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情シス担当者のためのサーバー/プラットフォーム Tech Blog

実際どうなの?
Windows Server HCIを検証してみて感じたリアルな使い勝手を紹介

前回、Microsoftが提供するオンプレHCIソリューションとして「Windows Server HCI」の基本的な構成やAzure HCIとの違いなどをご紹介しました。

今回は、実際にHCIタスクチームでWindows Server HCIに触れてみて見えてきた良いところ/少し気になったところを紹介します。Windows Server HCIに興味はあるけれど、「実際のところはどうなの?」と感じている方へ、SEのリアルな目線でお伝えします。

検証時の構成

今回、検証用に構築した構成は、Lenovo ThinkAgile 2ノードSwitchless構成となります。

検証に必要なActiveDirectory、Windows Admin Center、Veeam & Backup Replicationは、2ノードのWindows Server HCIとは別に、Hyper-V上のVMとして構築しています。

検証①:基本動作

まず、基本的な動作について確認しました。Windows Server HCIでは、Windowsサーバーやクライアントを管理するためにWindows Admin Center(WAC)が提供されています。主な機能は以下となります。
システム管理 イベントログ、プロセス管理、サービス管理、リモートPowerShell
更新管理 Windows Updateの確認・適用
記憶域管理 ディスク・ボリューム管理、記憶域スペース
ネットワーク設定 IP設定の変更、アダプタ管理
セキュリティ 証明書、ユーザーとグループ、Fierwall設定など
仮想化 Hyper-Vの管理(VMの作成・起動・停止など)
Azure連携 Azure Backup、Azure Monitorとの統合管理も可能
スクロールできます
WACは、作成済みの仮想マシンやクラスタ全体を監視するという観点では十分使える印象ですが、日々の管理をする観点ではvCenterに慣れていると、少し戸惑うかもしれません。ただ、使いこなせるようになると魅力も見えてきました。

実際に使ってみて感じた、WACの良い点と少し気になった点について紹介します。

<Windows Admin Centerの良い点>

① 無償で利用できる

Windows OSのライセンス内に含まれているため、追加ライセンス費用なしで、利用できます。


② 複数のサーバーを一元管理できる

Hyper-Vマネージャ、クラスタマネージャなどがWACに1つにまとまっているため、複数の管理ツールを確認する必要がありません。WACに対象サーバーを登録すると、複数台のサーバーをまとめてGUIで管理でき、一元管理しやすいと言えます。


③ 全体構成を把握しやすい

サーバーだけではなく、クライアントPCや仮想マシン(Hyper-V)も管理対象にできるため、仮想環境全体の構成が分かりやすくなります。リソース状況や問題の発生箇所をすばやく特定できるほか、仮想化技術に不慣れな方でも直感的に操作しやすいのではないでしょうか。

<Windows Admin Centerの気になった点>

① 全ての設定をWACで行えない

基本的な設定はWACで行えますが、細かい設定や高度な操作は、PowerShellの方が柔軟に行えます。また、VM操作はHyper-Vマネージャ、クラスタ操作はクラスタマネージャ、など、それぞれ専用のツールを使い分けた方が操作しやすい場合もあるため、実運用では他ツールと併用することもぜひご検討ください。

このように、PowerShellや他のツールとの併用が前提になるため、GUIだけで完結したいという方にはあまりオススメではないと感じました。


② レスポンスがやや遅いと感じられることもある

今回の検証でもっとも気になった点が、操作レスポンスでした。特に新規の仮想マシン作成や設定変更、スピード感を求められる操作のレスポンスについては、今後のバージョンアップでもう少し速くなることを期待しています。また、管理対象が増えると、WACの画面表示が重く感じます。また、サーバースペックやネットワーク構成も、レスポンスに影響を与えるようなので、注意が必要です。

検証②:バックアップとリストア

今回、ノード障害とVM移行に備えて2つの方法でバックアップ&リストア手順を確認しました。

① ノード障害に備えたWindows Server Backupの検証

今回の検証では、ノード発生時にバックアップからリストアを行った際に、ディスクフェイルになってしまう事象を想定し、PowerShellコマンドで復旧手順を確認しました。

手順としては、Remove-PhysicalDiskコマンドで故障と認識されたディスクをプールから取り除き、Initialize-Diskコマンドで対象のディスクを初期化、Clear-Diskコマンドでデータの完全削除、Add-PhysicalDiskコマンドでプールにディスクを再登録しました。

一連の操作をPowerShellのみで行え、作業自体は非常にスマートにできる印象です。
なお、Windows Server HCIでは、以前のコラムでも紹介したように、Windows Server自体にテクニカルサポートが含まれていません。OEM製品の場合もサーバーメーカーのハードウェアのみの保守契約では、リストア時にディスクフェイルになってしまった場合の復旧手順は含まれていないため、こうしたケースも踏まえて、Microsoftのサポートや各OEMメーカーの保守サービスを選定するようにしてください。

② VM移行に備えたVeeam Backup & Replicationの検証

通常、バックアップ&リストアは障害対応の目的が多いですが、機器更改やクラスタ移行などでも必要になります。そこで、ここでは、以前のコラムでもご紹介したインスタントリカバリ機能を使って、複数のVM移行を想定し、Veeam Backup & Replicationによるバックアップ&リストアの手順を確認しました。

手順としては、バックアップジョブを作成し、移行元の仮想マシンのバックアップデータを取得。次に、バックアップデータをもとに、移行先の環境でインスタントリカバリ機能を使って起動し、仮想マシンをリカバリして移行するという手順で行いました。

結果として、今回は、特に大きな問題もなく、移行後も安定して動作しました。ただし、今回は検証用のシンプルな構成だったためスムーズに進んだ可能性もあるため、今後は、環境や構成の異なるケースに備えて、検証パターンを広げていくことも重要だと考えています。

まとめ

2025年4月現在、Broadcom社の方針により、比較的小規模な環境では、vSphereを利用するコストメリットがほとんど出せない状況です。
このような状況を考慮すると、Windows Server HCIは、操作感で多少の不便さはあるものの、仮想環境の利用目的などによっては、乗り換え先の候補として検討の余地があると思います。

例えば、Windows Server DataCenter Editionの標準機能として提供されるWindows Server HCIは、ゲストOSライセンスもホストOSに含まれるため、WindowsゲストOSをまとめる環境としては最適です。

コストと運用面のどちらを重視するか、それぞれの特性と利用環境を踏まえて検討していただくのが良いのではないでしょうか。

S&Iでは、Windows Server HCIをはじめとしたHCIソリューションの構築支援を多く扱っています。現行のシステムを移行する場合にどのHCIソリューションにすればいいのかなどのご相談も受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。

【この記事の執筆者】HCIタスクチーム(三室 淳也・大石 風也・種子田 楓)

お客さまへの提案、導入活動を行っているエンジニアが中心になって、各メーカーから提供されているハイパーバイザーやHCIソリューションの機能検証を行っています。各製品の特徴や導入時の注意点などを洗い出しながら、お客さまに最適なご提案や確実でスムーズな導入作業が行えるよう日々検証を重ねています。

左から、大石 風也・三室 淳也・種子田 楓

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