大手機械メーカー(製造業)である某企業は、家庭用から産業用まで幅広い清掃機器を提供し、多様な顧客ニーズに応えています。
今回、急激な顧客の行動変化にも柔軟に対応できるよう、マルチチャネル化の推進を目的に、3つの窓口にてGenesys Cloudを導入されました。従来のSaaS型コールセンターシステムから脱却し、電話に加えてSMSや有人チャット、チャットボットなど複数のチャネルをシームレスに連携できる環境を構築。これにより、電話中心だったコールセンターから、顧客接点の多様化に対応したコンタクトセンターへと進化。今後の運用改善や顧客体験向上に向けた基盤を整備しました。

世界で事業を展開する企業の日本法人である今回のお客さまでは、もともとグローバル共通のSaaS型コールセンターシステムを導入されていました。グローバルでの共通基盤であるがゆえに、日本特有の文化や顧客行動に柔軟に対応することが難しく、顧客接点は電話での問い合わせ受付が中心になっていました。
Genesys Cloudは、電話、メール、チャット、チャットボットなどの複数チャネルを一元管理でき、どのチャネルで接点があったとしても顧客情報を統合して把握することが可能です。また、AIを活用したエージェント支援や自動化などの機能も備えており、高度なコンタクトセンターサービスの提供を実現できます。
今回のお客さまでは、これらの機能を活用し、マルチチャネル化が容易な環境を整備。特に顧客に寄り添った対応が求められる消費者向け製品窓口では、チャットボットの導入により一部対応を自動化し、オペレーターはより複雑な問い合わせや顧客対応に集中できるようになりました。電話や有人チャット、チャットボットをシームレスに統合管理することで、どのチャネルからの問い合わせであっても一貫性のある対応を実現し、顧客満足度向上を支援しています。
さらに、電話回線を含めたフルクラウド化を実現。場所にとらわれずコンタクトセンター業務を行える環境を整え、ビジネスの拡大を推進しています。

今回、第1フェーズとして既存のSaaS型コールセンターシステムから安全かつスムーズに移行し、新たなコンタクトセンター基盤を構築。続く第2フェーズでは、顧客とオペレーター双方に寄り添った体験価値の向上を目指し、AIの活用やSMS・チャットボットなどのデジタルチャネルの導入を進めました。
このように段階的に基盤整備から体験価値の向上へと取り組みを進める中で、どのような成果や手応えがあったのか。プロジェクトを共に進めさせていただいた消費者向け製品窓口責任者様、産業用製品窓口責任者様にお話を伺いました。
導入後、どのような効果を実感されていますか?
― 消費者向け製品窓口責任者様
Genesys Cloudの採用を決めた時点から、本格的なデジタル化の推進がスタートしました。そこでまず目指したのは、音声以外のチャネルの活用です。
2024年11月からデジタルチャネルの本格運用を開始し、現在では入電全体の約15%を、チャットボットを入り口に対応できるようになっています。ただ、チャットチャネルでの正確な解決件数や離脱率のデータを取得できないため、利用率は向上しているものの、実際にどの程度解決につながっているかどうかまで把握できていません。今後のアップデートでの改良に期待しています。
また、消費者向け製品窓口ではAIエージェントの機能も本格的に活用しています。顧客とオペレーターの通話内容を自動要約してくれるため、アフターコールワークがぐっと楽になりました。多少の修正は必要ですが、要点が箇条書きで表示されるので分かりやすく、手直しをしてそのままコピペするだけ。導入前と比較すると1件あたり1分半程度短縮できています。
― 産業用製品窓口責任者様
業務用製品窓口では、製品ラインアップが多いことから、認識精度に課題があり、チャットボットやAIエージェントの導入には至っていません。
一方で、Genesys Cloudはレポート機能が非常に充実しているので、管理面での利便性は大きく向上しています。例えば、以前は、平均処理時間を算出するだけでも複数のデータを集める必要がありましたし、オペレーター単位でデータを取るのも非常に手間がかかっていました。現在は、Genesys Cloud上でレポートを開くだけで、必要なデータを即座に確認できるようになっています。
また、Genesys Cloudはブラウザベースで動作するため、複数のタブを切り替えながら操作や状況確認ができるなど、柔軟な運用が可能です。リアルタイムで更新されるデータを手元のPCで常に確認できるようになり、管理効率が格段に向上しました。
Genesys Cloudを採用した決め手を教えてください。
― 産業用製品窓口責任者様
コンタクトセンターシステムを更改するにあたり、これまでの課題を踏まえて以下の4点を重視していました。
①完全クラウドで安定稼働すること
②日本語対応のサポートが受けられること
③簡単な設定変更は内製化できること
④レポートを詳細に取得できること
特に①と②は非常に重要なポイントでした。既存システムは障害も多く、対応を依頼する際は、規模に関わらずチケットを作成する必要がありました。そのため、早急な対応が求められる状況でも非常に手間がかかり、運用上の大きな負担となっていました。
さらに、せっかく更改するのであれば、AIやデジタルチャネルの活用を推進し、将来を見据えたコンタクトセンターへ進化させたいと考えていました。そこで、実現したいことをリストアップし、複数のサービスを比較検討。機能が充実しているとコストが高い、価格を抑えるとできることが限られる、オプションで追加費用がかかってしまい結局割高になるなどの課題もある中、最終的にGenesys Cloudを含む3社に候補を絞りました。そして、コストと実現性のバランスが最も優れていたことが決め手となり、Genesys Cloudの採用を決定しました。
プロジェクトの進め方やS&Iの印象はいかがでしたか?
― 産業用製品窓口責任者様
ご提案段階から感じていたことですが、私たちのコールセンターは何百席、何千席規模ではなく、コンタクトセンター構築プロジェクトとしては大きいものではなかったと思います。それでも真摯にご対応いただき、とても温かい印象を受けました。
担当営業の方、SEの方には、提案から導入、運用まで一貫して迅速かつ丁寧に対応いただきました。私たちが実現したいことへの理解度も高く、円滑なコミュニケーションのおかげで、安心してプロジェクトを進めることができました。
小回りが利き、細かい要望にも答えてくれる、まさに「痒いところに手が届く」ベンダーだと感じています。
S&Iのサポート体制などはいかがでしたか?
― 消費者向け製品窓口責任者様
何から何までお任せしてしまっていて、「ここまで任せてしまって大丈夫かな」と思うこともありましたが、結果的にとても丁寧に対応していただけたと思います。
当初は2024年10月に第1フェーズとして既存環境からGenesys Cloudへの移行を予定し、スケジュールもそれにあわせて調整していただいていました。しかし、当社の都合で1か月前倒しすることになった際も、柔軟に対応いただけました。
また、グローバルで利用しているCRMとの連携では、シングルサインオンを実現するために本社側との調整が必要でした。私たちは本社側のシステム仕様を詳しく把握しておらず、日本法人のIT担当者もコールセンターのシステムに詳しくなかったのですが、S&Iさんが直接グローバル本社と調整し、問題なく利用できるところまできっちり対応いただけたのは助かりました。
現在は、音声チャネル・デジタルチャネルのいずれも、コールフローの作成・変更を自社で行えるようになることを目指して、トレーニングを実施してもらっている段階です。実際に手を動かしてみないと分からない部分も多いとは思いますが、最終的に自分たちで運用できるようになるまでしっかり支援してもらえると感じています。
今後の取り組みや展望を教えてください。
― 消費者向け製品窓口責任者様
デジタル化のさらなる推進を目指しています。
SNS連携や、ボイスボットによるAIを活用した音声対応の自動化など、新たな顧客接点チャネルへもチャレンジしていきたいと考えています。また、チャットボットについても従来のシナリオベースから生成AIを活用した、より柔軟な対応が可能な仕組みへと進化させていきたいと考えています。