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【Vol.2】VMwareからスムーズに移行するには?事前検証時に確認すべきポイントを解説

Broadcom社によるVMware買収を受け、ライセンス体系が大きく変更になったことから、VMwareから他ソリューションへの移行を検討する企業が増えているといいます。
VMwareとHyper-Vなどの他ソリューションの機能の違いなどは、さまざまな記事で紹介されているとおり、理論上は移行できると分かっていたとしても、なかなか移行に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。今回は、VMwareからの移行の際の技術検証としてオススメしているPoCの重要性と評価ポイントについてご紹介します。

PoCとは?

PoCとは、Proof of Conceptの略で日本語では「概念実証」と訳され、新しいアイディアや手法の実現可能性を検証することを意味します。例えば、新しい技術を使ったサービスが理論通り動作するか、期待通りの効果が得られるかを、小規模な環境で短期間で試すことを言います。

最近では、AIやクラウドコンピューティングなど急速に進化するテクノロジーへのスピーディーな対応が求められるようになっています。迅速かつ効率的に新しい技術を取り込んでいくために、大規模展開する前にPoCを行うことで、問題の早期発見によるリスクとコストの抑制が期待できることから注目されています。

■PoCのメリット
  • 本格導入する前に、問題点を把握できる
  • 技術的な要件や仕様に対して、共通理解を得られる
  • 早い段階でユーザーにデモを見せることで、よりニーズに合ったシステムに作り上げられる
  • 事業戦略として適切かどうか、リソースを投入する価値があるかどうか、客観的な評価ができる


仮想環境の移行においてもPoCは非常に有効な手段になります。例えば、実際の環境は、企業ごとの要件に応じてカスタマイズされ、異なる構成や設定で運用されており、ハイパーバイザーの機能に依存するものも多く存在します。特に、VMwareからHyper-Vへ移行するなど、異なる仮想環境間で移行する場合は、移行先のハイパーバイザーでこれまでの運用が成り立つかどうか、評価期間を十分に確保しきちんと検証することで、無駄なコストやリスクを抑えながら、本格的な移行に進めることが可能になります。

VMwareからHyper-Vへの移行、事前検証で抑えるべき「評価ポイント」とは?

今回は、VMwareからHyper-Vへ移行するケースを例に、機能とパフォーマンス、運用、移行の4つの観点からPoCで確認すべきポイントを紹介します。

1. 機能面

機能面では大きく2つあります。vMotionとvShpere HAで実現していた領域です。

vSphereユーザーの多くは、vMotionを中心に負荷調整、計画停止を行ってきたのではないでしょうか。Hyper-Vで稼働中の仮想マシンを別のホストサーバーへ移動するには「ライブマイグレーション」を利用することになります。仮想マシンの移動を想定し、ライブマイグレーションでもこれまでのように負荷調整や計画停止を行えるか確認しましょう。

また、高可用性実現の要として利用してきたvShpere HAは、Hyper-Vでは「フェールオーバークラスター」という機能を利用することになります。サーバーが急にダウンしてしまった場合を想定して、フェールオーバークラスターでもこれまでと同じ要領で対応できるか確認することが必要になります。

2. パフォーマンス

ハイパーバイザーが直接ハードウェアを制御し、ホストOSを介さずに仮想マシンを制御することから「モノリシック型」と呼ばれるvSphereと、基本的な仮想機能以外はホストOSが管理する「マイクロカーネル型」に分類されるHyper-Vでは、パフォーマンスには大差ないと言われています。

しかし、ユーザーが体感的に遅くなったと感じるのではないか、という不安は拭えません。また、夜間処理など、データ量が積み上げられることで時間内に処理が終わらなくなる可能性も出てきます。体感速度を感じやすいもの、時間の制約のあるものについては、検証を行っておくことをオススメします。

3. 運用

運用面では、バックアップ、更新、監視の3つのポイントで評価するのをオススメします。

[バックアップ]
VmwareからHyper-Vへ移行すると、バックアップ運用はvSphere APIからVSS(ボリューム シャドウ コピー サービス)ベースに変わります。VSSは、Windows OS上でファイルやフォルダのスナップショットを作成するためのサービスで、さまざまなサードパーティのバックアップソフトウェア製品が提供されています。評価版も多く提供されているため、いずれの製品を利用するかも検証しておくと良いでしょう。

[更新]
Hyper-Vでは、更新時にハードウェアの再起動が必要になりかつ、Windows Updateが毎月提供されるようになります。一方で、VMwareではvSphereへのパッチ運用にLifeCycleManagerとvMotionを使うことで、仮想マシンの停止を考慮する必要はほぼありません。また、vSphereのQuick Bootによって、ホストの再起動時に物理的なハードウェアの再初期化をスキップし、OS部分だけを再起動できるため、更新作業に負担を感じるユーザーは少なかったのではないでしょうか。そのため、VMwareからHyper-Vへ移行すると、更新時の運用が負荷になる可能性もあります。検証段階で、更新時も問題なく対応できる体制が組めるかどうかも検討する必要があります。

[監視運用]
VMwareユーザーの中には、vCenterだけで監視運用を行ってきたという方も多いのではないでしょうか。Hyper-Vの場合、Microsoftが提供するWindows Admin CenterとPowerShellを組み合わせて監視を行います。これまで容易に一元管理を行なっていたユーザーにとって、ツールが分散しやすいHyper-Vは監視の手間が増える可能性があります。また、GUIで大体の操作ができたvCenterに対し、Hyper-Vの場合はPowerShellを使うケースが多く、コマンド監視に慣れる必要があります。また、vCenterに近い一元管理が可能なSystem Center Virtual Machine Manager(SCVMM)の導入を検討しても良いでしょう。vCenterでチェックしてきた監視ポイントを、Hyper-Vではどのように監視できるか、現状の運用フローに照らし合わせて、それらを継続できるのか、見極める必要があります。

4. 移行

VMwareからHyper-Vへ移行する場合は、移行作業自体も検証しておく必要があります。移行手順や移行作業にかかる時間を事前検証で確認しておきましょう。先述したとおり、仮想環境は各社ごとに運用にあわせてカスタマイズされていることが多く、実際に移行しようとしたら想定の手順で移行できなかったということも少なくありません。また、事前検証で移行作業を行った結果、移行先のハードウェア構成が変わる、ということもありますので、異なる仮想環境へ移行する場合は必ず確認しておきましょう。

VMwareからの移行はS&Iにご相談ください!

仮想環境の移行前にPoCを実施することで、自社の運用にはマッチしない要件や、逆に機能が足りなくても運用でカバーできることが分かることもあります。

VMwareではハードウェアとの連携でさまざまな機能を利用でき、これらの機能をもとに構築、運用計画をされている企業の方も多いでしょう。Hyper-Vに移行した場合に同様の設計を行うのか、まったく異なるアーキテクチャで設計を行うのか、PoCを実施することで課題が見えてきます。

また、データの圧縮や重複削除の考え方はVMwareと他の仮想環境では異なるため、VMware環境で得られた数値をそのまま移行先の環境を設計する際のサイジングには使えません。PoCを実施することで、こうした違いも把握することが可能になります。

S&Iでは、お客さまの環境に応じて、必要最小限のコンパクトなPoC環境をご提案しています。どのお客さまも一律でこの検証をすれば十分、ということはありません。お客さまごとの課題や現状の運用方法をヒアリングさせていただいた上で、検証のポイントや、構成、運用の改善を一緒に検討させていただいております。ご興味のある方は、ぜひ、S&Iまでご相談ください。

【この記事の執筆者】

加藤タクマ

1993年S&I入社。古くは、通信速度がKbpsの時代からビルや工場などの拠点を接続するネットワークエンジニアとして従事。長いキャリアを通して、ネットワーク速度の進化、トポロジーの進化など、テクノロジーの変化と発展を身をもって体験。現在は、サーバーやストレージの領域まで守備範囲を広げ、サーバーインフラの進化を支えている。

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