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【Vol.8】オンプレミスでAVDを使える!AVD on Azure Local(旧 AVD on Azure Stack HCI)とは?

2025/01/15

MicrosoftはDaaSソリューションとしてAzure Virtual Desktop(AVD)を提供していましたが、2024年2月、ついにオンプレのAzure Local (旧Azure Stack HCI)上でAVDを実行できる「AVD on Azure Local」の提供を開始しました。
(※Azure Stack HCIは、2024年11月からAzure Localに名称を変更しています)

今回は、VDIを利用中もしくは検討中のお客さまに向けて、AVD on Azure Localの目玉機能や注意点についてご紹介します。既にHorizon等のオンプレVDIを運用されているお客さまにも知っておいていただくことで、次期VDIの選択肢が広がると思いますので、ぜひ参考にしてみてください!

DaaSとオンプレVDIとの違いは?AVD Azure Localの特徴を紹介

まず簡単にオンプレVDI、AVD(DaaS)、AVD on Azure Localの違いについて簡単にまとめてみます。
オンプレVDI AVD(DaaS)
AVD on Azure Local
イニシャルコスト ×
高価

安価

オンプレVDIとAVDの中間
ランニングコスト
安価
×
使用量に応じた課金

オンプレVDIとAVDの中間
カスタマイズ
自由に設計可能
×
選択できるVMリソースに制限あり

自由に設計可能
セキュリティ
リソースを自社保有

リソースを共有

リソースを自社保有
社外からの接続 ×
可能だが、構成要素が増加

標準設定で接続可能

標準設定で接続可能
社内からの接続
拠点・DC間を高速接続可能
×
拠点・クラウド間のネットワーク設計が必要

RDP Shortpathを使って拠点・DC間を高速接続可能
マスター展開機能
Horizonのインスタントクローンなど効率的な展開機能を搭載

フルクローンのみ

フルクローンのみ
マルチセッションOS ×
Windows ServerによるRDSのみ対応

Windows 11などのクライアントOSも対応

Windows 11などのクライアントOSも対応
拡張性 ×
VDI拡張のためにハードウェア調達が必要

クラウドのため、ハードウェアを調達せずに拡張可能
×
VDI拡張のためにハードウェアの調達が必要
運用負荷 ×
ハードウェア・仮想基盤・VDI管理サーバ・VDIと運用対象が多く負荷が高い

ハードウェア・仮想基盤・VDI管理サーバの運用不要。VDIに運用を集中できる

管理サーバーの運用は不要。ハードウェア・仮想基盤・VDIの運用が必要
オススメのお客さま 社内システムの多くがオンプレミスに存在する企業

オンプレVDI製品が持つマスター展開機能を活用したい企業

社内システムの多くがクラウド環境に存在する企業

グローバルなVDI展開が必要な企業

社内システムの多くがオンプレミスに存在する企業

DaaSを検討したことがあったがユーザーデータをオンプレに置けずに挫折した企業

スクロールできます
DaaSは、イニシャルコストを抑えられるなどのメリットがある一方、仕様変更の自由度の低さやセキュリティの観点から導入を見送られるケースも少なくありませんでした。

そこで登場したのが、オンプレVDIとDaaSのいいとこどりをしているAVD on Azure Localです。AVD on Azure Localは、「業務システムの大半がオンプレにありDaaSだとレスポンスが落ちる懸念がある」「クラウド上に業務データを置きたくない」といった理由からDaaS採用を見送られてきたお客さまにおススメのソリューションです。

AVD on Azure Localの特長は以下のとおりです。

[構成]
  • ・AVDをオンプレに設置したAzure Local上で実行可能
  • ・AVD管理プレーンはMicrosoftが管理するAzureサービスのため利用者側は管理不要
  • ・Active Directoryが必須。また、ユーザーID・パスワードをAzureに同期する構成が必須


[接続方法]
  • ・デフォルトでインターネットを経由して自宅などからのリモート接続が可能
  • ・社内LANからは高速なRDP Shortpathを使用して直接AVD on Azure Localに接続


[コスト]
AVD on Azure Localは大きく3つの要素で課金されます。
  • ①Azure Localを構成するハードウェア費 + サブスクリプション費
  • ②AVD on Azure Localの仮想CPU 1コア当たりの時間課金
  • ③AVD on Azure Localへアクセスするためのサブスクリプション費(Microsoft 365 E3/E5や、Windows 11 および Windows 10 Enterprise E3/E5など)

AVD on Azure Localでは、オンプレにActive Directoryが必須となります。Active Directoryを廃止しているお客さまはAVD on Azure LocalよりもAVDの採用をご検討いただくほうがよいかもしれません。

AVD on Azure Localの目玉機能

目玉機能① オンプレVDIで唯一 Windows 11/10 マルチセッション に対応

AVDではWindows 11/10 1台に複数ユーザーが接続できる「マルチセッション」という特別OSが提供されており、クラウド上で稼働させるVDIの台数を減らすことで、コスト削減ができるようになっています。

AVD on Azure Localも同様にマルチセッションOSに対応しており、これは他のオンプレVDIソリューションはない特徴です。VDIよりもユーザー集約率が上がるため、AVD on Azure Local自体の料金や、Azure Localのハードウェア費を下げることが可能です。

目玉機能② ゲートウェイサーバ不要で自宅からリモート接続可能

通常、オンプレVDIソリューションでは、リモート接続をする場合に別途ゲートウェイサーバを立ててインターネットに向けて外部公開する必要があります。一方、ゲートウェイサーバは外部から攻撃される可能性があり、セキュリティ対策が不可欠でした。
AVD on Azure Localの場合、ゲートウェイサーバはMicrosoftが管理するため、利用者は意識する必要がありません。また、リモート接続のために必要な通信は、AVD on Azure LocalからAzureに対してのhttps通信のみで外部公開が不要になります。外部から攻撃を受けるポイントを減らせる点はメリットになるでしょう。

目玉機能③ RDP ShortpathによりAVDよりも高速な操作が可能

AVD on Azure Localに接続する場合、既定ではMicrosoftが管理するAzure上のゲートウェイサーバがAVDへの接続を中継しますが、社内からの接続の場合は直接AVDに接続する効率的な経路を取ることもできます。これにより操作性やレスポンスの向上が図れるでしょう。

HorizonやAVDとの違いとの違いから見えてきた導入メリット

Horizonの「インスタントクローン」とAVD on Azure Localの「マルチセッション」、どちらが有効か?「Horizon」との比較ポイント

クローン技術を用いたマスター更新はHorizonに軍配があがるのではないでしょうか。

AVD on Azure LocalはHorizonとほぼ同様の機能を有していますが、Horizonの"インスタントクローン"に当たる機能はありません。
そのため、Horizonではインスタントクローンの機能を使って、マスターに反映した更新を元にVDIを迅速に再展開することができますが、AVD on Azure Localの場合はフルクローンのみ。展開に時間がかかる可能性は考慮しておく必要があります。

今、Horizonを使用していて、インスタントクローン機能を活用しているお客さまはAVD on Azure Localが運用に耐えられるかをPoCで検証することをオススメします。

また、この時ぜひ「Windows 11/10 マルチセッション」を検証してください。インスタントクローン環境とマルチセッションは類似点も多く、移行しやすいと思います。マルチセッションであれば、VDIの台数を集約することができるため、展開する対象そのものを減らせますし、コスト削減にも繋げられます。

一度PoCで検証して、自社の環境はどちらが運用しやすいか比較してみるといいでしょう。

レスポンススピードと拡張性が鍵!「AVD」との比較ポイント

DaaSのAVDと比べてAVD on Azure Localはオンプレで稼働するため、冒頭に記載したように以下のようなお客さまには採用するメリットがあるでしょう。

・ユーザーデータをオンプレに置くというセキュリティ要件がある
・業務システムやファイルサーバがオンプレで稼働する

利用するアプリケーションがオンプレに多い場合、どうしてもDaaSだとクラウドとデータセンター間のネットワーク遅延によりレスポンスが遅くなるリスクがあります。ただし、AVD on Azure Localではデータセンター内のLANでアプリケーション接続ができるため、遅くなるリスクは低いと言えます。

一方で、DaaSと比較すると、VDIの拡張性には制約があります。AVDはクラウドリソースが余っている限り課金をすればVDIを増やすことができますが、AVD on Azure LocalはAzure Localという決まったリソースの中での拡張性となります。VDIの台数を増やす場合はAzure Local自体を拡張する必要が出てくるかもしれません。

まとめ

現状Horizonを利用しているものの、Omnissaへの買収問題もあり次期VDIではその他のソリューションも含めて幅広く検討したいお客さまや、一部の要件でDaaSを断念していたお客さまにとってAVD on Azure Localが1つの選択肢となると考えています。

弊社ではAVD on Azure Localもプレビュー段階から検証を行っていますので、ご興味のある方はぜひご相談ください。ThinBoot ZEROというシンクライアント端末のご提案からサーバ構築までワンストップでご提案さていただきます。

【この記事の執筆者】新井 健太(あらい けんた)

サーバーエンジニアとして、業種問わず多くのお客さまへVDIのご提案および導入に携わる。働き方改革や端末セキュリティ向上を目的としたご支援を多く手がけてきた経験をもとに、最近ではプリセールスエンジニアとしてVDIはもちろん、HCIやハイブリッドクラウドなどの技術検証から提案に至るまで、お客さまがインフラに抱える課題に対して、技術的な側面からの解決に向けた柔軟な提案を行っている。

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