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【Vol.3】価格高騰… でも、ライセンス体系変更で脱VMwareはまだ早い!?

2024/11/08

Broadcom社によるVMware社の買収によって、従来製品のライセンス体系が大きく変更となりました。一部のユーザーでは、ライセンス価格の高騰も生じており、VMwareからの移行を検討する企業の方も増えています。

今回は、新しいVMwareライセンスの内容について詳しくご紹介するとともに、VMwareに留まるメリット・デメリットをご紹介します。

VMwareの新しいライセンス体系の特徴とは?

新しいVMwareライセンスは大きく5点の特徴があります。

1. サブスクリプションライセンスに変更

VMwareライセンス体系は、「買い切りライセンス+保守」から「サブスクリプションライセンス」へと変更になりました。これまで、保守のみ定期的に更新すれば、ライセンス自体は無期限に使用できましたが、サブスクリプションライセンスになったことで、ユーザーは、購入時に使用期間を1年間、3年間、5年間のいずれかから選ぶことになります。それ以外の期間は選べず、使用開始日を指定することもできません。なお、1年間の場合は、Broadcomの承認が必要になります。

2. CPUコア数に応じた料金に変更

物理CPUのソケット数単位からコア数単位での課金に変更となっています。従来は、物理CPUが多くのコアを持っていたとしてもライセンス費用はCPUソケット数単位で計算されていたため、コア数の多い高性能なCPUを使って高パフォーマンスを実現しながらコストを抑えられていた企業も、コア単位で課金されるようになったため、費用対効果を考慮しながら、CPUのコア数とパフォーマンス、ライセンス費用を最適化するハードウェア選定が必要になります。

3. エディションが4つにまとまりシンプル化

詳細は後ほど書きますが、エディションが4つにまとまりシンプルになりました。
例えば元々、仮想化管理ソフトウェアの中心的な役割を担うvCenterとvSphere(ESXi)は別売りでしたが、同梱されるようになっています。これにより導入や運用フェーズで追加コストの心配する必要がなくなり、vSphereとvCenterのバージョンの互換性や管理の簡素化など、多くの点で利便性が向上しています。

4. 企業によって購入できるエディションに制約が出る

お客さまは4つのエディションから自由に選択できるわけではなく、Broadcom社が定義する顧客セグメントに応じて、購入できるエディションに制約が出るようになっています。企業によっては、必要以上のエディションしか購入できず、過剰投資になる可能性も生じています。

5. OEMパートナーも見直しあり

Broadcom社に買収されたことでOEMパートナーに見直しが入っています。現在はValue-Added OEM (VAO) PartnersとしてDell、Lenovo、HPEなどがOEM認定パートナーとなっており、これらのメーカーからハードウェアと共にOEMサブスクリプションライセンスを購入することで、ハードウェア/ソフトウェアの保守窓口を一本化できるケースも出てきています。

なお、OEM製品では、2024年11月現在、以下の取り扱いがありません。
▪ VMware vSphere Standard / VMware vSphere Essentials Plus
▪ VMware社がL1/L2サポートを提供する製品

これらの製品が必要となった際は、VMware純正製品を購入する必要があります。OEM製品を検討する際は、保守窓口に加えて、購入できる製品などについても事前に確認しておくとよいでしょう。

シンプル4つのエディションに統合された製品ラインアップ

今回のライセンス体系の変更で、製品ラインアップは以下の4つのエディションに統合され、以前は単体で購入できた「VMware vSAN」、「VMware NSX」、「VMware Aria」などの製品は、エディション内に組み込まれる形に変更になっています。「VMware SRM」やNSXのFirewall機能といった一部機能はVVF以上のエディションにアドオンする形で購入します。
これまでは、VMware vSphereにさまざまな他のVMware製品を組み合わせて、ニーズに合わせて高度な仮想環境を構築できる点がメリットでもありましたが、製品選定や管理が難しいというデメリットもありました。今回のライセンス体系の変更により、ユーザーは、利用したい機能を元にエディションを選び、必要ならアドオンを追加する形になるため、製品選定の複雑さが解消されています。ただし、企業によって購入できるエディションに制約が出る点は先述の通りです。

また、VMware vSAN(以下、vSAN)機能を利用する場合、1コアライセンス当たりで使用できるvSAN容量の上限が設定されているため、調達するハードウェアのvSANデータストア容量によっては1TB単位でアドオンライセンスを追加購入する必要があります。

ここで、各エディションの特徴と選ぶ際のポイントをSIerの観点からまとめておきます。

■ VVEP(VMware vSphere Essentials Plus)

旧vSphere Essentials Plus Kitと同様のライセンスです。ホスト3台まで、コア数96コアまで、という制約があるため、極小規模のシステムで利用する場合に適います。特定のシステムだけ稼働させるミニマムな仮想基盤として調達されるケースが多いですが、場合によっては、システムがサイロ化し、管理対象の増加に伴う運用負荷の増大のデメリットも考えられます。

■ VVS(VMware vSphere Standard)

旧vSphere Standardと同様のライセンスです。3層構成のvSphereを最低限の機能で利用する場合に適います。VVSを検討しているお客さまはVVEPほど小規模ではない台数の仮想基盤となる想定になるため、VVF+vSAN Add-Onを採用して共有ストレージを廃した構成にしたり、Aria Suiteを活用して運用改善したりすることも、選択肢として考えてもいいかもしれません。

■ VVF(VMware vSphere Foundation)

VVEPにvSAN・Aria Suite Standardのライセンスが含まれるエディションです。vSAN利用ができるのはVCFかVVFのみになるため、HCI(vSAN)構成とする場合は少なくともVVFを選択する必要があります。VCFのようにNSX含めたソフトウェアデファインドデータセンター(以下、SDDC)までは必要ないが、HCI構成にはしたい場合に適います。なお、vSANはvSphere 8.0 U2b以降を採用した場合コア当たり100GiBの利用量が付属してます。(今後コア当たり250GiBに増える予定) 例えば、96コア分のライセンスを購入した場合、VVFではクラスタのvSANデータストア容量として9600GiB(約9TiB)まで使用する権利があります。とります。とはいえ、一般的なHCI構成では、100GiBでは不足するケースがほとんどのため、追加容量1TiB単位でアドオンライセンス購入が必要となるでしょう。

■ VCF(VMware Cloud Foundation)

VVEPに、vSAN・NSX・Aria Suite EnterpriseなどSDDCを構成するライセンスが含まれる最上位エディションです。社内の各種システムが稼働する統合仮想基盤を構成するケースや、お客さま向けにプライベートクラウドを提供するケースに適います。また、HCXがあることでVMware Cloud on AWSとの接続・移行も可能になるため、ハイブリッドクラウド構成も行えます。

[VMwareの各エディションで利用できる機能]

VMwareに留まるべき?仮想環境の構築、更改はS&Iにご相談ください!

今回のライセンス体系の変更で、ライセンスコストの高騰を理由に別仮想基盤への乗り換えが話題となっていますが、乗り換える場合、以下のようなリスクや追加コストの発生も考えられます。

  • ・別仮想基盤への乗り換えに関する情報収集や仕様確認、PoC(検証)、移行方式検討などのコスト
  • ・これまでVMwareで培った知識、ナレッジを捨て、別仮想基盤に乗り換えることで発生する技術習得のコスト
  • ・別仮想基盤へ乗り換えた直後は慣れないこともあり、重要障害の対応・解決に時間がかかるリスク


一方で、VMwareライセンスがサブスクリプション型になったことで、ビジネスの拡大/縮小に応じた買い足し/利用停止がし易くなったというメリットもあります。特に、最近ではハードウェアを従量課金制で利用するサービスも出てきているため、それらと組み合わせることでクラウドライクな仮想基盤の調達も可能になります。

また、コア数にシビアになることで、ハードウェアが適切な構成に精査され、より適切なIT投資となることも期待できます。Essentials Plus等でシステム毎に環境を用意したためにサイロ化されていた仮想基盤を統合する方向で見直す機会にもなるでしょう。万が一、従来の買い切り型より上位のエディションになってしまう場合、使える機能が増えることでの運用改善や課題解決につながる可能性もあります。

S&Iでは、別仮想基盤への乗り換えのご相談にも乗らせていただいておりますが、上記のようにライセンスコストを払ってでもVMwareに留まった方がいいケースもあると考えています。お客さまごとの課題や現状の運用方法をヒアリングさせていただいた上で、移行するべきかとどまるべきかのご相談にも乗らせていただいております。VMware環境の今後の運用にお悩みのある方は、ぜひ、S&Iまでご相談ください。

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