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café SANDI

【Vol.024】S&Iニュースレター
生成AIでさらに進化した “音声チャネルの自動化”
あらゆるチャネルの最適化で顧客体験価値を高めていく

2024/10/08

チャットボットやFAQの充実など、顧客による自己解決を促すセルフサービスの提供が広まる中、顧客満足度やブランド価値の向上を目的に改めて注目されているのが、電話による問い合わせ窓口などの「音声チャネル」の最適化です。
今回は、音声チャネルの自動化として注目される「ボイスボット」に焦点を当て、最近の動向とS&Iの取り組みについてご紹介します。

INDEX

AI技術の進化で複雑なタスクも可能に!注目度の高いボイスボット

昨今、コンタクトセンター業界では、オペレーターの採用難による人手不足解消や生産性の向上、応対業務の効率化を目的に、顧客がストレスなく必要な情報を得られる「エフォートレスなサービス」の提供が求められています。

こうした背景から、顧客自身による自己解決を促すセルフサービスの拡充、AIを活用した応対の自動化が進んでおり、チャットボットやビジュアルIVRなどのノンボイスチャネルの自動化が定着しつつあります。そして、最近では音声チャネルの自動化へのニーズも非常に高まっています。

特にこの領域では、AIの音声認識や自然言語処理の技術が目まぐるしい勢いで進化しており、一段と複雑な文脈の理解や自然なコミュニケーションができるようになっています。その結果、顧客に対してより高品質なサービスを提供したいと考えるコンタクトセンターでは、ノンボイスチャネルに加えて、音声チャネルの自動化ソリューションの検討や導入が進むようになりました。

その音声チャネルの自動化の1つに「ボイスボット」があります。電話での応対業務において、オペレーターを介さずにAIが自動的に応対する仕組みです。24時間365日対応でき、特定業務や問い合わせへの自動対応だけでなく、自由発話による用件のヒアリングや内容に応じた接続先の振り分けも可能です。また、外部システムとの連携もできるため、予約の空き情報の確認、ご本人確認などの定型業務の自動化や、オペレーターに接続する前の事前処理に適しています。

こうした特徴を活用することで顧客満足度の向上や競争力の強化などが期待できると、今後導入したいITソリューションとして注目されています。

S&Iでは、2001年にコンタクトセンター事業に本格参入して以来、コンタクトセンター基盤の構築をビジネスの大きな軸の1つとして推進してきました。一方で、コンタクトセンター業界とAI技術の関係は深く、2010年代頃からAIを活用した業務改革が急速に進んでいます。こうした背景を踏まえ、コンタクトセンター基盤の構築だけではなく、業務領域における課題解決を支援できることが今後重要な要素になると捉え、AI事業へ本格参入した2016年から音声認識技術や自然言語処理の領域を軸に、お問い合わせ応対業務の効率化や応対品質の向上を支援するサービスの開発、提供を進めてきました。
そして、ここ数年では、コンタクトセンター基盤の構築経験とAIの音声認識技術や自然言語処理の領域におけるノウハウを強みに、ボイスボットソリューションの構築支援も進めています。

今回は、注目が集まる音声チャネルの自動化をテーマに、S&Iのボイスボットソリューションへの取り組みについて、AIソリューション開発を担当する成瀬雅祥さん、山根友彬さん、金子和樹さんにお話を伺いました。

コンタクトセンター基盤の構築実績と音声領域におけるAI技術への知見が強み

― 成瀬さん

ボイスボットの仕組みは、AIの音声認識技術と自然言語処理の技術を中心に構成されています。音声認識技術に関しては、応対支援サービス「AI Dig」や応対品質チェック支援サービス「AI Log」などの自社開発サービスで行ってきた辞書学習や精度向上のための運用サイクルの確立などの取り組みを通じて、音声認識のメカニズムやアーキテクチャの特性に対する理解を深めてきました。もう一方の、ボイスボットのコールフローの仕組みで重要になる自然言語処理については、チャットボットのシナリオ作成での経験が活かされています。

また、多くのボイスボットはCRMやPBXなどのCTI基盤と連携させて、自動応答からオペレーターによる有人応対へのスムーズな接続にも対応しています。お問い合わせチャネル全体から最適な導線設計を行うためには、CTI基盤構築のスキルは不可欠です。

AI技術に加え、CTI基盤構築の経験・スキルがあり、クラウドネイティブなアプリ開発ができるSIベンダーであることは、S&Iの強みと言えるでしょう。

S&Iデジタルエンゲージメント本部 デジタルコミュニケーション sandiAI&APDディールハブ 副部長 成瀬雅祥

― 山根さん

現在、S&Iでは、MOVIBOICE、LINE WORKS AiCall、Google CCAIの3つのボイスボットソリューションを中心に扱っています。それぞれの特徴を踏まえ、お客さまの抱えている課題やご要件に応じて適したソリューションをご提案させていただいています。

ボイスボットで応対を自動完結させることはもちろんできますが、一方で、イレギュラーな対応が必要なケースや顧客の感情に応じた柔軟な対応が必要なケースは得意としていません。そのため、ご提案しているお客さまの多くでも、オペレーターにつなぐ前の「前捌き」で活用されています。

S&Iでは、ボイスボットに対応させるべき部分とオペレーターが対応すべき部分を明確にし、どのシステムとどんな情報を連携すればスムーズな対応が実現できるか、お客さまのコンタクトセンターシステム全体と応対フローを考慮した設計〜構築までトータルで行なっています。これはAI領域だけではなくCTI基盤の構築にも強いS&Iだからこそできるご支援です。

S&Iデジタルエンゲージメント本部 デジタルコミュニケーション sandiAI&APDディールハブ 山根友彬

S&Iが取り扱うボイスボットソリューション

MOBI VOICE
最短5分で自動応対サービスを公開可能な、モビルスが提供するフルクラウド型のボイスボットサービス。ノーコードでシナリオ登録ができ、専門知識がなくても管理画面上で簡単にシナリオ作成・編集が可能。クラウド回線サービスと接続できるため、PBXなどの設備がなくても利用できる。シンプルなコンタクトセンターを新規で構築したいお客さまやとにかく早く始めたいという場合にオススメ。

LINE WORKS AiCall
LINE WORKSのAI技術である音声認識・音声合成・会話制御の仕組みを組み合わせて実現する電話応対サービス。お客さまごとにオーダーメイド開発するため、PBXとの直接接続やCRM連携などにも対応できる。既存PBXやシステム連携が必須な場合にオススメ。

Google CCAI
GoogleのAI技術を駆使したセルフサービスの提供で、CX向上を支援する自動応答ソリューション。アバイアやGenesys Cloud CXなどとシームレスな連携ができるほか、豊富なAPIで柔軟なカスタマイズが可能。BIツールなどと連携して分析まできっちり対応したい場合にオススメ。

― 金子さん

ボイスボットを導入して音声チャネルの自動化を図ったとしても、オペレーターによる応対は必ず残ります。一方で、応対件数の増加やオペレーターの応対時間短縮など応対業務の生産性や効率化という観点で効果が見えやすいのも特徴で、お客さまのビジネスに影響する効果を見ながら、ボイスボットによる応対フローの最適化を進めています。

オペレーターの人数を削減してコストを下げるためにボイスボットを導入するという発想だけではなく、あふれ呼(コンタクトセンターに電話がかかってきてもオペレーター数が足りず対応できない、入電数が回線数を上回りいつまでもつながらないこと)をいかに減らせるかということも重要です。効率的にオペレーターを配置し、より複雑な業務やクリエイティブな仕事にシフトしていくという観点も含めて、お客さまと一緒に課題解決に取り組んでいます。

S&Iデジタルエンゲージメント本部 デジタルコミュニケーション sandiAI&APDディールハブ 金子和樹

生成AI技術との連携でボイスボットでより柔軟な対応が可能に

― 成瀬さん

最近では、ボイスボットにも生成AI技術を積極的に取り込んでいくことで、コンタクトセンター業務のさらなる高度化を目指しています。生成AIと連携することで、具体的にどのような用途で活用できるのか、簡単にご紹介します。

まず、ボイスボットと顧客とのやり取りが終了した後での活用例として「会話要約」があります。顧客とボイスボットの応対履歴をもとに、生成AIで要約を行います。

■ 会話要約

ボイスボットで聞き取る住所や電話番号といった本人確認用の属性など、あらかじめ定義していた情報を抜き出すだけではなく、会話内容から重要ポイントを抜粋し、要約させることができます。ボイスボットからの引き継ぎ時に、オペレーターがボイスボットとどのようなやり取りがされていたかを容易に確認することができ、その後の対応がスムーズになります。

次に、顧客とボイスボットとのやり取りの最中での活用例をご紹介します。ここでは、ボイスボットと顧客の会話内容をリアルタイムで生成AIを利用して意図を理解させることで、より高度な必要事項の抽出や振分に活用します。

■ 項目抽出

生成AIを利用して意図を理解させることで、真のニーズを的確に把握することが可能になります。一問一答形式でヒアリング項目を埋めていくシナリオになっていなくても、顧客が自由に話す内容から意図を理解して必要な項目を抜き出すことができます。「x月y日からz日間」や「来週の火曜日から木曜日までの間」など、人によってさまざまな表現がされる場合も正しく理解できます。

■ 転送先の振り分け

顧客が話す内容を認識し、適切な窓口に自動で振り分けることができます。あらかじめボイスボットで定義することが難しい振り分け先や、定義していなかった内容であった場合も、意図を推測して振り分けが可能になります。ボイスボットだけでは振り分け先を判断できず、特定のオペレーターに転送が偏ってしまうことの抑制にもつながります。

さらに、顧客の話す内容から感情的な表現を生成AIに抽出させることも可能です。ここでは、ボイスボットと顧客のやり取りをリアルタイムにテキスト化し、それをもとに生成AIに感情分析させる使い方をご紹介します。

■ 感情分析

顧客の話す内容から感情の機微を察知した場合は、言い回しを変える、オペレーターにエスカレーションするなどの適切な対応が可能になります。クレームなどの温度感の高いお問い合わせかどうかを早い段階で判断でき、さらなるトラブルへの発展を最小限に抑えられます。

― 山根さん

このように、従来のボイスボットだけでは判断できなかったことも生成AIと連携させることで、より自然に高度な対応が可能になります。顧客満足度の向上や業務効率化の両立はもちろん、感情分析などをうまく活用することで、カスタマーハラスメントによるオペレーターの精神的負担の軽減の一翼を担う存在になるのではないかと考えています。

ノンボイスチャネルと音声チャネルの融合で新たな顧客体験価値を創造していく

― 金子さん

チャットボットやビジュアルIVRなどノンボイスチャネルの対応範囲が拡がっていますが、今後も電話での問い合わせは一定量残るでしょう。むしろ、音声チャネルが提供する顧客体験価値をいかに上げられるかが、企業のブランド価値の向上、他社との差別化につながっていくと考えられます。そのため、今後、より高度なサービスを提供するためには、ノンボイスチャネルと音声チャネルの両面から最適化を考えていかなければなりません。

例えば、チャットボットで解決できなかったため電話で問い合わせたが、待ち時間が長い、複雑なメニューで選択肢が多い、十分な情報が提供されないなどの理由により、途中で離脱してしまうことがあります。また、オペレーターから続きの手続きをチャットボットによる応対に促されたが、オペレーターに伝えたことをもう一度入力しなければならず面倒になって途中で離脱してしまうということもあります。つまり、各チャネルの最適化だけに焦点を当てていても、結果的に顧客の手間が煩雑になり、信頼を損ねる可能性もあるということを意識しなければなりません。

― 山根さん

ノンボイスから音声チャネルへ、音声からノンボイスチャネルへとそれぞれのチャネル連携ができておらずバラバラの状態では、顧客が本当は何に困っているのか、本質を正しく掴むことはできません。あらゆるコンタクトチャネルの動線を可視化することで、問い合わせの途中でなぜ離脱したのか、どこに原因があるのかを分析し、継続的な改善に繋げられるようになります。

S&Iでは、生成AIなどの新しい技術を活用しながら、顧客がどのコンタクトチャネルを使って問い合わせをしてきたとしても最高の顧客体験価値を提供できるよう取り組んでいます。人と社会をつなぐ「コミュニケーションの進化」に貢献するため、今後も、音声チャネルとノンボイスチャネルのさらなる融合を図っていきたいと考えています。

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