ソフトバンク株式会社は、1984年に設立されました。国内・国際電話サービスを柱に置きながら2000 年にはIP-VPNサービスの提供を始めます。2004 年にソフトバンクグループ傘下となってからは、さらにネットワーク分野でのサービス拡大を行いました。音声とネットワークの通信事業を手掛ける一方で、「情報革命」を掲げる企業としてさまざまなIT事業を立ち上げます。その中のひとつに、2010 年にリリースされたホワイトクラウドサービスがあります。
同社のクラウドサービスは国内だけに留まらず、海外の通信事業者とも積極的に提携を行っています。2011 年にはデータセンター事業分野で韓国最大の通信事業者KT Corporation との合弁会社設立も発表されました。ソフトバンクの「情報革命」はさらなる進化を遂げていきます。
2011年2月、ソフトバンク株式会社(以下ソフトバンク)は、ヴイエムウェア株式会社(以下ヴイエムウェア)とハイブリットクラウド事業で提携し、日本国内初「VMware vCloud® Datacenter Services」プロバイダーに認定されたことを発表しました。「VMware vCloud® Datacenter Services」のプロバイダーとしては世界で7社目、日本国内では初めてのことです。
「VMware vCloud® Datacenter Servicesを一言で表すと『バーチャル・データセンター』になります」とソフトバンク 営業開発本部 クラウドサービス開発統括部 統括部長の皆川真人氏は解説します。
VMware vCloud® Datacenter Services は、データセンター自体を仮想化し、クラウド上でデータセンターを自由に管理できるサービスです。サーバーもデータもネットワークもセキュリティも、お客様で設定・管理が行えることが最大の特長です。これまでのHaaS の主流は、仮想サーバーを増設したい時、メモリやディスクの増強を行いたい場合はサービスプロバイダーとの契約変更が必要になり、即時対応ができないというデメリットがありました。ソフトバンクが提供する「ホワイトクラウド VMware vCloud® Datacenter Service」は契約変更の手続きは不要で、数分で新サーバーの立ち上げ、サーバーの容量変更が可能です。このスピード感こそが優位性のひとつです。
さらにソフトバンク皆川氏は「ホワイトクラウドVMware vCloud® Datacenter Serviceはハイブリットクラウドサービスを実現します」と語ります。ハイブリットクラウドとは、自社内のVMware 仮想環境と、データセンターにあるVMware 仮想環境を連携させて利用することのできる画期的なシステムです。これまでのHaaSでは、データセンターの環境は独立していました。HaaS を用いて検証した結果の環境を、自社内の環境に適応させるには初めから作り直す手間と時間がかかっていました。VMware vCloud® Datacenter Services では、vCloud Connectorを自社環境にインストールすることでデータセンターにあるデータを自社環境へインストールすることが可能になりました。このデータセンターと自社環境を連携させるサービスは国内のHaaSプロバイダーでは初となります。
また、VMware vCloud® Datacenter Services ではお客様が権限の範囲内で自由に仮想サーバーを新規に構築したり、管理者以外の自社の利用の権限を与えたりすることが可能になります。皆川氏は、この連携サービスとお客様側での柔軟な管理がクラウドサービスの利用を促進させるであろうと考えています。
この日本国内初のサービスを成功させるにあたり、皆川氏はプロジェクトメンバーとしてS&Iへ声をかけます。S&Iは、2006 年よりソフトバンクのHaaSのプラットフォーム基盤構築を請け負っています。また、ホワイトクラウドメールサービスの構築も請け負っており、長年の実績と信頼を得てプロジェクトへ参加することになりました。ソフトバンクを筆頭に、S&Iはプラットフォーム基盤側のプロジェクトマネージャーとして、さらにヴイエムウェア社、ネットアップ社の4社合同プロジェクトとして始動しました。
VMware vSphereでの仮想環境におけるバックアップ機能については、各アプリケーションベンダーが提供しているツールを用いれば構築することが可能ですが、今回は、ヴイエムウェア社が発表してから間もないため、バックアップのためのツールがなく、対応策を早急に検討する必要がありました。皆川氏には「これまでのHaaS ではデータ・バックアップとリカバリーサービスが標準として実装されていた。最新のサービス提供を行うのに、現状よりもサービス品質が劣ってはならない」との強い思いがありました。そこでネットアップのプロジェクトメンバーはストレージ側での回避方法を検討し、ただ単にデータのバックアップを取るだけではなく、リカバリーを行えるツールをネットアップ独自で追加開発することが最善と考え、米国本社の開発部隊へ依頼をかけました。ネットアップはこのサービスのために、自社が提供していたSnapCreaterに特別な追加開発を行い「SnapCreater for vCloud」を完成させました。これによりVMware vCloud® Datacenter Servicesを提供するプロバイダーのうち、ソフトバンクが初めてデータ・バックアップとリカバリー機能を備えるサービスを創出することが可能となりました。
S&Iはサーバー+VMware+ストレージ構築を一手に引き受けられる、数少ないサービスインテグレーターの一社です。VMwareを用いた仮想環境構築に関しては国内でもいち早く取り組み、これまでに大手鉄道関連事業会社、大手マンション・デベロッパー会社などを中心に、数十の構築実績を誇ります。ストレージの構築に関しましては、マルチベンダーとして複数メーカーのストレージを設計・構築が行えるという強みを持っています。この強みを活かし、これまでに外資系保険会社、大手通信放送事業会社やソフトバンク社から大規模なストレージ構築案件を一手に請け負ってきました。今回、S&Iがソフトバンク社からプロジェクトメンバーとして声をかけていただいたのは、VMwareへの深い知識とストレージ構築の高い技術力、豊富な実績を評価されてのことでした。
VMwareのvSphereを用いた仮想環境では、他社製品と組み合わせることで復旧後のデータの整合性を取ることができます。S&IはホワイトクラウドVMware vCloud® Datacenter Serviceにおいてもデータの整合性を取れるように、各製品のデータベースをひとつの階層にまとめられるよう設計を行いました。
近年のストレージは、データベースを自動階層化させる階層ストレージが一般的です。階層化を行うことで、アクティブなデータと非アクティブなデータを自動で判断し、ハードディスクを効果的に利用させるというものです。そのため、データ復旧を行う際には、データの整合性をとるために他社製品を組み合わせる必要がありました。今回、S&Iが行ったストレージの内部設計は、他社製品を組み合わせずにデータ復旧時の整合性を取り、より早いデータ・リカバリーを可能にした革新的な設計とも言えます。このように4社の協業で実現したソフトバンクのホワイトクラウドVMware vCloud® Datacenter Service は世界でも例をみない画期的なサービスとして提供されることとなりました。
「ソフトバンクのホワイトクラウドVMware vCloud® Datacenter Serviceは国内だけではなく国外で通用する」と皆川氏は自信をのぞかせます。サービス提供開始以来、新規で契約される企業はもちろん、これまでのHaaS から移行される企業も増えてきています。これからのクラウドサービスは「ハードウェアとデータがどこかのデータセンターにある」ではなく「データセンター自体をお客様が自由に選択・管理できる」時代へと移りつつあります。管理者はワンクリックで任意のデータセンターに仮想サーバーをたてることができ、権限を階層化して他社員へ付与することも可能です。仮想サーバーもネットワークもセキュリティも自由に管理できるバーチャルデータセンター。この画期的なサービスが国内外でサービスされる日がくるのはそう遠くないかもしれません。今後のソフトバンクのクラウドサービスのさらなる進化に期待が寄せられます。