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情シス担当者のためのサーバー/プラットフォーム Tech Blog

【Vol.5】VMwareの新たな保守制度とは?
他社HCIソリューションへ移行時の考慮点もまとめて解説!

2024/12/06

2024年2月のBroadcomによるVMware買収を受けて、vSAN環境を他のHCIソリューションへ移行することを検討するお客さまもいらっしゃるのではないでしょうか。

他のHCIソリューションへ移行する場合は保守サポートの内容がどう変わるのか事前に確認が必要ですが、VMwareに留まる場合もvSAN環境の調達方法によっては保守内容が大きく変更されています。

今回は、VMware、Nutanix、Windows Server HCIの保守内容を比較し、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

VMware製品の新たな保守サポート内容とは?

VMware製品はBroadcomによる買収後、原則として製品販売元の認定ディストリビューターがテクニカルサポートプロバイダーとしてサポート対応を行うように変更されています。(一部のお客さまや製品はBroadcomが直接サポート対応するケースもあります。)

ここで重要になるのが「製品販売元」の認定ディストリビューターがサポートを提供するという点です。お客さま内で購入元の異なる複数の仮想基盤を導入している場合、サポートを提供する担当ディストリビューターが複数できることになります。

いずれのディストリビューターが担当の場合でも、お客さまは最初にBroadcom Support Portalでサービスリクエストを起票し、以降は問い合わせをした製品販売元のディストリビューターがサポートを対応します。製品ごとの商流に応じて適切なサポート担当が割り当てられるため、お客さまからするとサービスリクエストを発行するという初動は変わりません。VMware製品サポートの基本的なサービス仕様は各ディストリビューターで大きく変わりませんが、ディストリビューターによっては若干の差異が生じる可能性があるため、あらかじめ確認をするようにしましょう。


[Broadcomのサポートの特徴]
  • 製品販売元の認定ディストリビューターがテクニカルサポートプロバイダーとしてサポート対応を行う
  • 初動はBroadcom Support Portalでサービスリクエストを起票。購入したディストリビューターによって初動が変わることはない
  • 営業時間は基本的に平日9:00~17:30で日本語サポートが提供される
  • 時間外での対応は重大障害(P1)と判断された場合のみ。時間外での重大障害(P1)に対する日本語サポート提供はすべての製品ではなく一部製品に限定される


ここまではVMwareを個別に購入している場合の新たな保守サポート内容を見てきました。一方、vSAN環境などでは、ハードウェアメーカーからOEMとしてVMwareを購入しているケースも多かったと思いますが、OEMの場合はどうなるのでしょうか?詳しく解説します。

従来のOEM制度からVAOパートナー制度へ変更!vSAN保守への影響は?

今回の買収における大きな変更点の1つとして、BroadcomがこれまでのハードウェアメーカーへのOEM提供を一時終了したことが挙げられるのではないでしょうか。

「一時終了」と書いたのは、Broadcomは2024年6月以降にValue-Added OEM (VAO) という名前でOEMの提供を再開したためです。また、VAO制度開始当初は、Dell、Lenovo、HPEなどの海外メーカーのみが対象となっており、国内の主要メーカーは保守打ち切りなどの混乱が起こっていました。しかし、2024年11月現在は、日立や富士通、NECなどもVAO契約を締結しています。

これにより、これまでハードウェアメーカーからハードウェアとともにソフトウェアもまとめて調達することでvSAN環境を構築していた多くのケースで、VAOパートナーのOEMを選択することでこれまでと同様の調達が可能になっています。

ただし、以前のコラムでもご紹介しましたが、OEMライセンスも新たなライセンス体系に変更されており、現時点でOEMで購入できるエディションはVVF、VCFのみになります。vSAN環境の場合はVVF以上のライセンス購入が必要なため、この制約はあまり関係ありませんが、VVEP・VVSなど仮想基盤として最小限の機能が利用できるライセンスは、vSAN環境を利用できないほか、OEM購入もできないのでご注意ください。

では、保守サポートについて見てみましょう。
従来のOEM製品同様、VAOパートナーのOEMで調達した場合、ハードウェアとソフトウェアの保守サポート窓口を1本化できます。仮想基盤に何か起きたとしても、お客さま自身で一次切り分けをせずにサポート窓口に問い合わせることができます。お客さまにとっては手離れよく仮想基盤の運用が可能です。

VAOパートナーの製品は各社から提供されていますが、弊社ではHCIアプライアンス製品のDell VxRailをおすすめしています。

Dell VxRailの場合、提供元のDellがValue-Added OEM(VAO)パートナーであるため、買収前と同様にハードウェア・ソフトウェアをDellが一元的にサポートしてくれます。Dellでは、VxRailをサポートする専任チームが組まれており、お客さまの仮想基盤運用を強力にサポートしてくれます。お客さま自身での一次切り分けの手間が不要になるのはもちろん、リモートでのvSphereのアップグレードも対応してくれるので、運用負担がかなり軽減されるでしょう。また、VCFエディションでVxRailを購入すると、vSphere・vSAN以外にも、VCFに含まれるNSX・Aria Suite・Tanzu Kubernetes Grid(TKG)・HCXなどの機能もDellのサポートチームにて対応してもらえるのも大きなメリットの1つではないでしょうか。

他のHCIソリューションの保守サポートとの違いは?NutanixとWindows Server HCIのメリット・デメリット

VAOを契約するメーカーが増えたことで、OEMでvSAN環境を利用していた方への影響はかなり軽減されましたが、vSANを利用できるエディションが限定されることから、他社のHCIソリューションへの移行を検討する方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、移行先の選択肢として挙げられるNutanixとWindows Server HCIの保守サポートについて簡単に紹介します。いずれの場合も、ハードウェアメーカーごとにハードウェアとソフトウェアを別々に調達するパターンと一括調達するパターンでまとめていきます。

■ Nutanix

[別々に調達する場合]
VMwareライセンスを個別調達する場合と同様、お客さまでハードウェアの障害なのかソフトウェアの障害なのか、一次切り分けをした上で各サポート窓口に問い合わせます。

ソフトウェアは24時間×365日での受付になりますが、日本語対応は原則平日9:00~17:00で、時間外は英語対応となるため、Broadcomの保守サポートと大きく変わりません。
トラブルの早急な解決が必要な場合は、英語対応も視野に入れる必要があります。


[一括調達する場合]
一元的にハードウェアメーカーがサポート窓口を提供する場合が多いです。(一部メーカーではハードウェアとソフトウェアの問い合わせが別々の場合もあります。)
ハードウェアメーカーのサポート窓口に問い合わせをすれば、ハードウェアでの障害か、ソフトウェアでの障害か障害切り分けを実施し、ソフトウェア起因の障害の場合はNutanixへのエスカレーションまで行ってくれます。

24時間×365日で日本語対応してくれるメーカーが多いのも特長です。また、ソフトウェア起因の障害でNutanixのリモートサポートを受けた際に、NutanixのSEが英語対応だったケースで、同席するハードウェアメーカーの担当者が翻訳しながら解決に導いてくれたという事例もあります。

このように、保守面だけで見ると一括調達のアプライアンス製品の方が手軽に感じるかもしれません。ただし、アプライアンス製品の場合は、選択できる構成が別々に調達する場合に比べて限定的になる場合があるというデメリットもあります。

Nutanixの場合、どちらのパターンでもNutanixに問題が起きた場合は、NutanixのSEがリモート(Zoom)で切り分け・対応を行い、全力で問題解決までサポートしてくれます。問題解決に対する安心感が非常に高いサポート内容と言えるでしょう。

■ Windows Server HCI

[別々に調達する場合]
VMwareやNutanixと異なり、Windows Serverのソフトウェア自体にテクニカルサポートは付属していません。基本的には、お客さまでMicrosoftの公開情報やナレッジベースを元に調査しなければなりません。なお、問い合わせをしたい場合は、別途Microsoftとインシデント制のテクニカルサポートなどを契約する必要があります。このテクニカルサポートも公開ドキュメントやナレッジベースなどの既知事例をベースにした対応となります。

[一括調達する場合]
メーカーにWindows Serverの問い合わせができるパターンが多いものの、Windows Server HCIを構成するコンポーネント(Hyper-V、フェールオーバークラスター、記憶域スペースダイレクト)に発生した障害を復旧させるためのトラブルシュート支援が主になります。

Microsoft公開ドキュメントやナレッジベースでの案内となり、ログの詳細解析や修正パッチ提供などは対応してもらえません。
また、Windows Server HCIに関連するADの問い合わせや、Windows Admin Centerといった無償の管理ツールの問い合わせはできません。

いずれにしても、既知の情報をもとにした案内のみ、個別のバグ対応といった高度なサービスは提供されないため、運用担当者がWindows Serverに関する知識を持っていることが求められます。

HCI環境の移行・更改はS&Iにご相談ください!

今回は、保守内容の観点からVMwareと他社ソリューションを比較してみました。

vSANを利用している場合、そのまま留まるという選択をしたとしても保守内容が大きく変わる可能性もあります。また、Nutanixの場合は運用面では非常に高い安心があるものの、機能面や運用面で大きな変更点が生じる可能性もあるでしょう。

S&Iでは、先述した通りDell VxRailへの移行はもちろん、NutanixやWindows Server HCIへの移行もご支援させていただいています。特に、VMware環境から移行する場合は、機能面や運用面での検証も必須になりますので、必要最小限のPoC環境を使った検証からご支援させていただくことも可能です。

保守の観点からVMwareに留まるべきか、他のソリューションへ移行すべきか検討されている場合は、ぜひS&Iまでご相談ください。今抱えていらっしゃる課題やご状況に応じたご提案・ご支援をさせていただきます。

【この記事の執筆者】新井 健太(あらい けんた)

サーバーエンジニアとして、業種問わず多くのお客さまへVDIのご提案および導入に携わる。働き方改革や端末セキュリティ向上を目的としたご支援を多く手がけてきた経験をもとに、最近ではプリセールスエンジニアとしてVDIはもちろん、HCIやハイブリッドクラウドなどの技術検証から提案に至るまで、お客さまがインフラに抱える課題に対して、技術的な側面からの解決に向けた柔軟な提案を行っている。

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