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情シス担当者のためのサーバー/プラットフォーム Tech Blog

【Vol.1】VMwareからHyper-Vへ移行すべきか?
移行時の評価ポイントをSIerの視点で解説

2024/10/02

Broadcom社によるVMware買収によりライセンス高騰が起きていることをキッカケに、IT担当者の中には、次期仮想基盤の更改のタイミングで、VMware以外のソリューションへの乗り換えを検討している方も多いのではないでしょうか?

VMwareからの乗り換え先としては、NutanixやHyper-V(Windows Server HCI)などが挙げられますが、乗り換えの際には、現在利用している基盤の機能要件や運用要件を満たせるか評価する必要があります。

今回は、VMwareの移行先としても注目されているHyper-Vを例に、評価ポイントを解説します。

Hyper-Vに移行してもそのまま使える機能とは?

Hyper-Vは、Microsoftが提供するハイパーバイザー型の仮想化ソフトウェアで、Windows Server 2008から機能の一部としてOSに搭載されています。

Hyper-V利用に当たっては買い切り型のWindows Server Datacenter Editionライセンスを購入することが一般的ですが、このライセンスにはハイパーバイザー機能(Hyper-V)、Hyper-V上で稼働するWindows Server仮想マシンライセンス、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ機能(Windows Server HCI)、ネットワーク仮想化機能(SDN)が含まれています。

基本的な仮想基盤の機能はもちろん、そのほかにも標準で多くの機能が搭載されているので、これらを活用することで運用課題を解決できる場合もあり、いろいろ試せるのがポイントです。Windows Server仮想マシンを無制限に立てられるライセンスとなるため、仮想マシンとして稼働させる業務システムでWindows Serverを主に使用されている場合はよりおトクに利用できます。

一方、VMware ESXiはハイパーバイザー機能以外にハイパーコンバージドインフラストラクチャ機能(vSAN)やネットワーク仮想化機能(NSX)を使用したい場合は最上位のエディションであるVCF(VMware Cloud Foundation)を購入する必要があります。どの機能も高機能ではありますが、ライセンス費用が高くなる傾向にあります。

また、Broadcomの買収に伴うライセンス体系の変更により、サブスクリプション型での提供のみになったことと、Broadcomが定義する顧客セグメントに応じて購入できるライセンスに制限が設けられたことが大きな変更点となります。顧客セグメントによってはVCFやVVF(VMware vSphere Foundation)しか購入できず、旧VMware vSphereライセンスで十分対応できていたお客さまでも、コストが上がってしまう場合があります。

Hyper-VでもVMwareが提供するような仮想基盤としての主要機能は利用できるため、下記のような標準的な仮想基盤の機能が使用できればいいという場合は、Hyper-Vへの切り替えが十分検討できると考えられます。

【VMware、Hyper-Vともに使える機能】
  • 筐体障害時の仮想マシンフェールオーバー機能(HA)
  • 仮想マシンライブマイグレーション機能(vMotion)
  • ホスト負荷に応じて仮想マシンを自動ライブマイグレーションして負荷を均す平準化機能(DRS)



また、Hyper-Vは、リリースから10年という長期のサポート期間によりメジャーバージョンアップせずに運用が終えられるのも特長の1つです。Windowsのため定期的にWindows Updateを行うことが推奨となるものの、ハードウェアの保守切れにともなう仮想基盤の更改まで同じメジャーバージョンを利用し続けることができます。

VMwareはメジャーバージョンリリースからフルサポート期間は5年(最終的なサポート終了までは7年)のため、定期的にメジャーバージョンアップが必要となります。システム安定稼働のために大幅なアップデートはなるべく控えたい場合はHyper-Vの方がオススメです。

高度な機能が豊富に搭載され、データセンターなどでも利用されるVMwareに対し、Hyper-VはWindowsライセンスに組み込まれており、仮想化のための基本機能が十分搭載されているため、インフラとしてのコスト削減/安定稼働をしたいというお客さまはHyper-Vへの乗り換えを検討してもよいのではないでしょうか。

VMwareに留まった方が良いケースとは?

VMwareは仮想基盤構成の前提として、Active Directory(AD)が必要ありません。一方、Hyper-VはADが基本的に必須となります。

特にHCI構成(Windows Server HCI)で利用する場合は、HCIの外に1台ADが必ず必要になるため、ADを必要としないシステムで仮想基盤を調達したい場合(例えば、RedHatメインの業務システムを稼働させる場合など)は、VMwareの方が仮想基盤を稼働させるために必要な周辺サーバを少なくできるためオススメです。

他にも、ADが加わると仮想化基盤の運用にADのユーザー管理運用などが必要になってきます。1人情シスなど、仮想化基盤の運用でも手一杯のところ、ADの運用もしたくないという方や、ドメインユーザーではなくローカル管理者ユーザーでシンプルに運用したい場合は、Hyper-Vではなく、VMwareを利用した方がよいでしょう。

また、業務システムなどで利用している3rdパーティー製のアプリケーションでは、VMware上での稼働はサポートしているが、Hyper-V上での稼働はサポートしていないものもあります。同様に、仮想基盤対応しているアプリケーションの中には仮想アプライアンスが提供されている場合もありますが、こちらもVMwareはサポートしているがHyper-Vはサポートしていないということもあります。

アプリケーションベンダーがHyper-V上での稼働を検証しておらず、動作保証されていないケースがあるため、Hyper-Vを採用した場合に、利用したい業務アプリが使えないということがないか注意が必要です。

【VMwareが採用されるケース】
  • ADが必要ない
  • Hyper-Vではサポートされていない業務アプリを使っている

仮想環境の構築、更改はS&Iにご相談ください!

最近では、AIシステムの開発などで利用されるGPUを共有するための手段として、物理GPUを分割して複数のVMと共有できるようにする「GPUパーティショニング」の機能の有無もVMwareからHyper-Vへの移行時の評価ポイントになることも増えています。

現時点で、GPUパーティショニングはWindows Server 2022ではサポートされていませんが、Windows Server 2025からサポート予定とされています。GPUパーティショニングのサポート状況がVMwareに留まる理由になっている場合は、今後の更改のタイミングによってはクリアできるかもしれません。

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