MENU
情シス担当者のためのサーバー/プラットフォーム Tech Blog

【Vol.9】VMwareから別基盤へ移行するには?
移行ツールとバックアップツールを使った方法を簡単に解説

2025/01/22

VMware間の移行の場合、基本的にメーカーがサポートしているため、移行したものの動作しない…ということはほとんどありません。もちろん、環境によっては失敗することもあるため楽観視してはいけませんが、比較的安全に移行できます。

一方で、VMwareから別の仮想基盤へ移行する場合は、移行ツールを利用する方法とバックアップツールを利用する方法があります。今回は、VMwareからMicrosoft Hyper-V、Nutanix AHVへ移行する場合を例に、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。

移行方法①:仮想基盤メーカーが提供している移行ツールを使う

移行ツールは、既存環境から新しい仮想基盤へ仮想マシンやデータを直接移行するための専用ツールです。メリット・デメリットは以下の通りです。


[メリット]
    ・データ移行や設定変更が自動化されており、作業時間を大幅に短縮できる
  • ・ツールが移行中のエラーを検出・修正し、移行後の環境の整合性を担保


[デメリット]
  • ・ライセンス費用が発生する場合もある
  • ・ツールの対応範囲や機能に依存するため、特定の環境ではうまく移行できない可能性がある



ここでは、VMwareからHyper-Vへ移行する場合と、Nutanix-AHVへ移行する場合の移行ツールについて、その特徴をご紹介します。

■ VMwareからHyper-Vへ移行する

Microsoftが有償で提供する標準ツール「System Center Virtual Machine Manage(以下、VMM)」を利用できます。

VMMは、仮想環境の管理に特化しており、仮想マシンの作成、管理、最適化を支援するツールです。仮想マシンのディスクフォーマットや設定をHyper-Vに適合するためのプロセスが自動化できるなど、Microsoftが提供しているツールのため、Hyper-V環境への移行は非常にスムーズに行えます。また、移行後は、仮想マシンの管理ツールとしても活用できます。

ただし、VSAN環境からの移行の場合は、VMware VMをHyper-V に変換できないなどの制約もあるため、注意が必要です。

■ VMwareからNutanix AHVへ移行する

Nutanixから提供されている標準の移行ツール「Nutanix Move」を利用できます。無償で利用できるアプライアンス製品で、異なる仮想化プラットフォームの間の仮想マシン移行を効率的に行えます。VMwareだけではなく、Hyper-VやAWSなどもサポートしており、複数の仮想化・クラウド環境からNutanix移行が可能です。

GUIベースで、直感的に操作できる点が魅力です。複雑な移行手順を簡略化でき、移行にかかる技術的な負担を大幅に削減できるでしょう。

移行方法②:バックアップツールを使う

次に、バックアップツールを利用して移行する方法を紹介します。バックアップツールを使って、移行元の環境のバックアップを取得し、新しい環境にリストアすることで移行する方法です。


[メリット]
  • ・バックアップを取得するため、移行中に問題が発生してもデータの復元が可能
  • ・移行後もバックアップサーバーとして活用可能


[デメリット]
  • ・バックアップとリストアのプロセスは移行ツールに比べて時間がかかる場合がある
  • ・バックアップツール用の筐体やライセンスを購入する必要がある



ここでは、代表的なバックアップツールを使った移行方法についてご紹介します。

■ Veeam Backup & Replicationを使った移行方法

Veeam Backup & Replication(以下、Veeam)は、VMware vSphere、Hyper-V、Nutanix AHVをサポートしているため、VMwareからHyper-V、Nutanix AHVのどちらに移行する場合も利用できます。

ここでは、バックアップデータを仮想基盤にマウントして、直接仮想マシンを起動する「インスタントリカバリ機能」を使う方法をご紹介します。

[インスタントリカバリ機能を使う]
まず、移行元の仮想マシンのバックアップを作成し、移行先の環境でバックアップデータを、インスタントリカバリ機能を使って起動します。そして、移行先の環境で仮想マシンをリカバリし、移行が完了します。

この機能を使うと、バックアップファイルを転送する前に、新基盤で仮想マシンを起動し、動作確認を行ってから本番環境へ移行できます。データ移行にかかる時間は、構成や仮想マシン容量によってさまざまですが、移行先の準備やテストが完了するまで、バックアップデータを利用して運用を継続できるため、ダウンタイムを最小限に抑えられます。また、万が一移行先でトラブルが発生した場合も、バックアップデータから簡単に復旧できます。

なお、Veeamを使ったもう1つの代表的な移行方法として、仮想マシンのコピーを別の環境に作成し、元の仮想マシンと同期をとる「レプリケーション機能」を使う方法がありますが、この方法は同じハイパーバイザー間での移行する場合のみになるので注意が必要です。

Veeamは、GUIベースのシンプルな操作で移行作業を進められる点は魅力ではないでしょうか。また、古いVMware ESXiもサポートしている点も頼もしいポイントです。当社でも、2022年にEOLを迎えている「vSphere 6」からの移行の場合は、Veeamを利用することが多くありました。2025年10月にEOLを迎えるvSphere 7からの移行でも利用が増えるのではないでしょうか。

■ Arcserve UDP

Arcserve Unified Data Protection (以下、Arcserve UDP)もVeeamと同様、VMware vSphere、Hyper-V、Nutanix AHVをサポートしています。ただし、Veeamと比べて、移行元・移行先のハイパーバイザーと仮想マシンOSの組み合わせによっては、移行時に一部の機能が使用できないなど、互換性確認がVeeam Backup & Replicationよりシビアな傾向があります。

Arcserve UDPでも、Veeamのインスタントリカバリ機能やレプリケーション機能に相当する機能が搭載されています。それぞれ、「インスタントVM」、「仮想スタンバイ」という機能です。

[インスタントVM]
Veeamのインスタントリカバリ機能と同じ機能となります。Arcserve UDPでは移行元ハイパーバイザー・移行先ハイパーバイザー・仮想マシンOSがWindowsかLinuxかによってインスタントVM機能が使えない場合もあるので、互換性の確認は必須です。

[仮想スタンバイ]
移行元の仮想基盤でバックアップを取得後、新基盤への復旧処理を続けて行うことで移行を行います。先ほどご紹介したVeeamのレプリケーション機能に近い機能ですが、VeeamではWindows仮想マシン/Linux仮想マシンでレプリケーションが可能なのに対し、Arcserve UDPではWindows仮想マシンのみサポートされます。事前に移行する仮想マシンOSがサポート対象かどうかを確認する必要があります。

まとめ

いかがだったでしょうか?
移行プロセスを効率化したい、大規模プロジェクトや複雑な環境では移行ツールがおすすめです。また、バックアップツールを利用すると、移行時に構築した環境をそのままバックアップ環境として活用できるメリットもあります。それぞれの特徴やメリットを把握した上で、移行プロジェクトの規模や達成したい目標に応じて選定してください。

S&Iでは、仮想化環境間での仮想マシンの移行はもちろん、物理サーバーからの移行もご支援しています。事前に移行対象のデータを確認し、もっとも影響が少ないスケジュール・移行方法をご提案させていただいております。ご興味のある方はぜひS&Iまでご相談ください。

【この記事の執筆者】加藤 タクマ(かとう たくま)

1993年S&I入社。古くは、通信速度がKbpsの時代からビルや工場などの拠点を接続するネットワークエンジニアとして従事。長いキャリアを通して、ネットワーク速度の進化、トポロジーの進化など、テクノロジーの変化と発展を身をもって体験。現在は、サーバーやストレージの領域まで守備範囲を広げ、サーバーインフラの進化を支えている。

新着コラム