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【Vol.2】VMwareからの移行は、“事前検証(PoC)”から始めるべき

2024/10/21

Broadcom社によるVMware買収を受け、ライセンス体系が大きく変更になったことから、VMwareから他ソリューションへの移行を検討する企業が増えているといいます。

VMwareとHyper-Vなどの他ソリューションの機能の違いなどは、さまざまな記事で紹介されているので、理屈上は移行できると分かっていたとしても、なかなか移行に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。今回は、移行の際の技術検証としてオススメしているPoCの重要性についてご紹介します。

PoCとは?

PoCとは、Proof of Conceptの略で日本語では「概念実証」と訳され、新しいアイディアや手法の実現可能性を検証することを意味します。例えば、新しい技術を使ったサービスが理論通り動作するか、期待通りの効果が得られるかを、小規模な環境で短期間で試すことを言います。

最近では、AIやクラウドコンピューティングなど急速に進化するテクノロジーへのスピーディーな対応が求められるようになっています。迅速かつ効率的に新しい技術を取り込んでいくために、大規模展開する前にPoCを利用することで、問題の早期発見によるリスクとコストの抑制が期待できることから注目されています。

■PoCのメリット
  • 本格導入する前に、問題点を把握できる
  • 技術的な要件や仕様に対して、共通理解を得られる
  • 早い段階でユーザーにデモを見せることで、よりニーズに合ったシステムに作り上げられる
  • 事業戦略として適切かどうか、リソースを投入する価値があるかどうか、客観的な評価ができる


仮想環境の移行においてもPoCは非常に有効な手段になります。
例えば、「仮想マシンが動けば良い」という環境は限られており、本番環境では、各社が独自で工夫しながら運用しているケースが多くあります。そして、それらは、インフラとして採用してきたハイパーバイザーの機能に依存するものも多く存在するため、移行先のハイパーバイザーでこれまでの運用が成り立つかどうか、評価期間を十分に確保しきちんと検証することで、無駄なコストやリスクを抑えながら、本格的な移行に進めることが可能になります。

VMwareからの移行、事前検証で抑えるべき「評価ポイント」とは?

今回は、VMwareからHyper-Vへ移行することを前提にPoCを実施する場合の評価ポイントを紹介します。機能とパフォーマンス、運用、移行の4つの軸に分けて、PoCで何を見るべきかをまとめてみました。

1. 機能面

機能面では大きく2つあります。vMotionとvShpere HAで実現していた領域です。

vSphereユーザーの多くは、vMotionを中心に負荷調整、計画停止を行ってきたのではないでしょうか。Hyper-Vで仮想マシンを移動するには「ライブマイグレーション」を利用することになります。仮想マシンの移動を想定し、ライブマイグレーションでもこれまでのように負荷調整や計画停止を行えるか確認しましょう。

また、高可用性実現の要として利用してきたvShpere HAは、Hyper-Vでは「フェールオーバークラスター」という機能を利用することになります。サーバーが急にダウンしてしまった場合を想定して、フェールオーバークラスターでもこれまでと同じ要領で対応できるか確認することが必要になります。

2. パフォーマンス

ハイパーバイザーが直接ハードウェアを制御し、ホストOSを介さずに仮想マシンを制御することから「モノリシック型」と呼ばれるvSphereと、基本的な仮想機能以外はホストOSが管理する「マイクロカーネル型」に分類されるHyper-Vでは、パフォーマンス差異は、昨今ではさほど差が無いと言われています。

しかし、ユーザーが体感的に遅くなったと感じるのではないか、という不安は拭えません。また、夜間処理など、データ量が積み上げられることで時間内に処理が終わらなくなる可能性も出てきます。体感速度を感じやすいもの、時間の制約のあるものについては、検証を行っておくことをオススメします。

3. 運用

運用面では、バックアップ、更新、監視の3つのポイントで評価するのをオススメします。

[バックアップ]
バックアップ運用は、vSphere APIからVSS(ボリューム シャドウ コピー サービス)ベースに変わります。VSSは、Windows OS上でファイルやフォルダのスナップショットを作成するためのサービスで、さまざまなサードパーティのバックアップソフトウェア製品が提供されています。評価版が提供されていることも多く、いずれの製品を利用するかもPoCの段階で検証しておくと良いでしょう。

[更新]
vSphereインフラのパッチ運用は常に進化しており、LifeCycleManagerとvMotionを使うことで、仮想マシンの停止を考慮する必要はほぼありません。特に、ホストの再起動時に物理的なハードウェアの再初期化をスキップし、OS部分だけを再起動できるvShpereのQuick Bootの恩恵を得てきたユーザーにとって、ハードウェアの再起動が必要になりかつ、毎月提供されるWindows Updateを適用するか否かは非常に重要なポイントになります。運用負荷となり得る可能性もあるため、現実的に対応できる体制が組めるかどうかも検討する必要があります。

[監視運用]
vCenterだけで監視運用を行ってきたユーザーも多いのではないでしょうか。
Hyper-Vの場合、Microsoftが提供するHyper-V、AdminCenterに加え、PowerShellを活用することでより高度な監視、管理ができるようになっています。vCenterでチェックしてきた監視ポイントは、Hyper-Vでは何をチェックすればよいのか、など、現状の日次運用、随時運用に照らし合わせて、それらを継続できるのか、見極める必要があります。

4. 移行

VMwareからVMwareへの移行プロジェクトでは、仮想マシンの移行に重点を置く必要はなく、より上位層の稼働確認に力を注ぐことができましたが、仮想環境を移行する場合は、移行作業自体も検証しておく必要があります。移行がそもそもうまくいくのか、移行作業にどれくらいの時間がかかるのかを検証しておきましょう。PoCで移行作業を行うことで、移行先のハードウェア構成が変わる、ということもあり得ます。

仮想環境の構築、更改はS&Iにご相談ください!

PoCを実施することで、自社の運用にはマッチしない要件や、逆に機能が足りなくても運用でカバーできることが分かることもあります。

vMotionやHigh Availability(HA)、Distributed Resource Scheduler(DRS)など、vSphereではハードウェアとの連携により、さまざまな機能が提供されており、これらの機能をもとに構築、運用計画がされているでしょう。Hyper-Vでも同様の設計を行うのか、まったく異なるアーキテクチャで設計を行うのか、PoCを実施することで課題が見えてきます。

また、ソリューションによってデータの圧縮や重複削除の考え方は異なります。移行前の環境で得られた数値をそのまま移行先の環境を設計する際のサイジングには使えません。PoCを実施することで、こうした差異も把握することが可能になります。

S&Iでは、お客さまの環境に応じて、必要最小限のコンパクトなPoC環境をご提案しています。どのお客さまも一律でこの検証をすれば十分、ということはありません。お客さまごとの課題や現状の運用方法をヒアリングさせていただいた上で、検証のポイントや、構成、運用の改善を一緒に検討させていただいております。ご興味のある方は、ぜひ、S&Iまでご相談ください。

【この記事の執筆者】

加藤タクマ

1993年S&I入社。古くは、通信速度がKbpsの時代からビルや工場などの拠点を接続するネットワークエンジニアとして従事。長いキャリアを通して、ネットワーク速度の進化、トポロジーの進化など、テクノロジーの変化と発展を身をもって体験。現在は、サーバーやストレージの領域まで守備範囲を広げ、サーバーインフラの進化を支えている。

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