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【Vol.023】S&Iニュースレター
増える選択肢と変わるライセンス体系。企業はどのHCIソリューションを選ぶべきなのか?

2024/05/20

最近では、コロナ禍を経て経済活動の再開などを背景に、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャーに対する需要が堅調に推移すると見込まれています。一方で、2024年2月のBroadcomによる買収を契機に大幅にライセンス体系が変更となったVMware製品。HCI市場においても多くのユーザーを抱える同社の動向を背景に、多くのユーザー企業が、今後も継続して利用するか、他社へ移行するか迫られていると言います。

今回は、各社が提供するハイパーコンバージド・インフラストラクチャーソリューションの特徴を紹介するとともに、今後、企業はどのような観点から選択していくべきなのかをご紹介します。

INDEX

経済活動の再開とともに高まるHCIへのニーズと市場の変化

ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー(以下、HCI)とは、SDS(Software Defined Storage)技術により、サーバー・SAN・ストレージの3層構造を排除し、サーバーに搭載されている内部ストレージを共有ストレージのように利用できる仕組みです。主要なHCIソリューションとして、VMware vSAN、Nutanix、Microsoft Windows Server HCI(以下、S2D)などがあり、シンプルな運用管理、ビジネス成長や変化に対応できる柔軟な拡張性、コスト効率の向上などのメリットが挙げられ、企業の規模を問わず採用が進んでいます。

特に、スペースやリソースが限られる各拠点での採用や高いパフォーマンスと拡張性が求められるVDI環境での採用も継続して増加傾向にあるほか、最近では、コロナ禍を経て経済活動の再開などを背景に、HCIに対する需要が堅調に推移すると見込まれています。

一方で、BroadcomによるVMware買収を契機に2024年2月4日をもって従来の買い切り型のライセンスから、新たなパッケージングとサブスク型のライセンスに移行することが発表され、vSANを利用する一部のユーザーでは相対的に費用の引き上げにつながるなどの懸念も生じています。

S&Iでも多くのお客さまにHCIの構築支援を行っており、中でもvSANを利用されるお客さまからは、今回のライセンス体系の変更をキッカケに他社製品に切り替えを検討したいというご依頼が増えています。

しかし、多くのソフトウェア製品でも「買い切り型+保守」という体系からサブスク型が主流になりつつある今、今後も各社でこうしたライセンス体系の見直しは考えられます。企業は、運用や今後のビジネスの観点などから、適したHCIソリューションを選ぶ必要があります。今回は、S&Iのサーバービジネスを牽引する新井健太と加藤タクマよりHCIソリューションの今後について紹介します。

各社が提供するHCIソリューション、それぞれの特長と選ぶ際のポイントとは?

― 新井健太

これまでも、vSANとNutanixの機能比較やDellとVMwareが共同開発したVxRailの検証などの記事を公開してきましたが、HCIそれぞれ製品によって特徴があります。まず、主要ソリューションであるvSAN、Nutanix、S2Dの特長とどんなお客さまからのニーズが多いのかについて簡単に紹介します。

S&Iデジタルインテグレーション本部 デジタルプラットフォームサービス プラットフォームディールハブ 部長 新井健太

使い慣れたユーザーも多い『VMware vSAN』

VMware vSANの特徴は何といっても多くのお客さまが利用されているvSphereがベースになっていることではないでしょうか。使い慣れたvSphereで引き続き運用できる点が最大のポイントです。vSphereを継続利用したいというお客さまから高く支持されています。

安心のサポート体制が特徴『VxRail』

VMwareとDellが共同開発したHCIソリューションです。定期的に発生するvSphereのソフトウェア更新をDellサポートで対応してもらえるプランもあります。VMware本社に常駐するDell社員がVMwareサポートと密に連携しているサポート窓口に、24時間365日いつでも日本語で問い合わせられる安心のサポート体制も特長です。vSANのメリットに加えてDellの運用サポートを活用できるため、運用負荷を減らしたいというお客さまにオススメです。

AVHでコスト抑制!『Nutanix』

複数のハイパーバイザー(vSphere・AHV・Hyper-V)がサポートされており、中でもAHVの場合、ハイパーバイザー用の追加ライセンス料がかかりません。
AHVでハイパーバイザー分のコストを削減したいお客さまにもオススメで、最近ではもともとNutanix+vSphereで導入されていたお客さまが更改に伴ってNutanix+AHVに変えるケースも増えています。また、非同期レプリケーション機能が標準搭載されているため、複数拠点にいれてDR構成を組みたいというお客さまからのニーズも多くあります。

RDMAでパフォーマンスUPを狙える『Windows Server HCI(S2D)』

ハイパーバイザーのライセンスでWindows Server仮想マシンを無制限に立てることができます。3ノードまでの小規模環境ではスイッチレス構成も可能です。一方、大規模環境においては、ストレージトラフィックをRDMA(Remote Direct Memory Access:リモートのコンピューター間で直接メモリーへデータのDMA転送を行う仕組み。OSを経由せずにデータ転送が行われるため、高スループット、低レイテンシの通信が可能。)で処理することで、ハイパフォーマンスな構成を組むこともできます。

Windows Serverが多く採用されている業務システムで、仮想マシンライセンスコストを削減したいお客さまや、小規模環境だからこそ初期導入コストを抑えたいお客さまから高く支持されています。また、SQL Serverなど性能要求の高い仮想マシンを利用しており、RDMAを活用してパフォーマンス向上を狙いたいお客さまにオススメです。

[事例で解説]ソフトウェア更新がままならない…運用課題をクリアしたVxRailへの移行

― 加藤タクマ

具体的な事例として、Veeam Backup&Replication(以下、Veeam)を使用して3Tier仮想化基盤からVxRailへ移行したお客さまをご紹介します。

こちらのお客さまはもともと3Tier環境を利用されていましたが、vSphereの定期的なソフトウェア更新に割く時間がなく、導入時のバージョンで塩漬けしたままvSphere 5.5のEOLを迎えた後も運用されていました。

S&Iデジタルインテグレーション本部 デジタルプラットフォームサービス プラットフォームディールハブ 加藤タクマ

弊社では、お客さまのvSphereを継続利用したいという意向と、ソフトウェア更新に手が回らない状況を踏まえ、Dellサポートにてソフトウェア更新が可能なVxRailをご提案しました。

また、通常vSphereからvSphereへの移行にはストレージvMotionを使うことが多いのですが、既存環境のvSphereのバージョンが古く、ストレージvMotionを利用できなかったため、Veeamというサードベンダーのバックアップ製品を使った移行をご提案しています。
Veeamの場合、バックアップデータを格納する筐体やOSライセンス、ソフトウェアライセンスなどのコストがかかってしまうのですが、移行後もVxRailの仮想マシンのバックアップに活用できるため、コストを無駄にせずに堅牢な環境を構築できます。こうしたメリットもお客さまにこの提案を受け入れていただけたポイントでした。

― 新井健太

こちらのお客さまはもともとVMwareユーザーだったこともあり、使い慣れたVMwareの技術で開発されているVxRailへ移行されましたが、冒頭でご紹介したとおり、VMwareライセンス体系の変更により今後は他社製品への切り替えを検討されているお客さまもいらっしゃると思います。

Nutanixなど純正の移行ツールがメーカーから公開されている製品もありますが、お客さまの既存環境がツールの前提条件を満たしておらず使用できないケースや、ツールが無償提供であるがゆえにサポートが手薄となるケースなど、一筋縄ではいかない場合も少なくありません。
S&Iでは、先ほどご紹介した事例のように、お客さまにどのHCI製品が適しているか現状を踏まえた検討をするとともに、仮想マシンをどのように移行していくかも計画段階からサポートしていますので、安心してご相談ください。

今後は、一次代理店としてネットワーク製品を中心に扱ってきたH3CのHCI製品の取り扱いも予定しており、製品検証を進めています。H3C HCIは、H3Cが独自開発しているハイパーバイザーおよびSDSで構成されます。vSphereよりも後発ではあるものの、vSphereと同様の機能を搭載しており、中国におけるHCI市場では高いシェアを持っています。vSphereからの仮想マシン移行機能が管理画面に標準搭載されていることが特徴で、vSphereからの移行先の選択肢の1つとなる製品ではないかと考えています。

S&Iでは、市場ニーズを見据えながら、常にお客さまのご要望に沿ったご提案ができるよう体制を整えています。
例えば、柔軟でスケーラブルなインフラストラクチャが求められるクラウドネイティブなアプリケーションやコンテナ化などのニーズ拡大とともに、クラウドとオンプレミスのリソースをシームレスに統合し、ハイブリッドクラウド環境を実現するための選択肢としてHCIが採用されるケースが一層増えると考えています。

他社ソリューションからの移行はもちろん、更改や日々の運用面においても、お客さまにとってのメリット・デメリットを考慮したご提案をさせていただいています。

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