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【Vol.7】Azure連携が前提のHCIソリューション「Azure Local (旧Azure Stack HCI)」とは?メリット・デメリットを紹介

2024/12/27

2024年、Azure Local(旧Azure Stack HCI)上でAzure Virtual Desktop(AVD)が実行可能となり、AVD on Azure Localというサービス名で提供開始されました。
※Azure Stack HCIは2024年11月にAzure Localというサービスの一部となったため、製品名が変更となりました。本記事では旧Azure Stack HCIのことをAzure Localと記載します。

これにより、AVD on Azure LocalはDaaSとオンプレVDIのいいとこ取りの製品として、Omnissa HorizonやCitrix Virtual Desktopの競合ソリューションとしてさらに注目が集まっています。

S&IではAVD on Azure Localをいち早く検証してみましたので、2回にわたってご紹介をしていきたいと思います。1回目の今回はAzure Localとは何か、メリット・デメリットとともに紹介していきます。

Azure Local(旧Azure Stack HCI)とは?

Azure Localは、2020年にMicrosoftから従来のWindows Server HCIに加えて新たな選択肢として提供開始されました。Microsoft Azureとの接続連携を前提に設計されており、Azureとオンプレミスのハイブリッドクラウド環境を構成できるHCIとして注目されています。

ここでは、Azure Localの特長を簡単にまとめてみました。

[機能]
  • Azureを契約(既存/新規)の上、Azureへのインターネット接続が必須
  • Azure管理画面(Azureポータル)から仮想マシンの作成などの管理操作が行える


[料金体系]
  • 利用料はAzureでのコア数による従量課金。ただし、ハードウェアメーカーによっては買い切り型のOEMライセンスが提供されており、ハードウェアとOSのサポートをワンストップで受けることも可能
  • 仮想マシンのライセンスは含まれていないため別途調達が必要。Windows Server仮想マシンであればAzure Localの月額利用料に追加料金を払うことで無制限に仮想マシンを立てる権利を得られる


  • [構成]
    • 機器はAzure Local用にMicrosoftが認定しているハードウェアメーカーの構成から選択。非認定のハードウェアメーカーの機器を使用した場合サポートを受けられない場合もある
    • クラスタ外にActive Directoryが必須
    • 1ノードから構成可能。3ノードまではストレージネットワーク直結構成もサポートされているが拡張はできない。拡張前提の場合はストレージネットワーク用スイッチが必須
    • ストレージ用のスイッチはRDMA対応の25Gbps以上の帯域が推奨

Azure Local 概要図

Azure Local(旧Azure Stack HCI)の目玉機能と注意点

目玉機能①: Azureのサービスが利用できる

Azure Localの目玉機能は、何といってもオンプレでありながらAzureサービスの機能を一部利用できることではないでしょうか。

例えば「Azure Monitor」を用いた監視、「Azure Backup」を用いた仮想マシンバックアップ、「Azure Site Recovery」を用いたAzure Localの仮想マシンをAzureにレプリケートするDR構成などが利用可能です。もちろん、2024年にリリースされた「AVD on Azure Local」も利用できます。

Azureを利用しているお客さまがオンプレに仮想化基盤が必要になった場合、Azureのサービスを流用できる仮想基盤という点でAzure Localはオススメです。

目玉機能②:拡張セキュリティ更新プログラムが無償で利用できる

次に挙げられるのは、仮想マシンが無償で延長のセキュリティ更新プログラム提供を受けられる点です。
Microsoftの一部製品(Windows ServerやSQL Server)はサポート終了後も3年間は「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」としてセキュリティ更新プログラムが提供されます。通常、ESUは有償ですが、Azure Local上で稼働する仮想マシンは無償でESUを適用できます。

2024年12月時点ではWindows Server 2012/2012 R2や、SQL Server 2012がESU提供されています。これらの製品で稼働する業務システムを延命したい場合、Azure Localは選択肢の1つになるのではないでしょうか。


このように、Azure Localは非常に魅力的な機能を持ったHCIソリューションですが、利用するにあたって注意事項がいくつかあります。主な注意事項には以下のようなものが挙げられます。

■注意事項

GUIがない
Azure LocalのOS自体はGUIが提供されていません。AzureポータルやWindows Admin Centerで管理はできますが、OS自体の操作はコマンドとなるため、使いこなすための習熟が必要になります。

情報が少ない
2020年に発表された新HCI/新OSのため、まだインターネット上にも情報が多くありません。そのため、問題発生時は必然的に、追加のサポートや技術的な支援を受けるための有料オプションであるAzureサポートへ問い合わせる確率が高くなります。

Azure Local自身のアップデート
Azure LocalのOSは1年に1回アップデートがリリースされ、その後2年間のサポート期間となります。最新の状態に保つために定期的な更新作業が必要となりますが、他のHCIと比較してアップデート回数が多く、少なからず運用の負担が発生することを留意しておきましょう。

他のHCIとの違いとは?その違いから見える“導入メリット”

他のHCIは、基本的にはオンプレのみで利用されることを前提としていますが、Azure Localは "Azureをオンプレにも拡張したい" というハイブリッドクラウドのコンセプトで設計されている点が大きな違いです。

例えば、会社としてAzureを活用しており、メインのアプリケーションはAzure上で稼働しているが、Edgeデバイスとして各拠点に仮想マシンの配置が必要なケースがあったとします。このようなケースでは、仮想マシンが稼働する基盤としてAzure Localを導入することで、監視・バックアップ・コスト・サポートなどをAzure上で一元的に運用できるようになります。他社製品と比較して、ハイブリッド環境をよりシンプルに運用できる点はポイントが高いでしょう。

また、頻繁に行われるアップデートは、運用負荷の上昇というデメリットもありますが、一方でクラウドサービスのように新しい機能が逐次強化されていくというメリットもあります。

特にAzure Localでは、Windows Serverより先に新しい機能が使用できるようになる(GPUパーティショニングなど)ため、新しい機能をよりスピーディーに享受したいのであれば、Azure Localを採用することで得られる価値が広がるのではないでしょうか。

まとめ

Azure Localは、クラウドの柔軟性とオンプレミス環境の持つ制御性の高さを組み合わせたハイブリッド戦略の一環として、多くの企業に選ばれています。特に、Azureを利用している企業との親和性は非常に高いと言えるでしょう。一方で、運用担当者には、クラウドとHCI、両方のスキルと知識が求められます。Azure Localを導入する際は、運用チームのスキル確保も検討してください。

次回は、AVD on Azure Localを紹介します。検証結果から見えてきたAVD on Azure Localの目玉機能やHorizonとの違いなどにも言及します。

S&IではAzure Localはもちろん、他ソリューションも含めて、仮想基盤の豊富な導入実績からお客さまが抱える課題に対して最適な製品選定をご支援させていただきます。
もしお困りごとがあればぜひ弊社までお声がけください。

【この記事の執筆者】新井 健太(あらい けんた)

サーバーエンジニアとして、業種問わず多くのお客さまへVDIのご提案および導入に携わる。働き方改革や端末セキュリティ向上を目的としたご支援を多く手がけてきた経験をもとに、最近ではプリセールスエンジニアとしてVDIはもちろん、HCIやハイブリッドクラウドなどの技術検証から提案に至るまで、お客さまがインフラに抱える課題に対して、技術的な側面からの解決に向けた柔軟な提案を行っている。

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