株式会社アクシス(以下、アクシス)は、鳥取に本社を置くIT企業として1993年に設立、「地方企業として地域社会に何ができるのか」をモットーに、地域情報化の担い手になるとともに、UJIターン(※)の受け皿として地域雇用の活性化に取り組まれています。
※UJIターン:地方から都市へ移住した後に再び地方へ移住する「Uターン」、地方から別の地方へ移住し、その後生まれ育った地方近くの大都市に移住する「Jターン」、生まれ育った地方から別の地方へ移住する「Iターン」の3つの人口還流現象の総称
アクシスは、システム開発やWebサイトの作成などの事業を展開する中で、情報システム部門のリソース不足から導入後のサポートができずに導入したシステムが定着化せず失敗に終わるという課題を抱える企業が多いことに着目。現在は、システムの開発だけではなく、マニュアル作成や研修企画、ヘルプデスクの提供など、ユーザーサポートまでをワンストップで提供するサービスベンダーとしてBPO事業も展開しています。
これまで鳥取のコールセンターの1箇所集中で対応していたBPO事業において、アクシスは新型コロナウィルスに対するリスクを早い段階で察知、早期対策に乗り出しました。そこで実施されたのが、BCP対策および柔軟な雇用形態による優秀な人材の確保、鳥取での雇用促進を目的に、「集中型からサテライトオフィスへ」をコンセプトとしたAIを活用したコールセンターの導入とテレワーク環境の構築です。
これまでアクシスのコールセンターは、オンプレミスのPBXを採用しており、固定電話による応対のため、BPOセンターに出社しなければなりませんでした。このコロナ禍により、分散業務ができる環境構築が急務に、そして、BCP対策という観点でも、万が一メンバーの1人が感染した場合にどう解決するかを確立する必要あったと言います。そこで、PCとインターネット環境さえあればどこでもコールセンター業務が可能なクラウドPBX「BIZTEL」を導入することになりました。さらに、S&Iが提供するWindows 10 IoT Enterpriseを搭載したセキュアなPC「ThinBoot ZERO」の導入によりセキュリティと利便性の両立を図りました。
これにより、自然災害などで業務遂行が難しくなった場合も、他拠点での応対が可能になる他、在宅での応対業務も可能になります。育児や介護などさまざまな事情で、在宅での就業を希望する求職者の採用など、優秀な人材の確保も期待できます。
アクシスでは、アプリの操作方法やハードウェアのサポート窓口、情報システム部門の代行サービスなど、1人が複数の窓口を対応する「シェアード型」体制で、約50人のメンバーが各企業から委託された応対業務を担っています。
多くのコンタクトセンターでは、オペレーターの知識や経験年数によって回答レベルに生じる差が課題になっています。アクシスでも同様に、多種多様な応対業務において、メンバーの知識や経験によって品質に差が生じていました。さらに、電話応対をしながらの入力作業など、複数の作業を同時進行しなければなりません。特に、新人メンバーにおいては、ヒアリングスキルと応対品質、インシデント入力スキルなどが同時に求められるため、不安感から自信を失うメンバーも少なくありませんでした。
また、メンバーの入れ替わりがある場合は、どうしても教育に時間がかかってしまったり、即戦力になるまでの応対品質レベルの維持が課題になります。このような場合にもスムーズに品質を変えることなく対応できる仕組みが必要と考えていました。
そこで、アクシスでは、インシデント入力作業の軽減と、案件ごとにコール数、応答率など数値で管理することで、適正に応対業務を管理できる仕組みづくりとして、AIを活用した応対支援サービス「AI Dig」の採用を決めました。
AI Digは、お客さまとオペレーターの会話内容をリアルタイムで音声認識し、テキスト化された会話内容に含まれる質問文からAIが回答候補を確信度順に提案します。AIは、他のオペレーターが対応した際の情報も含めて、該当する回答候補を探し出してきます。キーワード検索だけではたどり着けない回答にも、「お客さまが体験したこと」を元にした検索で、回答にたどり着けるようになります。さらに、PBX/CTI基盤に採用したBIZTELとも連携しており、BIZTELを経由して着信があると、自動で音声認識を開始します。音声認識結果は、コピー&ペーストで文章を整えることで、応対履歴としてインシデントツールに登録することもできるため、お客さまと会話しながら入力作業や問い合わせへの回答を調べるなどの複数作業の同時進行から解放され、お客さまとの会話に集中できるようになります。そして、アフターコールワークの効率化も期待できます。
また、AI Digでは、オペレーターの応対状況をリアルタイムでスーパーバイザーも確認できます。応対時間が異常に長い対応や、不適切な発言が含まれる応対などを視覚的に把握でき、オペレーターのタイムリーなフォローや教育に活用できます。
「アクシスでは、AI Digの導入により、知識や経験による応対品質レベルの差の解消と、応対中の同時作業の軽減で、メンバーが入れ替わりにも対応できる仕組みが確立できつつあります。」(アクシス 宮川さん)
アクシスのBPOセンターの全体イメージ
アクシスでは、これまでの応対業務でヘルプデスクやコールセンター対応で普段から貯めていたFAQを元に学習データを作成しています。きちんと学習データを作成することで、利用開始とともに実運用に困らない一定の回答精度を出すことができますが、より精度を上げるためには、学習データの継続的なメンテナンスが重要になります。
AI Digには、回答結果に対してオペレーターが「Good」「Bad」で評価する機能があり、評価結果を元に回答精度の見直しが可能です。運用しながら業務に最適なシステムに育てられる点も、AI導入を成功に導くためのポイントの1つです。アクシスでは、S&Iが展開するAIのスキルや知識を持つ専門組織「CORPUS factory」による学習データの継続的なメンテナンスや成功に導くための運用体制のサポートなども活用されています。
「システムを納めるだけではなく、導入後のアフターサービスをきちんと行い、お客さまの声を反映したサービス、VoC(Voice of Customer)体制の実現を目指しています。開発~運用、保守を継続的にご依頼いただけるようにするためには、お客さまのことを良く「知る」ことが重要であり、VoCを大切にするBPOセンターは当社の要になると思っています。今回のBIZTELとAI Digの導入は、ユーザー業務のより深い理解と、高品質なサービスを継続的に提供するための重要なツールだと考えています。また、今後の運用フェーズでは、高い音声認識と回答が正確に表示されるような継続的な学習データのメンテナンスで、回答率/即答率の向上を目指しています。また、AI Digの継続的な機能拡張とS&Iによる手厚いサポートを期待しています。」と、今後の目標と期待を語ってくださいました。
※本記事は、2021年8月時点の情報を基に掲載しています。
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