MENU

導入事例:東京都教育委員会

ICTの活用で多様な生徒に最適な学びを。全都立学校における無線LAN環境の整備で、一人1台端末を円滑に活用するためのオンライン学習基盤を構築。

導入製品:無線LAN構築

他の先進国に比べ、日本のICT教育が遅れていると言われる中、多様な子供たちを誰一人残すことなく、資質・能力が一層育成されるICT環境の整備を進める取り組みとして、令和元年12月にGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想が閣議決定されました。

東京都教育委員会では、GIGAスクール構想の前倒しに伴い、ICTを活用して児童、生徒一人ひとりに最適な学びの場を提供する取り組みとして、「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」を推進しています。一人1台端末を活用するためのオンライン学習の基盤として、全都立学校255校に対して無線LAN環境の構築・展開を実施、普通教室および特別教室への無線LAN整備率100%を実現されました。S&Iは、リース会社を通じて、本プロジェクトのマネジメントから構築・展開までをトータルで支援いたしました。

導入の背景
  • ICTを活用したオンライン学習基盤の構築
  • 一人1台端末によるオンライン学習体制の確立に向けた普通教室および特別教室への無線LAN環境の整備
導入の理由
  • 密なコミュニケーションと適切な連携による、スムーズなプロジェクトの推進
  • 授業への影響を最小限にかつ感染症対策を講じながら、短期間での環境整備を実現
導入の成果
  • 教職員、児童・生徒用端末に加え、生徒の私物端末を安心して接続できる環境を実現
  • 統合管理システムの導入により、運用管理の効率化とネットワークの健康状態を視覚的に把握可能に

全都立学校255校へ、短期間で無線LAN環境を構築・展開

東京都 教育庁 総務部 教育政策課 都立学校ICT環境整備担当 課長代理 永嶋賢司 氏

東京都教育委員会では、令和2年度(対象学校数:87校)および令和3年度(対象学校数:168校)の2段階に分けて、全都立学校への無線LAN環境構築を実施。そして、各年度において、プロジェクト開始から各学校の現地調査完了までを3か月、無線アクセスポイントおよびPoEスイッチの設置をわずか3か月、計6か月という短い期間で完了させました。

「当初は、令和2年度から4年度にかけた3か年計画として、全都立学校への無線LAN環境の構築を予定していました。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、早急なオンライン学習環境の整備が急務となったため、1年前倒しし、2か年で無線LAN構築プロジェクト(以下、本プロジェクト)を完了させる必要が生じました。」と、東京都教育庁の永嶋氏は説明します。

「都立学校は250校を超えます。授業の妨げにならないように、アクセスポイントの設置作業を行わなければなりませんでした。各学校の行事などのスケジュールも考慮しかつ、短期間で感染症対策を講じながら、全ての学校へ整備を行うための調整が最大の課題でした。中には、1日1時間ずつしか作業時間を取れない学校もありました。」と東京都教育庁の金山氏は振り返ります。

本プロジェクトでは、全体のネットワーク環境と学校環境ごとの特性を考慮に入れながら、最大限に有効活用できる無線LAN環境を整備しました。導入後は、全校合わせて、Cisco社製の無線アクセスポイントを約18,000台、PoEスイッチを約3,500台、無線LANコントローラーを7台設置する規模に至ります。

構成イメージ

全ての生徒が容易かつセキュアに接続できるICT環境であること

TOKYOスマート・スクール・プロジェクトとは、児童・生徒が主体となり、一人ひとりにあった教育の場を実現する取り組みです。誰もがICT環境を活用できなければなりません。そのため、東京都教育委員会が推奨する端末(ノートパソコン型、タブレット型、キーボードの着脱が可能な2in1型の3機種)および生徒が所有するスマートフォン等の私物端末(BYOD端末)、全てが容易かつセキュアに接続できることが重要です。特にAndroid OSは、端末メーカーやOSバージョンによって細かく仕様が異なるため、無線LAN機器側でのチューニングが求められます。

「都立学校には15万名近い生徒が在籍しています。どの端末でも接続できるように、きっちり対応していく必要がありました。」と、永嶋氏。

実際、各学校で無線LAN環境の利用が開始されると、BYOD端末の一部の機種で接続できない状況が生じました。S&Iでは、東京都教育委員会・学校と連携し、接続できない端末と同機種を検証機として用意。1台ずつ原因を分析・究明、解決し、全てのBYOD端末が問題なく接続できるよう対応しています。

多くの場合、無線LAN環境の構築では、ネットワーク環境と機器に加え、接続する端末との相性により、さまざまな課題が生じます。これらの課題に対して、1つ1つ効率的かつ、粘り強く原因を特定しながら最適なチューニングを施し、対応していく技術力と柔軟な対応力が必要不可欠です。

東京都 教育庁 総務部 教育政策課 都立学校ICT環境整備担当 主任 金山隆一 氏

S&Iでは、お客さまが抱える課題を正確に把握し、分かり易く説明すること、役割および対応方針を明確にし、共通理解を図ることで、お客さまの不安や懸念点を極力なくすとともに、重要な事項をスピーディーにご判断いただけるよう、プロジェクト管理を徹底しています。
特に本プロジェクトでは、半導体不足の影響による納期遅延は、プロジェクトの期限が決まっている状況で生じた非常に重大な課題の1つでした。こうした事態においても、S&Iでは、メーカーであるCisco社による強力なフォロー体制のもと、期限内にプロジェクトを完了できるよう、取り進めさせていただきました。永嶋氏と金山氏は、本プロジェクトにおけるS&Iの動きについて、「信頼してお任せできた」と総評しています。

「プロジェクトへの意気込み、社を挙げての体制づくりが素晴らしかったです。定例会や随時の打ち合わせでニーズを汲み取っていただき、課題の明確化・認識合わせがスムーズだったと感じています。1つのチームとして一体となってプロジェクトを進めていらっしゃる印象があり、信頼してお任せできました。また、ドキュメント類の作成・提出においても、ノウハウが定着されていると感じました。(永嶋氏)」

「定例会以外にも、頻繁にコミュニケーションが取れたことは、安心感につながっていました。特に、何か問題が生じた際は、幹部に報告しなければならないのですが、ネットワークは形が見えないからこそ説明が難しく、どう伝えるべきか非常に苦労しました。そうした場面でも、丁寧に状況を説明いただきながら情報を整理して、分かりやすく伝えるための工夫につなげられたので、いつでも相談できる環境は心強かったです。(金山氏)」

Cisco DNA Centerによるネットワーク機器の一元管理で運用を効率化

都立学校では令和4年度の入学生より順次、高校段階一人1台端末による授業を開始しています。今後の運用を想定し、全学校に設置した機器の一元管理と運用管理の効率化を目的に統合管理システムとして、Cisco DNA Centerを導入しています。

Cisco DNA Centerは、自動化によりネットワーク管理をシンブルにするとともに、AIを活用してネットワークを可視化し、パフォーマンスの改善に効果のあるソリューションです。

従来の管理方法では、ネットワーク機器ごとに状態を確認する必要がありましたが、Cisco DNA Centerを利用することで、複数拠点にあるネットワーク機器を1つのダッシュボードで直感的な操作で全体を可視化でき、状態把握が可能になります。また、レポート機能を活用することで、接続されている端末なども視覚的に把握できるほか、通信状況などを随時確認できるため、大規模ネットワーク環境における運用管理を効率化できます。また、異常な通信の検知や、健全性が低い場合は原因と対策が通知されるため、事前の予防にも活用できます。

「統合システムの必要性は感じていましたが、導入前はこれほど便利に使えるとは想像していませんでした。実際に稼働が始まった今、容易に今のネットワークの健康状態を視覚的に把握できるので、非常に便利に活用しています。」と、金山氏。各アクセスポイントでどの程度の通信が発生しているのか、現在何台の端末が接続しているのかが分かるため、スピードが遅い、つながりにくいなどの原因を把握しやすく、状況の共有に便利に活用されているそうです。

ICT教育が浸透するにつれて、ネットワーク機器の運用管理も非常に煩雑になると予想されます。S&Iでは、今後の長期に渡る運用を見据え、膨大なネットワーク機器を効率よく管理できる統合管理システムを目指しました。本プロジェクトでは、Ciscoコンサルティングエンジニアの強力な技術支援のもと、Cisco DNA Centerの機能を最大限に活用できるよう最適化するとともに、運用のしやすさを考慮した構成で導入を完了させています。

今後、ICTの利活用を促進する上で、Cisco DNA Centerは必要不可欠な存在になるのではないでしょうか。

※本記事は、2022年7月時点の情報を基に掲載しています。

東京都教育委員会

所在地
〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号
事業内容
公立学校(大学・短大を除く。)等の設置・管理、学校職員の人事・福利厚生、教育内容・方法の指導助言、社会教育などにかかわる事業
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp