京都にある武田病院グループは、1961年7月に、夜間診療機関として武田病院を開業しました。現在は、基幹病院 康生会 武田病院・医仁会武田総合病院を中心に、患者さんによりよい医療を受けていただけるよう、患者さんとの「信頼と意思疎通」を原点に、予防・健診、急性期から慢性期、そして介護・福祉と継ぎ目のない医療・介護サービスをトータルで提供しています。
グループ全体の医療サービスレベルの均一化と向上と同時に、運用管理の負担軽減とコスト削減を目指し、電子カルテの導入とサーバー仮想統合に踏み切りました。
武田病院グループは、基幹病院である康生会武田病院・医仁会武田総合病院を中心に、京都府下に9つの病院(うち5病院が救急指定病院)と診療所などの医療関連施設、人間ドックや定期健診など、幅広い角度から健康をサポートする健診センター・健康管理センターと、施設から在宅まで高齢者のあらゆるニーズに対応する介護・福祉施設で構成される。
一貫した医療・介護サービスを提供する武田病院グループでは、グループの規模が拡大するに伴い、患者の病歴等のカルテ情報を医療スタッフどうしで共有・閲覧できれば患者の満足につながる、ひいてはよりきめ細かい医療サービスを提供する必要があると考え、グループ内の比較的小規模な病院・クリニックにおいてもカルテの電子化に舵を切った。
武田病院グループでは、これまで各病院・クリニックが個々に患者のカルテを管理していた。電子カルテを導入している病院もあれば、従来の紙カルテを使用している病院までさまざまだ。しかし、これらカルテ情報をデータ化して一カ所に集約して管理することで、グループ内の医療連携が可能になると考えた。武田病院グループで基盤システムを担当している、情報システム部次長の大槻俊知氏は次のように語る。「各病院や施設の医療連携は、武田病院グループ全体の医療サービスレベルの均一化と質の向上にもつながります。当院のグループで共通の電子カルテ基盤を導入するということは、患者さんに安心して医療を受けていただくための一助になるはずです」。
電子カルテの導入とあわせて、システムの運用管理もすべて本部で一元管理できるようにすることも重要なポイントだった。武田病院グループでは、グループ内のシステムの運用管理を、情報システム部のわずかなメンバーで対応していた。各病院・クリニックで何かシステムトラブルが起きると、その都度、現地に急行して対応することになる。そのため運用にかかるコストや負担も課題だった。
可能な限りコンパクトなインフラで電子カルテの一元管理を実現したいと考えていた大槻氏は、複数のベンダーから提案されたシステム基盤のサイジングの結果と費用感を比較し、仮想化技術を効率よく取り入れ、物理サーバーを減らした合理的な提案だったエス・アンド・アイからの導入を採用した。「他社と比べてもかなりの低予算で実現できました。もちろん、コストだけではありません。複数のベンダーから、さまざまなIT商材の提案を受けましたが、各社の提案に対して、どうしてこの部分に費用がこんなにかかるのか?という疑問を投げかけると、エス・アンド・アイからは『この部分にはこれ以上のスペックは必要ありません』など、必ず明確な回答があった。武田病院グループにあわせた規模感やリスク分析なども重要でした。エス・アンド・アイは、武田病院グループに最適なシステムは何かをしっかりとイメージされていて、提案とその説明にも説得力があった。だから、私たちは納得した上で構築を依頼することができた」と大槻氏は振り返る。
大槻氏は、システムの運用管理は、可能な限り情報システム部内で対応できるようにしたいと考えていた。何かトラブルが起きる度に、導入したベンダーに対応を依頼するのでは、コストも時間もロスが大きいと感じていたからだ。一方で、もしものときにはすぐに対応してくれるベンダーであることも選定の条件にあった。エス・アンド・アイの商談時のスピーディーな対応やフットワークの軽さも評価され、多くのサーバー仮想化の実績に裏付けられた知識と経験値、磨き抜かれた技術力とで培われた信頼関係が決定打となった。
電子カルテの選定においては、価格面だけではなく、その使い勝手も重要だった。結果的に、仮想サーバー上で電子カルテを動かすという実績のあるソフトマックス株式会社が提供する電子カルテが選ばれた。
武田病院グループであれば、どこの病院・クリニックに掛かっても、同じく高い品質の医療サービスを受けられることが理想だ。そのためのシステム基盤の一元化であると大槻氏は強調する。
最初に、武田病院グループ内の13拠点ある病院・クリニックの電子カルテと医事会計システムが、わずか2台のサーバーに仮想統合された。武田病院グループ内には、救急指定病院もあり、24時間365日、いつカルテが必要になるか予測ができない。障害やメンテナンスを理由にカルテが閲覧できない事態は許されない。導入された仮想システムは、万が一のシステム障害に備えて冗長化されており、同時にファームウェアのアップデートやメモリ増強などのメンテナンスの際にも、システムを停止する必要がなくなった。
医事会計システムは、各病院・クリニックのPC端末からネットワークを通じて本部の基盤システムに接続して利用する。現場の医師や事務が円滑なオペレーションを進めるには、サーバーの可用性が重要だ。病院の場合、日中の同じ時間帯にアクセスが集中するため、会計処理などのアクセスが1台のサーバーに集中してしまう可能性がでてくる。この課題に対して、エス・アンド・アイは、ターミナルサーバーの負荷分散機能を持つ自社開発のソフトウェア『SDC Hybrid Connector』の利用を提案した。同ソフトウェアは、先行して宇治武田病院での利用実績があったため、検討の結果、本部の基盤システムにも採用された。これにより、アプリケーションサーバーの負荷を分散させ、サーバーの可用性を向上させることができた。
大槻氏は、以前から診療データの活用に注目していた。武田病院グループには、健診や医療・介護を通じて、利用者のサービス利用内容や病歴、処方薬など、膨大な情報が蓄積されている。これらの情報を分析・解析していけば、利用者それぞれに最適な医療や健康指導につながり、よりよい医療・介護サービスを提供できる。そのため各病院・介護施設に分散していたデータを、共通の基盤システムで一元管理することの効果は絶大だ、と大槻氏は期待を滲ませる。「データが集約されることで、私たちは利用者さまを全人的に診ることができます。つまり、武田病院グループのスタッフは、みな同じ目線で利用者さまのケアにあたることができるのです。将来的には連携する事業者さまにも活用していただきたいと考えています」。武田病院グループ全体で一元管理された電子カルテの導入は、病院が保有するビッグデータ活用の第一歩とも言える。
2014年9月現在、エス・アンド・アイが設計・構築した仮想基盤の上で、病院・クリニックへの電子カルテ導入が着々と進んでいる。コンパクトな設計で導入してもなお、当初の目論みよりも約50 % 程度のITリソースで済んでいるという。「時代にあわせて将来的な拡張はあるだろうが、いまは武田病院グループのITリソースをこの基盤システムに集めたい」と大槻氏は語る。武田病院グループのすべての病院・介護・健診のシステムが集約される中で、施設間の情報連携がスムーズなものに変わり始めている。訪れる利用者にとって最適なサービスとは何か、そのためのIT基盤はどうあるべきか、武田病院グループの進む道には迷いがない。
医療法人康生会武田病院と医療法人医仁会武田総合病院の2病院を中核に、9つの病院がある。5施設が救急告示病院として指定されており、24時間365日救急受け入れ態勢を整え緊急手術にも迅速に対応できるスタッフと環境を備えている。その他に50以上の多様な施設を有することから、予防・健診、急性期から回復期、慢性期まで、グループ内の各施設間が連携することで幅広く継ぎ目のない医療を提供している。さらに退院後のサポート体制も視野に入れ、医療を軸に在宅・介護・福祉事業の展開を行っている。