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情シス担当者のためのサーバー/プラットフォーム Tech Blog

【Vol.4】VMwareとHyper-Vでバックアップに違いはあるのか?
移行時に考慮すべきポイント

2024/11/20

仮想基盤の運用のひとつとして、システムの不具合やランサムウェア等のウイルスによるデータ破壊に備えた仮想マシンの定期的なバックアップを実施されているお客さまも多いのではないでしょうか。

Broadcom社によるVMware社買収を受け、VMwareのままいくか、別仮想基盤に乗り換えるか検討している企業も少なくないと思いますが、仮想基盤が変わることでバックアップの取り方も変わることになります。今回は、弊社で導入支援させていただくことの多いVMwareとHyper-Vを一例にバックアップの取り方の違いをご紹介します。

仮想環境のバックアップ方法の仕組みとは?

VMwareもHyper-Vも、基本的にできることは同じです。まずは簡単にそれぞれのバックアップ方法の概要をご紹介します。

■ VMware

VMwareではVMware vSphere Storage APIs - Data Protection(VADP)という仮想マシンをバックアップするためのAPIが提供されています。これは、仮想基盤のバックアップとリカバリーを効率化するためのAPIセットで、各社から提供されているバックアップ製品は、VADPを呼び出すことでバックアップを実行しています。

バックアップ製品がAPIを呼び出すと、仮想マシンの静止点(スナップショット)が取られます。そして、スナップショットを元に仮想マシンを丸ごとバックアップしていきます。API連携でのバックアップとなるため、仮想マシンにエージェントは必要ありません。VMwareでは変更ブロック追跡(Change Block Tracking)機能も提供されており、前回バックアップ時からの増分だけ取得することも可能です。これらの機能も活用することで、ネットワーク帯域の消費を抑えながら、バックアップ時間の短縮も実現できます。

■ Hyper-V

Hyper-Vの場合、VMwareのようなバックアップ専用のAPIはありませんが、代わりにリモートプロシージャコール(RPC)というリモートでプログラムを呼び出す機能と、Volume Shadow Copy(VSS)というスナップショットを取得する機能を組み合わせてバックアップを実行します。

各社のバックアップ製品がRPC経由でVSSを呼び出すと、仮想マシンのVSSスナップショットが取得されます。そして、スナップショットを元に仮想マシンを丸ごとバックアップしていきます。こちらも仮想マシンにエージェントは必要ありません。
Windows Server 2016から変更ブロック追跡(Resilient Change Tracking)機能がOSに標準搭載されるようになり、前回バックアップ時からの増分だけ取得することも可能になっています。

実は細かいところで違いがある?運用への影響も見逃せない“相違点”

このように、VMwareとHyper-Vでバックアップの取り方に大差はないものの、細かいレベルで見てみると、両者の違いが出てきます。実際の運用面にも影響の出てくる相違点をいくつかご紹介します。

■ ストレージありの3層構成におけるSAN経由でのバックアップ

VMwareの場合:

多くのバックアップ製品がバックアップサーバーをSANに接続することでSAN経由でのバックアップを実行できます。ネットワーク帯域に影響を与えない高帯域のバックアップも可能です。


Hyper-Vの場合:考慮事項あり

Hyper-Vの場合、OS標準機能を使ったSAN経由でのバックアップには対応していません。(※)。ネットワーク経由でのバックアップとなるため、VMware環境でSAN経由のバックアップを実行していた場合は、同じスケジュールでバックアップ処理ができるか検証する必要があります。

※OS標準機能では不可ですが、バックアップメーカーがサポートするストレージのスナップショット機能と連携したバックアップでSAN経由に近い実装は可能です。ただし、構成が煩雑かつ高度になり、連携できるストレージも限られるため、運用負担を考慮するとあまりオススメしません。

■ HCI構成でのスナップショット取得による仮想マシンのディスクパフォーマンス劣化

VMwareの場合:劣化小

vSANは、仮想マシンのディスクIO劣化を最小限に抑えるスナップショットのアーキテクチャとなっているため、バックアップ時に仮想マシンのディスクIOが低下する心配はさほどないと言えます。


Hyper-Vの場合:考慮事項あり

Windows Server HCIでは、スナップショット取得時にディスクIO低下が懸念事項となります。これは、スナップショットが取得されると、ディスクIO処理が複雑になることが要因となります。vSANから乗り換える場合は、スナップショットによるディスクパフォーマンス劣化を含めてバックアップがこれまで通りの時間で行えるか検証する必要があります。

ランサムウェア対策も考慮すべき!仮想環境の構築、更改はS&Iにご相談ください!

単純に、「仮想基盤の製品名が変わるだけで使い勝手は大きく変わりないだろう」と思って移行してしまうと、これまで紹介したようなアーキテクチャや仕様の微妙な違いにより運用が成り立たなくなる可能性もあります。

また、バックアップ製品がサポートするのはOSまでになるため、万が一、サーバーに問題が発生してバックアップからリストアした場合に、業務アプリケーションが正常に動くかどうか、バックアップ製品のメーカーは保証してくれません。

VMware、Hyper-Vどちらを選択するにせよ、バックアップを取る場合は必ずセットで「リストア後にアプリケーションが正常に動くこと」を必ず確認してください。

加えて、昨今、ランサムウェア対策としてバックアップ製品を活用する事例や、災害対策の一環としてクラウドにバックアップデータを転送したり、バックアップソフトの仮想スタンバイ機能を使って待機環境を構成したりするケースも増えています。

VMwareに留まるか、Hyper-Vなど別の仮想環境へ移行するかを検討する際、バックアップ方法の観点だけではなく、「現在のバックアップでランサムウェア攻撃を受けた時に対応できるだろうか?」「災害が起きた時になるべく短いダウンタイムで復旧できるだろうか?」という企業のバックアップポリシーを改めて振り返る場を設けるのもオススメです。

S&Iでは、次期仮想基盤のご検討についてバックアップインフラも含めてご相談に乗らせていただいています。また、前回のコラム「VMwareからの移行は、“事前検証(PoC)”から始めるべき」でもご紹介した通り、必要最小限のPoC環境もご提案しています。

「果たしてこれまでと同じバックアップ運用ができるか?」という不安を持たれているお客さまが検証いただけるようにご支援させていただきますので、仮想環境の今後の運用にお悩みのある方は、ぜひS&Iまでご相談ください。

【この記事の執筆者】新井 健太(あらい けんた)

サーバーエンジニアとして、業種問わず多くのお客さまへVDIのご提案および導入に携わる。働き方改革や端末セキュリティ向上を目的としたご支援を多く手がけてきた経験をもとに、最近ではプリセールスエンジニアとしてVDIはもちろん、HCIやハイブリッドクラウドなどの技術検証から提案に至るまで、お客さまがインフラに抱える課題に対して、技術的な側面からの解決に向けた柔軟な提案を行っている。

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