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情シス担当者のためのサーバー/プラットフォーム Tech Blog

VMwareからの乗り換え先にオススメ!
Hyper-Vで構築する3Tier仮想化基盤

近年、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)への注目が高まっています。構築や運用の容易さ、スケーラビリティを強みに導入を進める企業が増える一方で、依然として3Tier構成を選択する企業も少なくありません。

本コラムでは、HCIが注目される背景を踏まえながら、なぜ今あらためて3Tier構成にも注目すべきなのかを解説します。MicrosoftのHyper-Vを中核に据えた3Tierアーキテクチャが持つ優位性、そして既存環境を活かしつつコスト最適化と安定稼働を両立するためのポイントをご紹介します。

<3Tier構成が支持される4つの理由>

・ストレージ機能を最大限活用できる
・高いIO性能
・柔軟なスケール対応
・堅牢性・障害時の可用性

Hyper-Vとは?

Hyper-Vは、Microsoftが提供するハイパーバイザー型の仮想化ソフトウェアで、Windows Server 2008から機能の一部としてOSに標準搭載されています。

そのため、コストメリットが高いという点に加え、Windows Serverがベースとなっていることで連携可能なサードパーティー製品が多い点も特長です。
例えば、Windowsを監視できる製品であれば、Hyper-Vを監視することも可能です。ホストおよび仮想マシンのリソース監視(CPU、メモリ、ネットワーク、ディスクの使用率やIOPS)、サービス監視、ログ監視など、Windows監視のためのインフラをそのまま利用してHyper-V環境を監視することも可能でしょう。

また、バックアップソフトでは、Hyper-Vホストにバックアップエージェントを導入して仮想マシンを丸ごとバックアップする方式、ゲストVMにバックアップエージェントを導入する方式など製品により対応方法が異なりますが、Hyper-Vに対応しているものが多く販売されています。

VMwareライセンスの高騰により新しいハイパーバイザーも出てきていますが、サードパーティー製品側が正式にサポートしていないケースが多く見受けられます。一方、Hyper-VはWindows Serverをベースとしており、古くから市場に普及していることから、サポートしているサードパーティー製品も多く、製品を組み合わせて運用を検討しやすいメリットがあります。

Hyper-Vを用いた3Tier構成のメリットとは?

ここでは、HCIと比較しながら、Hyper-Vを活用した3Tier構成の優位性を4つのポイントで見ていきます。

① ストレージ機能を最大限に活用できる

HCIの場合、ストレージの機能はソフトウェアで提供されるため、ハードウェアのストレージで利用できる機能を備えていない場合があります。一方で、3Tier構成ではストレージに搭載されている機能をフルに活用できます。

例えば、3Tier構成で使用されるストレージでは、一般的に以下のような機能を利用できます。

  • ・ブロック単位でストレージの容量効率をあげられる「重複排除・圧縮」
  • ・ボリューム内のデータのある時点での静止点を保持できる「スナップショット」
  • ・ネットワーク経由で別筐体に複製を作れる「レプリケーション」


Windows Server HCIでは、重複排除・圧縮は記憶域スペースダイレクト(S2D)の一機能として利用できます。レプリケーションについては、仮想マシン単位という制約はあるもののHyper-Vレプリカという機能で対応可能です。一方で、ボリュームのスナップショット機能は提供されていません。重複排除・圧縮、レプリケーションともにOSの機能として提供されており、上位ライセンスの購入といった追加コストなく実装可能です。ただし、これらの機能を使用するとホスト側のCPUやメモリリソースを消費するため、仮想マシンで利用できるリソースが減少します。

3Tier構成では、これらの機能を使う場合でもストレージに処理をオフロードできるため、ホストのリソースは仮想マシンに最大限使用できます。この点も3Tier構成のメリットと言えるでしょう。

② 高いディスクI/O性能

HCIは、クラスタ内のノードを増やすことでクラスタ全体のディスクI/O性能を上げる仕様になっています。このため、同様のディスクI/Oを行う仮想マシンを複数展開し、並列で処理するケースには適しています。一方で、特定の1台の仮想マシンで高いディスクI/Oが発生する場合、ノードに搭載された内蔵ディスクの性能が追い付かず、ディスクI/Oに遅延が発生する可能性があります。つまり、単体仮想マシンで高負荷なディスクI/Oを求められるケースにはあまり適していないと言えます。

3Tier構成の場合、専用ストレージを用意することで、負荷の高い業務システムやデータベースなど、高負荷なI/O性能を求められる仮想マシンにも対応可能です。もちろん、ストレージの性能が許す限り並列で仮想マシンのディスクI/Oを処理することも可能です。

多くのストレージベンダーがストレージ用途に応じてハイエンドからエントリーまで複数モデルを展開しています。ミッションクリティカルなシステムが稼働するHyper-Vにはハイエンドのストレージ、それ以外にはエントリーやミッドレンジのストレージなど、要件に応じたストレージの選定を行うことで過剰なコスト支出にならないよう最適化できます。

③ 柔軟なスケール対応

HCIはシステム規模の拡大に応じてノードを追加し、迅速かつ簡単に拡張できる点がメリットです。一方で、CPU、メモリ、ストレージが一体となって増えるため、CPU・メモリ または ストレージのどちらかだけ増やしたい場合の拡張が難しく、リソース利用状況によっては無駄が生じやすいという課題があります。また、Windows Server HCIでは、記憶域スペースダイレクト(S2D)の制約があり、1クラスタ16ノードまでが上限であり、それ以上に拡張したい場合はクラスタを分ける必要があります。そのため、大規模環境にはあまり適していません。

3Tier構成の場合、特にストレージの拡張には専門知識が必要となるデメリットはあるものの、CPU・メモリ と ストレージを独立して拡張できるため、必要なリソースだけを拡張でき、無駄の少ない構成を実現できます。HCIのようにノード単位での増設に縛られない点も大きな特長です。

また、3Tier構成のHyper-Vでは、Windows Server HCIと比較して1クラスタ64ノードまで対応できるため、小規模構成から大規模構成まで柔軟に対応でき、成長にあわせた最適なリソース設計が可能です。

④ 堅牢性・障害時の可用性

データの冗長性、障害時の可用性に関しては、HCIもソフトウェアで対応しています。Windows Server HCIではクラスタ内の異なる3ノードのディスクに3重書き込みを行い、仮に1ノードに障害が発生してもデータの冗長性や可用性を担保します。

一方、3Tier構成では、ストレージベンダーの培った技術により、機器そのものの信頼性が高く、RAIDによるデータの冗長性やコントローラの冗長化によって障害時の可用性を担保しています。さらに、スナップショットによるデータバックアップなど、より堅牢なデータ保護も実現できます。

また、3Tier構成ではコンポーネントが分離されているため、障害発生時の切り分けが容易で、システム全体への影響範囲を限定しやすく、安定稼働の確保できる点も特長です。

まとめ

いかがだったでしょうか。
HCIは、スピーディーな拡張性が求められるケースやストレージの知識のないメンバーで運用を回さないといけないケースにおすすめです。一方で、大規模環境や高いIO性能、堅牢性が求められるミッションクリティカルなシステムの場合は3Tier構成をオススメします。

ぜひこの機会にHyper-Vを用いた3Tier構成を検討してはいかがでしょうか。S&Iでは、こうした構成の選定や設計・運用に関するご相談も承っています。ぜひお気軽にご相談ください。

【この記事の執筆者】新井 健太(あらい けんた)

サーバーエンジニアとして、業種問わず多くのお客さまへVDIのご提案および導入に携わる。働き方改革や端末セキュリティ向上を目的としたご支援を多く手がけてきた経験をもとに、最近ではプリセールスエンジニアとしてVDIはもちろん、HCIやハイブリッドクラウドなどの技術検証から提案に至るまで、お客さまがインフラに抱える課題に対して、技術的な側面からの解決に向けた柔軟な提案を行っている。

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