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【Vol.7】Azure連携が前提のHCIソリューション「Azure Local (旧Azure Stack HCI)」とは?メリット・デメリットを紹介

2024年、Azure Local(旧Azure Stack HCI)上でAzure Virtual Desktop(AVD)が実行可能となり、AVD on Azure Localというサービス名で提供開始されました。

※Azure Stack HCIは2024年11月にAzure Localというサービスの一部となったため、製品名が変更となりました。本記事では旧Azure Stack HCIのことをAzure Localと記載します。


これにより、AVD on Azure LocalはDaaSとオンプレVDIのいいとこ取りの製品として、Omnissa HorizonやCitrix Virtual Desktopの競合ソリューションとしてさらに注目が集まっています。

S&IではAVD on Azure Localをいち早く検証してみましたので、2回にわたってご紹介をしていきたいと思います。1回目の今回はAzure Localとは何か、メリット・デメリットとともに紹介していきます。

Azure Local(旧Azure Stack HCI)とは?

Azure Localは、2020年にMicrosoftから従来のWindows Server HCIに加えて新たな選択肢として提供開始されたHCIです。Microsoft Azureとの接続連携を前提に設計されており、Azureとオンプレミスのハイブリッドクラウド環境を構成できるHCIとして注目されており、その名前の通り、Azureのサービスとして提供されます。

ここでは、Azure Localの特長を簡単にまとめてみました。

[機能]
  • Azureを契約(既存/新規)の上、Azureへのインターネット接続が必須。Azure LocalをAzure Arcというサービスに接続することが前提の製品となる
  • Azure管理画面(Azureポータル)から仮想マシンの作成などの一部管理操作が行える。もちろん、従来のHyper-VやWindows Server HCIのように、オンプレミス上のWindows Admin Centerやフェールオーバークラスターマネージャーでも管理が可能


[料金体系]
  • Azure Localの物理ハードウェアのコア数に応じたAzureでの月額課金。ハードウェアメーカーによっては買い切り型のOEMライセンスが提供されており、ハードウェアとOSのサポートをワンストップで受けることも可能
  • Azure月額課金の場合、仮想マシンのライセンスは含まれていないため別途調達が必要。Windows Server仮想マシンであればAzure Localの月額利用料にWindows Serverサブスクリプション用の追加料金を払うことで無制限にWindows Server仮想マシンを立てる権利を得られ、これには将来的な次期バージョンへのバージョンアップ権も含まれる。OEMライセンスの場合、Windows Server Datacenter 2025が含まれるが、2025年10月時点で次期バージョンは含まれない


  • [構成]
    • 機器はAzure Local用にMicrosoftが認定しているハードウェアメーカーの構成から選択。ハードウェアメーカーによる検証済み構成のため、安心して利用可能。もちろん、CPU・メモリ・ディスクといったパーツはカスタマイズ可能なので要件に応じた構成が可能
    • 1ノードから構成可能。3ノードまではストレージネットワーク直結構成もサポートされているが拡張はできない。弊社では直結構成は2ノード構成(拡張性なし)のみとし、3ノード以上はスイッチありの拡張可能構成とすることを推奨
    • ストレージ用のスイッチはRDMA対応の25Gbps以上の帯域が推奨

Azure Local 概要図

Azure Local(旧Azure Stack HCI)の目玉機能と注意点

目玉機能①: Azureのサービスが利用できる

Azure Localの目玉機能は、何といってもオンプレでありながらAzureサービスの機能を一部利用できることではないでしょうか。冒頭に記載した通り、Azure LocalはAzureサービスとして提供されるHCIであり、Azureのその他サービスと連携した運用が行えます。

例えば「Azure Monitor」を用いた監視、「Azure Backup」を用いた仮想マシンバックアップなどが利用可能です。2024年に正式リリースされた「Azure Virtual Desktop on Azure Local」も利用できます。また、パブリックプレビュー中で正式リリースはされていませんが、「Azure Site Recovery」を利用したAzure Local→Azureへの仮想マシンレプリケーション構成や、「Microsoft Defender for Cloud」を利用したセキュリティ管理も今後正式リリースされるものと思われます。

Azureを利用しているお客さまがオンプレに仮想化基盤が必要になった場合、Azureのサービスを流用できる仮想基盤という点でAzure Localはオススメです。

目玉機能②:拡張セキュリティ更新プログラムが無償で利用できる

次に挙げられるのは、拡張セキュリティ更新プログラムの無償利用です。
Microsoftの一部製品(Windows ServerやSQL Server)はサポート終了後も3年間は「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」としてWindows Updateが提供されます。通常ESUは有償ですが、Azure上の仮想マシンはESUが無償提供されています。Azure LocalもAzureサービスの扱いのため、Azure Local上で稼働する仮想マシンは無償でESUを適用できます。

記事作成時点ではWindows Server 2012/2012 R2、SQL Server 2014がESU提供されています。これらの製品で稼働する業務システムを延命したい場合、Azure Localは選択肢の1つになるのではないでしょうか。


このように、Azure Localは非常に魅力的な機能を持ったHCIソリューションですが、利用するにあたって注意事項がいくつかあります。主な注意事項には以下のようなものが挙げられます。

■注意事項

GUIがない
Azure LocalのOS自体はGUIが提供されていません。AzureポータルやオンプレミスのWindows Admin Centerなどで管理はできますが、OS自体の操作はコマンドとなるため、使いこなすための習熟が必要になります。

情報が少ない
2020年に発表された新HCI/新OSのため、まだインターネット上にも情報が多くありません。そのため、問題発生時は必然的に、追加のサポートや技術的な支援を受けるための有料オプションであるAzureサポートへ問い合わせる確率が高くなります。

Azure Local自身のアップデート
Azure LocalのOSは1か月に1回累積アップデート(品質とセキュリティ更新)がリリースされ、半年に1回フィーチャーアップデート(機能更新)がリリースされます。Azure LocalはMicrosoftのモダンライフサイクルポリシーに準拠しており、サポートを受けるためには最新リリースから6か月以内のバージョンで運用する必要があります。

他のHCIと比較してアップデート回数が多く、少なからず運用の負担が発生することを留意しておきましょう。ただこの点は、セキュリティ更新や機能が最新化された状態で運用できるというメリットとも捉えられるため、アップデート運用をどのような頻度で行うかは運用負荷とセキュリティ対応のバランスを見て検討が必要です。

他のHCIとの違いとは?その違いから見える“導入メリット”

他のHCIは、基本的にはオンプレのみで利用されることを前提としていますが、Azure Localは "Azureをオンプレにも拡張したい" というハイブリッドクラウドのコンセプトで設計されている点が大きな違いです。

例えば、会社としてAzureを活用しており、メインのアプリケーションはAzure上で稼働しているが、Edgeデバイスとして各拠点に仮想マシンの配置が必要なケースがあったとします。このようなケースでは、仮想マシンが稼働する基盤としてAzure Localを導入することで、監視・バックアップ・コスト・サポートなどをAzure上で一元的に運用できるようになります。他社製品と比較して、ハイブリッド環境をよりシンプルに運用できる点はポイントが高いでしょう。

また、頻繁に行われるアップデートは、運用負荷の上昇というデメリットもありますが、一方でクラウドサービスのように新しい機能が逐次強化されていくというメリットもあります。

特にAzure Localでは、Windows Serverより先に新しい機能が使用できるようになる(GPUパーティショニングなど)ため、新しい機能をよりスピーディーに享受したいのであれば、Azure Localを採用することで得られる価値が広がるのではないでしょうか。

まとめ

Azure Localは、クラウドの柔軟性とオンプレミス環境の持つ制御性の高さを組み合わせたハイブリッド戦略の一環として、多くの企業に選ばれています。特に、Azureを利用している企業との親和性は非常に高いと言えるでしょう。一方で、運用担当者には、クラウドとHCI、両方のスキルと知識が求められます。Azure Localを導入する際は、運用チームのスキル確保も検討してください。

次回は、AVD on Azure Localを紹介します。検証結果から見えてきたAVD on Azure Localの目玉機能やHorizonとの違いなどにも言及します。

S&IではAzure Localはもちろん、他ソリューションも含めて、仮想基盤の豊富な導入実績からお客さまが抱える課題に対して最適な製品選定をご支援させていただきます。
もしお困りごとがあればぜひ弊社までお声がけください。

【この記事の執筆者】新井 健太(あらい けんた)

サーバーエンジニアとして、業種問わず多くのお客さまへVDIのご提案および導入に携わる。働き方改革や端末セキュリティ向上を目的としたご支援を多く手がけてきた経験をもとに、最近ではプリセールスエンジニアとしてVDIはもちろん、HCIやハイブリッドクラウドなどの技術検証から提案に至るまで、お客さまがインフラに抱える課題に対して、技術的な側面からの解決に向けた柔軟な提案を行っている。

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