他社製品と比較して、操作性の違いや活かせる技術/経験などがあれば教えてください。

ー井上さん

S&IではCisco製品も積極的に扱っており、私自身、これまでCisco製品の取り扱いに慣れていたため、H3Cのネットワーク製品にすんなり馴染めるか最初は不安がありました。ここでは、検証から見えてきたH3C製品の技術的な特長をご紹介します。

① One OS

まず、H3C製品はすべてComware OSが搭載されており、統一したコマンドインターフェースが提供されています。メーカーによっては機種ごとに異なるOSが搭載されており、コマンド体系が異なることも少なくありません。一方、H3C製品は、一部セキュリティ関連の設定などで、機器ごとのユニークなコマンドはありますが、基本的にはどの種類の機器でも、覚えたコマンドをそのまま使えます。最初は特にですが、覚えなければならないことが単純に少なくなるので、最初のステップのハードルは低くなるのではないでしょうか。他にも、設定作業を単純化したい、自動化したいというときにも便利に活用できると思います。


② ステータス確認のコマンドなどは階層の行き来が不要

例えば、Cisco Catalystでステータス確認をする時に使うshowコマンドは、特権モードで実行するか、特権モード以外で実行する場合は「show」の前に「do」を付ける必要があります。H3Cの場合はどの階層にいても常に「display〜」コマンドでステータス確認が行えます。

些細なことですが、この仕様はかなり便利な仕様だと思います。キッティング中や現地での移行作業の時は、設定変更とステータス確認を何度も行うので、都度、階層を行き来して、ステータス確認を行なうというのがちょっとした手間になりがちですが、H3Cの場合は、設定変更後すぐに「display〜」と入力して確認が行えるので効率的ですね。特に、今いる階層の設定のみを確認するための「display this」というコマンドはかなり便利です。


③ コマンド体系や階層構造がCiscoに類似

H3C製品に触れてみて最もメリットに感じた点は、階層構造の基本的な考え方がCisco製品のものと非常に似ている点ではないでしょうか。Cisco製品を扱ったことのある方は、設定のイメージが付ききやすいと思います。また、テキストベースであらかじめコマンドを作成しておき、CLI(コマンドラインインターフェース)に貼り付ければ一括設定することもできます。この辺りの使い方は、Cisco製品とほとんど同じなので、これまでの慣れたやり方ができなくなって大変…ということもありませんね。



また、H3Cではコマンドエイリアスというものも用意されています。長いコマンドの短縮版を任意で設定することもできるのですが、デフォルトでいくつか用意されており、これを使うと、Ciscoと同じように「show〜」と入力して、H3Cの「display〜」を実行することもできます。この機能を利用すると、ほぼCiscoと同じコマンドが使えるようになるため、Cisco経験者には非常に馴染みやすいと思います。


H3C製品の技術的な特長を3つほど挙げましたが、慣れていないメーカー製品は大変というよりも、異なる仕様もあるけど、これまでの経験や技術も活かしながら扱える!という印象でしょうか。

S&I H3Cビジネス推進部 井上昌春さん

H3Cのここは魅力というところがあれば教えてください。

ー大塚さん

ネットワーク製品に限らず、最近はライセンスの扱いが、「買い切り」から「有償のサブスクリプション」へ移行する傾向が増えています。そんな中、H3Cは一部のセキュリティ製品(UTM)やワイヤレス製品(管理アクセスポイントライセンス)用のライセンスを除き、基本的にライセンスフリーで全ての機能を利用できます。

この機能を使いたいがために割高なライセンスを購入しなければならない、ということもありませんし、追加コストをかけずにいろいろな機能を試せるので、運用フローの改善やこれまでの課題の解決につながる可能性もあると思います。5年/10年見据えた価格面だけではなく運用面でも大きな差が生まれてくるのではないでしょうか。

あともう1点。H3Cの製品は日本向けにOEM提供されています。先ほどご紹介したComware OSが搭載されている製品も日本の主要メーカーから販売されているため、実は知らず知らずのうちに、H3Cのコマンド体系に触れているエンジニアの方も多いかもしれません。

Cisco製品を扱ったことのある方はもちろんですが、メーカー問わず、ネットワーク製品を扱った経験のある方は始めやすい製品だと思います。メーカー勉強会も頻繁に開催されていますので、ぜひご興味のある方はご相談いただければと思います。H3Cのエンジニア仲間をもっと増やしていきたいですね。

café SANDI