2012年度、ソフトバンクを中心に約7,500台のシンクライアント端末リプレイス計画が立ち上がった。ソフトバンクグループ情報システム本部では、複数メーカーのシンクライアント端末候補を選定し、年度内導入完了に向けて機能評価や各種検証を急ピッチで進めていくことになる。Windows Embedded マシンであるThinBoot ZEROも選定候補のひとつにあげられていた。
シンクライアント端末としてソフトバンクがこだわったのは、セキュアなOS 環境と初めてのユーザーでも操作に迷うことのないユーザビリティの実現だった。それはOS環境の高度なカスタマイズを必要とする。カスタマイズと検証を短期間で終わらせて、端末選定の結論を出さなければならない。カスタマイズと検証をどう効率良く確実に進めるか、それが同社情報システム本部 小沢昭幸氏の懸念となっていた。
シンクライアントというとシステムの構築に目が行きがちだが、クライアント端末選定のための検証やOSのカスタマイズにも非常に多くの時間を割かれ、通常は数ヶ月に及ぶこともある。
さまざまな条件で候補は3機種に絞られ、OSのカスタマイズと検証が開始されたものの、不具合の発生で進捗が遅れだし、工程の長期化が懸念されることになった。
ThinBoot ZEROについてはベンダーであるS&Iが、カスタマイズの技術協力の依頼を受け、ソフトバンクの仕様にあわせたカスタマイズで課題となる箇所を洗い出して提示、不具合で停滞していた検証が進み出すこととなる。わずか2週間でThinBoot ZEROのカスタマイズと検証が完了。この驚異的な対応スピードと技術力が一時は不可能と思われた選定スケジュールに光をもたらした。
こうして、無事に選定候補3機種の検証が完了し、機種選定の開札が当初の計画通り開始された。ThinBoot ZEROはソフトバンクが望むセキュアなOS 環境とユーザビリティ実現の選定基準を満たし、さらにS&Iの高い技術力が、最終選定の決定打となった。小沢昭幸氏はその時のことを振り返り、次のように語る。
「Windows Embeddedに精通したS&Iの技術者が支援に入られてからすぐに、カスタマイズや検証にエンジンがかかりました。徹夜でバグをつぶす日もありましたが、みるみるうちに完成度があがり、私たちの求める端末が手に入るだろうと確信しました。」
レノボ社に納期短縮の協力を得たものの、S&IにThinkPadが届いた時点で、納期までわずか2週間。急ピッチで約7,500台のキッティング作業が始まった。
Windowsをシンクライアントとして使用する場合、端末にSysprepを実行し、完成したマスターを端末にコピー、その後に各種設定が行われる。キッティングを手動で行っていては間に合わない。S&IはSysprepの自動化、さらには専用のスクリプトを作成し、キッティング時のキーボード入力を省くことに成功。作業の大幅な簡素化と製品の初期不良率わずか1%以下の高い品質によって多くの人が不可能だと思った納期を順守することができたのであった。
※本記事は、2012年3月時点の情報に基づきます。