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【Vol.016】S&Iニュースレター
お客さまの努力を最小限にする “エフォートレス”の時代に突入!
次に進むべきコンタクトセンターのデジタル化とデータマネージメント

2022/06/02

コロナ禍を背景に、急速に加速するコンタクトセンターのデジタル化。
チャットボットなどの自動応対と有人応対の併用やセルフ検索サービスなどさまざまなITサービスを導入したものの、顧客情報や購買情報、対話ログやメールログなどのさまざまなデータが蓄積するところで止まってしまい、真のDX化まで踏み込めていないコンタクトセンターが増えています。今回は、コンタクトセンターDXの現状と今後のあるべき姿について、パーソルワークスデザイン様の事例と併せてご紹介します。



● INDEX


1. コンタクトセンターDXの現状と課題

コンタクトセンターDXは、経営戦略に基づいて、①業務効率化、②事業継続性、③CX(カスタマーエクスペリエンス)向上、④リソース効率化の4つの軸で推進されています。お客さまとの窓口を請け負うオペレーターや、センター運営や現場管理を担うスーパーバイザー、品質管理部門など、業務に応じて施策は異なるものの、多くのコンタクトセンターで、さまざまなテクノロジーを活用して業務プロセスそのものを見直し、事業・経営の変革をしようとしています。

既に、多くのコンタクトセンターでは、応対の自動化や働く環境の整備、新たな価値創造を目的に、ITサービスの導入を進めています。
特に、コロナ前は「集約型での応対業務」をベースに、応対品質の改善や業務効率化などが主流だったのに対し、withコロナ時代の新しい生活様式が定着しつつある今は、「分散型の応対業務」を前提としたリスクや環境面での変化への対応を目的にした自動化やAI、データ分析への取り組みが加速しています。

引用元:コールセンター白書2021

一方で、ITサービスの導入は進むものの、「デジタル化すること」が目的となってしまい、計画を実行する上でデジタルシフトの難しさに直面しているケースも多く見受けられます。これらは、経営戦略視点での検討がそもそも足りていなかったことや、ベンダーへの依存度が高くDX戦略を推進する人材が社内に不足していたために、検討段階で適切な議論/計画ができていなかったことなどが原因として挙げられます。また、ITサービスを導入したことで、結果的に運用負荷が高くなってしまうなど、業務/運用設計の失敗などの問題も生じています。

S&Iでは、コンタクトセンターDXの実現に向けて、インフラ基盤の構築から業務効率化を可能にするITサービスまで、お客さまに寄り添ったご支援を幅広く提供しております。


2. S&Iの次世代コンタクトセンター

① 顧客接点

LINEなどのテキストチャットサービスの普及とAIをはじめとするテクノロジーの発展により、お客さまからのお問い合わせの形式は、ここ数年で多様化しています。特に、顧客接点においては、電話応対が最大のお客さまサポートだという考え方から、いかに簡単に求めている答えに辿り着けるのか、すなわちエフォートレス化(努力をせずとも回答に辿り着ける)を進める考え方に変わりつつあります。
S&Iでは、エフォートレスサービス支援として、電話やチャットによるオムニチャネル化の構築支援に加え、「顧客体験検索型チャットボット」・「オートコール」・「音声チャネル自動応答」等の自動化サービスを提供しております。

② 業務支援

少子高齢化が進む中、コンタクトセンター業界でも人材不足は長年の大きな課題の一つです。近年は、窓口需要の増加や在宅化対応等の働く環境の多様化により、採用難は少しずつ改善してきているように見えます。しかし、離職率については、お問い合わせ内容の複雑化やクレーム対応などストレスが多いため高水準を推移しており、一人前のオペレーターとして応対できるようになるまでの教育に多くの時間をかけているのが現実です。
S&Iでは、「熟練者のノウハウを持ったFAQ検索」・「オペレーターの応対品質自動評価」・「業務処理の自動化」・「対話内容の要約」等、応対業務のデジタル化を推進するサービスを提供することで、これらの課題の解決を支援しています。

③ データ利活用

電話システムから取得できる着信数・保留数・応答率等の各種数値データを利用し、応対品質を向上させる施策や、センターに寄せられるお客さまの声をデジタル化し市場傾向や顧客ニーズを導き出し、プロモーション等に活用する取り組みなど、さまざまなデータ利活用が始まっています。
さらに、これらの取り組みで蓄積したデータを、AIなどの自動化サービスの学習データへ展開し、運用内で精度を向上させていくデータマネージメントの領域も次の利活用の一つの背策として着目されています。
S&Iでは、デジタル化の先にあるデータ利活用の支援として、お客さまとの対話内容の分析支援や、センター内に蓄積されるさまざまなデータの収集・蓄積・利活用を実現するデータプラットフォームの構築を支援しています。

④ 人員最適化

大規模なコンタクトセンターでは、予測が難しい日々の入電数の変化や各オペレーターの効率的な業務対応を、スーパーバイザーが経験値の中で適切な人材配置を判断しているケースが多く見受けられます。
最近では、徐々にワークフォースマネージメントシステムの導入が進み、人の経験値ではなくシステムが導き出した適正な人員配置により、サービス品質と稼働率の向上に役立てようとするセンターも増えてきました。
S&Iでは、電話応対、チャット対応、ACW*1等の作業の量を計測・予測し、その作業量に対してサービス品質を担保できる最適な人材配置を行うシステムを提供しております。※1:ACW:After Call Work

⑤ 保全・監査

クラウド化や在宅化等の社外環境での業務推進やお問合せチャネルの多様化により、コンプライアンス対策やリスク管理への意識がさらに高まっております。
電話応対業務だけではなく、さまざまな応対チャネルで録音/収集した情報を、迅速に検索・分類・抽出し、不慮の事態に備えることが必要とされています。
また、AI技術の進化により、録音音源を高い精度で音声認識・テキスト化し、その内容をよりわかりやすく可視化することで、監査等に活用するケースも増えてきています。
S&Iは、これらのチャネルや環境での通話録音システムの構築および蓄積された音声データを利活用し、安心・安全なセンター運用ができるよう支援しております。

⑥ ITインフラ

オペレーターの在宅対応が進む中、ITインフラの在り方も大きく変わってきています。
いつでもどこでも応対業務ができるよう、クラウド型のサービスを利用し、在宅におけるセキュリティリスクを軽減させるためのゼロトラストネットワークの導入やオペレーターのシンクライアント端末の利用も進んでいます。
S&Iは、オンプレ/クラウド問わず、お客さまのご要件に応じた音声基盤およびそれに関連するITインフラ環境の構築をトータルで支援しております。



3. 応対履歴を価値あるデータに変える!パーソルワークスデザイン様との取り組み事例

今回ご紹介するパーソルワークスデザイン株式会社様(以下、パーソルワークスデザイン)は、早い段階からナレッジを中心としたセンター運営で、コンタクトセンターの働き方改革を推進されてきました。特に、センター運用における「暗黙知」の重要性に早くから着目し、蓄積したナレッジデータの価値を最大化する仕組みを確立されつつあります。

その背景と取り組みについて、パーソルワークスデザインにおけるセンター運用メソッドKCS(ナレッジセンターサービス)の第一人者であり、AIとデータの利活用を第一線で押し進める松野 淳一氏と、S&Iのコンタクトセンター事業およびAI事業の責任者である佐々 博音がご紹介します。

S&I 佐々:

さまざまなITサービスが導入されたことで蓄積されるようになったデータは、文章や計算式図表で説明できる「形式知」が主流です。例えば、応答率や平均処理時間、顧客満足度や購入割合などです。AI技術を利活用したお問い合わせのエフォートレス化が進む中で、重要となるのがオペレーターのノウハウすなわち「暗黙知」のデジタル化です。
これからのコンタクトセンターDXは、「形式知」+「暗黙知」をコンタクトセンター運用の中でうまく適合させ、データマネージメントしていくことが重要だと言えます。

S&I 佐々 博音
FAQ検索サービスを例に挙げると、従来、FAQデータには「代表質問」「回答文」をセットにして登録されています。しかし、オペレーターは、顧客からのお問い合わせに対して、 “顧客が体験したこと/意図を質問文に変換”して回答を導き出すということを無意識に行っています。そのため、 “変換”がスムーズにできる熟練オペレーターは、FAQ検索サービスを便利なツールとして使いこなせますが、“変換できない”新人オペレーターは、なかなか回答にたどり着けず、ツールを使いこなせません。

ここで重要になるのが「顧客が体験したこと」と「FAQデータ」を紐づけているオペレーターのノウハウや経験値、つまり「暗黙知」です。「代表質問」と「回答」に加えて、「顧客が体験したこと」もセットにし、暗黙知もFAQデータとして蓄積することで、“顧客が体験したこと/意図を質問文に変換”する必要がなくなるため、オペレーターの経験値やスキルによらず、誰でも使えるツールとして活用できるようになります。

DXを進める上で、形式知だけではなくオペレーターの頭の中身である暗黙知を形式知に変換して活用していくことが重要と言えるでしょう。
パーソルワークスデザイン様は、AIを活用しながらセンター運営の中で暗黙知を蓄積・駆使することでエフォートレスサービスを展開し、さらには蓄積した暗黙知を「顧客体験データプラットフォーム」として活用する段階にまで進んでいらっしゃいます。


パーソルワークスデザイン 松野氏:

パーソルワークスデザインは、パーソルグループのBPO(Business Process Outsourcing)業務を専門としている会社です。2015年からナレッジマネジメント手法「KCS」を基軸に、人依存からの脱却、離職率の低減に取り組んでいます。S&Iさんとは、2016年頃から、KCSとAIを融合させたセンター運用の実現を進めています。

コンタクトセンター業界では、長年、有人対応が最高のおもてなしだと信じられてきましたが、実は、お客さまが自己解決できず、やむなく有人対応にコンタクトしていただけという事実が明るみになりました。また、お客さま自身もコロナ禍で、当初いやおうなく自動応対やセルフヘルプを利用しはじめましたが、実は便利なことに気づき始めています。

パーソルワークスデザイン 松野 淳一 氏
そもそも問題を発生させないか、もしくは努力せずに解決できるように、有人対応以前の対応のサービス価値を上げることが、今のトレンドになりつつあります。電話での問い合わせ件数を減らすためのサポートとしての無人化/自動化ではなく、提供できる価値を向上させるという視点でDX化に取り組むことがカギと言えます。無人応対と有人応対の割合は、3:1が理想的です。

パーソルワークスデザインでは、顧客接点サービスとして、AIチャットボット/有人テキストチャットサービス、Web自動応対サービス/音声自動応対サービスを用意し、顧客接点のあるオペレーターがナレッジを作成&活用するというサイクルを運用の中で回しています。
ここでポイントになるのが、顧客接点のあるオペレーターがナレッジを作成している点です。先程のお話にもあったように、ナレッジにはオペレーターの頭の中にある情報=暗黙知が重要になるため、顧客接点のない担当者が作成しても、結果的に使えないツールが出来上がってしまうからです。

こうした運用により、当社のセンターでは、あらゆる顧客接点から得られた暗黙知を意味あるデータとして溜め込み、活用することで、顧客接点サービスそのものの提供価値を高め、「問題が解決できない」「窓口につながらない」などの顧客のストレスを最小限にした「エフォートレス対応」を実現しています。

さらに、これまでは、こうして蓄積したデータは、窓口を提供しているクライアントごとに用意され、その中で完結してしまっていましたが、同じようなテーマを取り扱う他の窓口で再利用することで、新規のコンタクトセンターのスピーディーな立ち上げに対応できるようになりました。立ち上げ時からエフォートレス対応を提供できる点が強みの1つになっています。

S&I佐々:

パーソルワークスデザインさんは、複数の窓口から入ってきた顧客体験データを自動で蓄積し、汎用的に使えるデータとして再利用するという運用をサイクル化することで、常に新しい顧客体験に対応できるエフォートレスサービスを提供されています。AIとコンタクトセンター運用をうまく融合させ、単なる応対履歴を価値あるデータに生まれ変わらせ、さらなる価値を作り出しています。まさに、次のステージに進まれている、コンタクトセンターDXの成功例の1つです。

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