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HCIの新たな選択肢「H3C UIS/CAS」とは?特長や注意事項を解説

BroadcomによるVMware買収後、ライセンス費用の高騰が続いており、代替の仮想基盤を検討されているお客さまも多いのではないでしょうか。

日本ではNutanix AHVやMicrosoft Windows Server HCI(Hyper-V)などが代替の仮想基盤として検討されることが多いと思いますが、今回は新たな仮想化の選択肢として注目したいH3Cが開発する仮想化ソフトウェアCASについてご紹介します。

CASとは?

CASは、H3Cが開発しているKVMベースの仮想化ソフトウェアで、VMwareのvSphereに相当します。

H3Cというメーカーをご存知ない方も多いかもしれませんので、簡単にご紹介します。H3Cは、中国、杭州および北京に本社を置くITベンダーで、ネットワークやサーバーなどのICT製品の開発、製造を行っています。日本国内での知名度はまだあまり高いとは言えませんが、グローバル市場においは、ネットワーク製品はトップ5のシェアを占めており、今回ご紹介する仮想化ソリューションに関しては、アプライアンス型HCIのグローバルシェアで2位になったこともあります。

CASの特長

CASはCVMとCVKというコンポーネントに分かれており、CVMがvCenterにあたる仮想基盤を管理するためのソフトウェア、CVKがESXiにあたるハイパーバイザーとなります。

ライセンスが買い切り型

CASは、CPUソケット当たりのライセンス、かつ買い切り型のライセンスとなります。H3Cのサーバー(UniServer)にCASを別途購入して使用します。VMwareでは買い切り型ライセンスからサブスク型ライセンスへと切り替わり、価格高騰が騒がれていますが、H3C CASの場合、他社の仮想化ソフトウェアと比較しても価格が抑えられている上に、買い切り型ライセンスのため、長期的なコストメリットが非常に高いと言えるでしょう。

VMwareと同等の機能が実装されている

CASでは、vSphere HA、vMotionなどの仮想基盤の機能が搭載されており、標準的な仮想化基盤の機能という観点ではVMwareと同等の機能が実装されています。一方、NSX、Aria、TanzuなどVMwareの上位ライセンスで使用できる機能は標準で含まれていないため、別途アドオン購入することになります。ただし、一部アドオン機能は日本国内で販売していないものもあるため、VMwareの上位ライセンスからの移行先として検討する場合はメーカーへの確認が必要です。

他の環境からの移行が簡単にできる移行ツール

CASでは、VMware環境などの仮想基盤からCASへ移行するためのツールが、CVMが提供する管理コンソールに組み込まれており、利用条件を満たしていれば移行ツールを用いて移行が可能です。移行ツールはGUIベースで、例えば、VMware環境から移行する場合は移行元のvCenterを登録し、移行対象ごとに移行タスクを作成・実行するだけのわずか2ステップで移行できます。

CAS構成イメージ

アプライアンス型HCI製品UIS

CASの機能にvSANにあたるソフトウェアデファインドストレージ機能を加えたアプライアンス版HCI製品として提供されているのがUISです。UISではCVMがUIS Managerという名前に変わり、ソフトウェアデファインドストレージ部分も含めた管理ができるようになっています。

CASにおける構成上の注意事項

CAS単体利用の場合はストレージの手配が必須

CASでHAを使用する場合は共有ストレージが必須になりますが、H3Cは日本でストレージの販売をしていないため、別メーカーのストレージを購入する必要があります。全機器の保守をH3Cでまとめたい場合はCASを単体で購入するのではなく、アプライアンス製品のUISがオススメです。

vCenterに相当するCVMは、物理サーバーにインストールする

VMwareでは、vCenterは仮想アプライアンスとして提供されています。一方で、CVM(UISの場合はUIS Manager)は、物理サーバーにCVK(=ESXi)と合わせてインストールする必要があり、2台のサーバーにインストールして冗長構成を組むことになります。(なお、CVMを2台にインストールすることでCASライセンスが2倍必要といったことはないため、ご安心ください。)

また、CVMの管理コンソールは英語/中国語のみの対応となります。ブラウザの日本語翻訳機能を使いたくない、システム的に日本語をサポートしてほしいというお客さまには、現時点ではご要望に応えることが難しいと言えるでしょう。

バックアップについて

Veeam Backup & Replicationでは、仮想マシンにエージェントを導入したバックアップは可能であるとメーカーから公表されているものの、現在日本で普及している3rdパーティーのバックアップソフトウェア(Veeam Backup & Replication/ Arcserve UDPなど)と連携したエージェントレスバックアップが取得できません。

中国ではVeritasとパートナーシップを結んでNetBackupでエージェントレスバックアップが取得できるという発表がされており、今後日本でも対応される可能性はありますが、現時点ではバックアップ用のCAS筐体を準備し、仮想マシンデータのコピーによるバックアップという選択肢が現実的といえるでしょう。

シャットダウンソリューションについて

UPS連携した停電時シャットダウンソリューションについても、日本で普及しているメーカー(シュナイダーエレクトリックやイートンなど)と連携したものが現時点ではありません。そのため、シャットダウンスクリプト作り込みの必要があります。作り込みの場合、UPSメーカーはスクリプトの内容自体のサポートはしてくれないため、利用者責任でトラブル発生時の調査などを行う必要があります。

VMware環境からの移行時の制約

VMware環境から移行する場合、いくつか制約があります。ただし、以下のような前提条件をクリアしていれば、問題なく仮想マシンを移行できることを弊社でも検証しています。

<VMware環境からCASへ移行する場合の前提条件>
  • - 移行元にvCenterが必須のため、スタンドアロンで稼働しているESXiや、無償版のvSphere Hypervisorからの移行はできない
  • - 移行元の仮想マシンにはVMware Toolsが入っていることが必須
  • - RDM搭載された仮想マシンは移行できない
  • - NFSに保管されている仮想マシンは直接移行できない。

CASへ移行するメリット、他のHCIソリューションとの違いとは

H3Cはグローバル市場では多くの実績があるものの、日本市場ではまだまだ成熟しきっておらず、特に3rdパーティーのバックアップ連携やUPS連携はこれからという段階です。また、RedHatやMicrosoftなど仮想マシンのOSメーカーから認定されたハイパーバイザーになれると、安心感につながり、ユーザーが増えるキッカケになると思うため、今後のメーカー側のパートナーシップに向けた動きに期待していきたいですね。

一方、他のハイパーバイザーと比べてもハードウェア/ソフトウェア的なコストメリットは非常に高いと考えています。例えば、1台だけ仮想環境を準備したい場合や、開発環境として安価に仮想基盤を調達したい場合で、メーカーのこだわりなくコストで選定をする場合はCAS/UISは有力な選択肢の1つになるでしょう。

まとめ

弊社ではH3Cを含め、お客さまの現状の環境やご要件を伺った上で一緒に次期仮想化基盤を検討させていただくことが可能です。お困りのことがあればぜひ弊社までお声がけください。

【この記事の執筆者】新井 健太(あらい けんた)

サーバーエンジニアとして、業種問わず多くのお客さまへVDIのご提案および導入に携わる。働き方改革や端末セキュリティ向上を目的としたご支援を多く手がけてきた経験をもとに、最近ではプリセールスエンジニアとしてVDIはもちろん、HCIやハイブリッドクラウドなどの技術検証から提案に至るまで、お客さまがインフラに抱える課題に対して、技術的な側面からの解決に向けた柔軟な提案を行っている。

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