— Network Virtualizationというソリューションに至る、これまでの問題点はどのようなものでしょうか?
山下:まずここ10年ほどで、企業のトランザクションを支えるネットワークシステムは、IBMのSNA(Systems Network Architecture)に代表される、メインフレーム(汎用機)と端末を結ぶタイプのホストセントリックなネットワークから、クライアント/サーバー型のオープンネットワークへと推移してきました。そして、システムのダウンサイジングと分散化、マルチプロトコル化が進む中で、インターネットが登場し、現在のIPの時代となりました。
CPUリソースが少なかった時代は、セキュリティや負荷分散などの機能はプロトコルごとに実装されていました。このせいでネットワークは複雑化していたわけですが、IPに集約されることでシンプルになりました。ただし一方で、結果として例えばWEB(HTTP)が、企業のトランザクションを支えるアプリケーションプラットフォームになってしまいました。HTTPは、こうした用途では非常に脆弱です。コネクションはリクエストごとにすぐ切れる。サーバーリソースへの負荷は小さいが、極めて偏りが大きい。言わばSNAとは正反対の特性なわけです。
— SNAで実現していた機能をIP、HTTPで実現しなければならなくなったわけですね。コネクションをサポートして、たくさんのサーバーを仮想的に見せたり、サーバーリソースを安定的に維持したり、セキュリティ機能を持たせたりと、WEBトランザクションの保護性能が必須になってきた。
ネットワークの高機能化というニーズに逆らわずに、TCOを下げなければならなくなった
山下:そうですね。IP化でいったんシンプルになったものが、結局また複雑になり、ネットワークの管理や設計が非常に難しくなりました。ネットワークに必要な機能は、アプライアンスボックス(Appliance Box)と呼ばれる機器になりましたが、例えばたった1つのWEBシステムを組むために、スイッチが5~6台、ロードバランサーが2台、コネクションの集約装置にVPN、SSLアクセラレータと、こうした箱がそれこそ10台以上も必要だったりします。
そこで出てくるのが、ネットワークの高機能化というビジネスのニーズの流れに逆らわずに対応しながら、オペレーションをシンプルにしてTCOを下げるということ。つまり統合化・仮想化ということが必要になってきたというわけです。
— 最近は、IT関連にかかるコストの8割は現状のメンテナンスで、新規開発には予算の2割しか使えないなんて言います。こうしたコストの最適化という面から見ても、複雑化しているネットワークを何とかしないといけませんよね。コストも手間もかかり過ぎている。これだけ重要度が増しているのに、システムに人的なミスが増えるのも大きな問題です。
山下:そうです。つまり、Network Virtualizationが目指すのは、2つの視点でのメリットなのです。1つは、ビジネスを止めないための基本的な仕組みです。システムダウンの原因の7割は人的ミスと言いますが、ネットワークをシンプルにすると同時に自動化して、これを防ぐ。もう1つは、最適化してTCOを下げる、ということですね。

山下克司
日本IBMでネットワークサービス事業部全体の技術戦略を担当。IBM全世界共通の基準で優れた技術力を有する社員に与えられる「IBM Certified Professional - Senior Consulting IT Specialist」の資格を持つ。